先日、イギリスの経済誌『The Economist』に「Who killed the newspaper?」という特集が掲載された。新聞販売の低迷は世界的な傾向だ。ヨーロッパでは特に無料新聞が大きなブームとなっていて、朝刊から夕刊まで広がり、既存の新聞社も無料新聞に進出している。これまでの何十年も続いてきた新聞の安定したビジネスモデルは、確実に変更を余儀なくされているのだ。

 やはりきっかけは、インターネットだろう。情報はタダで手に入る、という感覚はすでに生活の中に当たり前のことになってしまった。『The Economist』の特集タイトルは、「Who killed the newspaper?」だが、日本でも、2003年に、青木日照+湯川鶴章著『ネットは新聞を殺すのか』というタイトルの書籍が出されている。

 そして、ここ10年、"殺された"り、"消された"りしたのは、「新聞」だけではない。思いつくところでも、津野海太郎『本はどのように消えてゆくのか』(96年)、津田大介『だれが「音楽」を殺すのか?』(04年)、小林雅一『コンテンツ消滅』(04年)、西正『IT vs 放送』、ジョセフ・ジャフィ『テレビCM崩壊』(06年)といった本がそうした問題を扱っていて、出版、新聞、音楽産業、放送、テレビCMの順で、メディアのデジタル化とネット出現による危機に直面し、右往左往してきたわけだ。

 で、その結果、出版や新聞が殺されたり、消えたりしたかというとそういうわけではなく、これからも本や新聞はずうっと生き残るに違いないのだ。ただ、ある部分はこれまでと同じビジネスモデルで継続するができるだろうが、その他の大部分は圧倒的に別の形になる可能性が高い。

 それだけメディアがドラスティックな変化を遂げつつある今、メディアを制作する「編集者」や「編集」そのものは、これからどうなるんだろう・・。それが僕の関心事だ。

 ひとつの予想は、昨年、話題となった未来予測FLASHムービー「 EPIC2014」が示している。2014年までにgoogleとamazon.comが合併し、個々人の嗜好、消費行動、などの情報を集積し解析して、その人が求めそうな情報を、的確に届けるEPIC(Evolving Personalized Information Construct)と呼ばれる「パーソナライゼーション型メディア」現れるという……。

 このEPIC2014の世界では、"編集"は、すべてコンピュータによって代行されている。近頃のネット業界の趨勢を見ていると、確かにそうした状況になっても不思議じゃない、と思えるわけだが、果たしてそうなんだろうか? このあまりに"わかりやすい未来"とは別の道を歩むためにどうしたらいいのか? こんな疑問とわずかな希望を抱きつつ、海外メディアの最新状況をチェックしながら、このブログを進めていこうと思う。