先日、 ブログ「PUBLISHING2.0」 に、雑誌「JPG Magazine」の定期購読割引の案内があった。この手の記事がPUBLISHING2.0に載るのは珍しいので、リンク先のサイトをみてみると、これがなかなかユニ-クなものだった。(「PUBLISHING2.0」経由で定期購読すると5ドル割引される、というシステムも面白い。)

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 JPG Magazineは、ネットユーザーが、写真を投稿し、セレクトできる写真雑誌だ。今年に入ってから、出版元が代わって、ネットユーザーに開かれた雑誌という方針が明確になり、さらに、エディトリアルデザインも洗練され、プリントメディアとしての魅力も高まった。

 雑誌のpdfもダウンロードできる。ユーザ-登録し、投稿した写真が、多くのユーザーに選ばれて、雑誌に掲載されると、ギャランティが出るシステム。プロカメラマンではなく、一般の"写真好き"が投稿した作品が掲載されているわけだが、どの写真も、ひじょうに美しく力がある。

 デジタルカメラの一般化と、ネットインフラの整備が可能にした、まさにWeb2.0的雑誌と言えるだろう。ネットの力を最大限に利用しているが、最終的なアウトプットを印刷媒体にしているのも面白い。編集者は、ネットユーザー=写真愛好家の調整役に徹していて、いい写真をいい印刷で、広く伝えたい、という写真好きの想いをうまく共有させている気がする。

 ところで、このJPG Magazineと同様の企画が、日本でも成り立つだろうか? 
 この企画が成り立つためには、他人に自分の作品が評価されることを厭わず、高いクオリティを持ったアマチュア・カメラマンがかなりの数必要だ。日本には、写真好き、カメラ好きの方が多いし、JPG Magazineぐらいのクオリティの写真だったら、容易に集まるだろうという気もする。けれど、写真共有サイトのFlickrなどでは、しばしばプロ顔負け?の美しい写真に出会って驚くことがあるが、日本の写真共有サイトを見ると、個人の日記的な写真が多い・・・う~ん、どうだろう。

 また、音楽投稿サイトや動画共有サイトをアメリカなどに比べると、他人の目を意識した"作品"を気軽に積極的に作ろうという人々の絶対数が、かなり違うような気もする。このあたりのクリエイティブへの意識の薄さや、自分の作品を人と共有したい、見てもらいたいという意識の薄さ、絶対数の違いが、いちはやくブロードバンド環境が整っていた日本で、FlickrやYouTubeのような作品共有サイトが生まれなかった一つの理由ではないかとも思う。

 それが、FlashアニメやCGには、たくさんクリエイターがいるけれど、写真や動画、音楽は少ない・・というようなジャンルの偏りだったらいいのだが、"クリエイティブ"な意識そのものが停滞しているとなると、これはひじょうに重大な問題だ。