1年付き合った10歳年上の不倫彼氏にいきなり音信不通をくらった私。
事故か事件か、最悪嫁にバレたのか・・・
そんな心配をよそに、この男は新しい女とよろしくやってることが判明。
私の砂川に対する思いは180度変わった。
このまま私が引き下がると思うなよ、といったところだ。
得意先関係のニッシーから本当の事は聞いていたが、彼らの仕事上の付き合いにも影響したら困ることもあり、私は真実を知らないフリをすることにした。
ただ、知らないからと言って泣き寝入りは無理。
砂川が私に本当の事を話さないで、綺麗事を言って片付けようとした事も許せない。
なにが私の未来を奪えない、だ。
私がお前の未来をどん底に変えてやる。
徹底的に潰すと決めた。
綺麗事で話をまとめようとする相手に対し、私はどう勝負しよう・・・
それには反撃するのに私がキレるタイミングが必要。
色々なことをシミュレーションした。
翌日、私は砂川の携帯に電話した。
あれだけ私からの着信をフル無視していたのに、すぐに電話に出た。
私は女優スイッチをオンにした。
「あおい、ごめんな、連絡できなくて」
第一声はこうだった。
「よかった、ひーくん繋がって・・・どうして連絡くれなかったの?事故とか事件とか・・・奥さんにバレちゃった事とかいろいろ考えて本当に心配したんだから!!!!あおい、この電話にひーくん出なかったら会社行くとこだったよ」
軽くジャブを打ってビビらせてみた。
砂川は明らかに焦った声でこう言った。
「いやっっ!!!ホント俺さ、急に思うことがあってさ、連絡を絶ったんだ。本当はあおいと話すつもりはなかったんだけど、西村さん(ニッシー)からの電話であおいときちんと話さなきゃなって思って・・・聞いてくれるか?」
「うん、早くひーくんに会いたいよ」
完全女優スイッチの入った私は台本通りに泣きながら話す。
焦りながらも砂川は続けた。
「いや、もう会えないよ。急に消えたのは訳がきちんとあるんだよ。突然さ、思ったんだ。俺は家族が居て、そこは変わりなくこれからも続いていくのに、あおいはまだ若くて未来ある女の子じゃん・・・俺は何やってんだって思って・・・そう思ったら自分を許せなくなったんだ」
何も知らないと思ってのこの発言にさすがの女優も心の中で怒った。
嘘っぱち並べやがってこのクソ男がああああ!!!!
心の中で100万回刺殺したい気持ちをグッとこらえて私は言った。
「そんなの最初から分かってたじゃん。それでもあおいはひーくんといたいんだよ?」
「でも俺がもう罪悪感で無理なんだ。これ以上あおいの未来を奪えない」
「そんなの、急に思うなんておかしいよ。私たち、喧嘩もなくうまくいってたじゃん」
「俺は家族を裏切れない」
実際にはもう少し話し込んだが、主にこのような内容を繰り返した会話だった。
家族を大事にしてないくせに!!!!本当は新しい女がいるくせに。
それを隠して自分は何も傷つかず、フェードアウトしようとしている。
なにがあおいを想ってだ、てめえは自分の事しか考えてねえ!!!!
地獄に落ちろ!!!!
埒が明かない会話についに私は頭がイカレた女を演じた。