先日、サンフランシスコで行なわれたあるカンファレンスに出席したIT系ビジネス雑誌『Business2.0』の編集長 Josh Quittner が、「所属のジャーナリストは、全員ブログ書いてもらう」と発言して注目を集めた。

 ことの発端は、『Business2.0』のシニア・ライターだったOm Malikが、自身の個人ブログを拡大して、しっかりとしたメディア・ブログとして運営するための資金をベンチャーキャピタルから得て、7月に独立、起業したことから始まる。

 『Business2.0』は、もともと雑誌『WIRED』の編集者がスピンアウトした発刊した雑誌で、ビジネス雑誌でありながらビジュアルやデザインにも凝っていて、先端的な情報を扱うユニークな存在だ。オンライン版も、雑誌の記事の二次利用を中心にした形であって、今年1月からは、CNNMoney.comに併合される形となった。また、http://digital.business2.comでは、電子雑誌の形で紙版すべてを読むこともできる(これは楽しいですよ)。

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 というわけで、『Business2.0』は、オンライン版、電子版とネットで展開してきていたが、紙版をもとに二次利用という形で、その主体はあくまで、紙版、ということだった。(やや話がそれるが、二次利用とはいえ、これだけ雑誌の記事をそのままネットで無料で読めるようにしてしまって、雑誌の売上に影響しないのか?と思ってしまう。CNNMoney.comでの展開の後、定期購読が3倍になったともいうが、どこまで本当なのか・・?)

 だが、ここへきてブログもますますメジャー化。アメリカでは、主流メディアと同等のアクセスを集めるブログもいくつか出現し、またそうしたブログへの広告掲載も組織化されてきたことで、ブログ単体をメディアとして扱い、ブログをビジネスとして運営する人々があらわれてきていた。先日、日本語化もはじまった「TechCrunch」は有名だろう。

 そして、それらの成功をみて、『Business2.0』のシニア・ライターだったOm Malikは、独立・起業を決意した。自身のブログ「GigaOM」は、スタッフを増員し、コンテンツを充実させ、着々とブログメディアとしての地位を確立している。

 そうした状況を目にしながら、紙メディアを発行してきた『Business2.0』編集部の思いは複雑だったろう。これまでの雑誌のビジネスモデルに限界を感じたかもしれない。そこで考えだされたのが「所属のジャーナリストは、全員ブログを書くべし」というお達しだ。今のところ、ウェブ内にあるスタッフブログに大きな変化はないが、これを徐々に充実させ、広告を獲得しようということなのだろう。確かに、ブログの手軽さ、低コスト、速報性には、紙の雑誌では到底叶わない。それに充分な広告がつくという状況ならば、ブログに進出しない手はない、と考えるのも自然だ。

 だが、これまで、あくまで紙版が中心で、オンライン版は二次利用、ブログは付加、というバランスだったわけだが、これに大きな変化が起きるのか? ただ負担が増えるとしたらジャーナリスト達が黙っているようにも思えないし、本来の雑誌の記事の質に大きな変化があるようなことがあれば、それは読者の反応にもはっきりを現れるだろう。それで、雑誌の"信頼"を損なうようなことになっては、かえって逆効果だ。

 う~ん、『Business2.0』、これからどうするのか。徐々に大きな展開がありそうな気がするが、それは雑誌、オンライン雑誌、ブログメディアのこれからにちょっとした影響を与えそうな気もする。