今年は、"動画"が、主役に躍り出た年、と言えるだろう。90年代前半からマルチメディアはさまざまな形で喧伝されてきたわけだけれど、これまで実質的にネットで広く流通してきたのは、音声でも画像でもなく、文字、だった。それが今年に入って一気に動画が主役に立ち始めた。この動画ブームは、これからますます盛んになるだろう。やはりYouTubeの存在が大きいが、その背景には、アメリカでブロードバンドの一般化がある。日本では、すでに何年も前からそうしたインフラは整っていたのだが、残念ながらYouTubeのような爆発的ウェブサービスが開発されなかったのは、なんとも寂しいところ。

 それはさておき、こうした映像や音声の流通といったマルチメディア化は、ジャーナリズムの世界にもやってきていて、このところ多くの新聞社や通信社のサイトが、各自オリジナルのビデオニュースや音声のポッドキャストのサービスを始めている。またいっぽうでは、つい先日も、Dow Jonesが地方新聞6紙を売却する、という発表があったように伝統的メディア企業が、これからますますオンラインビジネスにシフトしていきそうだ。

 そうした事態に、ジャーナリストも対応を迫られていて、「Knight New Media Centor」のようなジャーナリストを対象にしたニューメディア学校がある。この学校のカリキュラムを見ると、オンライン・メディアのジャーナリストのためのコンテンツ・プランの立て方、編集やライティング法、といったものもあるが、伝統的メディアのジャーナリストが、新しいメディア環境に対応するために、デジタルビデオカメラの使い方、音声、動画編集、Flash、webデザインを習得する、というといったものもある。

knight
 
 以前、ニューヨークの地方テレビ局NY1が、レポーターにテレビカメラを持たせて、一人で、カメラマン、レポーター、編集もこなすことで、コスト削減をはかって話題になったことがあったけれど、これからのオンライン・メディアの取材現場は、Macとビデオカメラ片手に、一人で何役も兼任する、ということになるんだろうか。あ~忙しない。

 記事の執筆と映像の編集では、かなり異なったノウハウが必要になるが、これだけ多くの人々が、自らの映像をネットにアップしている様を見ると、ジャーナリストにとっても、この両方の技術を兼ね備えることが必須となる時代が来る気がする。その時には、すでにメディアの業態も大きく変わっているに違いない。また、そのために、日本でもジャーナリスト向けの学校が開校されることはないだろうけれど。