夕陽のガンマン
半世紀近くの時を経てイーストウッドの名作を大スクリーンで観られるとは思いませんでしたが、いざ観てみると、何十回とビデオやDVDで観たにもかかわらず、改めて思い知らされたことが多々ありました。
馬で疾走するシーンでは、以前からスタントマンかなと感じていたところが、実際には役者自身であるのがわかったのも驚きでした。つまり演じ手の顔をぼかしたかったのではなくただ遠くから壮大な背景での疾駆するシーンを撮りたかったということだったのですね。お見それしました。
ジョン・ウェイン、ジュリアーノ・ジェンマ、スティーブ・マックイーン、本当に馬に乗るのが上手な役者でした。
前々からハリウッド映画と比較して、日本の時代劇との力量の差を感じていたのですが、殺陣やアクションや所作はともかくとして、我が国の役者でこれだけの乗り手が今いるのでしょうか。しかも馬の足を怪我させないようにして。
本庄繁長にしろ上杉謙信にしろ戦国時代の名将が馬術において誰にも負けない達人であったことはあまり知られていません。大河ドラマ等の時代劇で映像化するのであれば、主役はイーストウッドぐらいの腕前がなければと実感しましたが、半世紀たっても夕陽のガンマンを超える映画はなかなかありません。だから何回も観てしまうのでしょうが…
一昨年でしたか、国立映画アーカイブで故黒澤明監督の企画展を見る機会があって、彼がロシアの文豪が書いた書物等を読み込み、血肉と化して自身の映画の科白一語一語を創り上げた事実を知ったのですが、『用心棒』、『荒野の用心棒』を経て見事に昇華されたのが傑作『夕陽のガンマン』です。面白くない訳がありません。
役者、音楽、オルゴールの音なども完璧の映画ですが、それだけに飽き足らず、緊迫したシーンではその背後で微かに虫の鳴き声が挿入されているのに気がつき印象に残りました。
Signora Sergio Leone 恐るべし。
Signora Ennio Morricone お見事。
無精髭、ちびた葉巻、空っ風に翻るポンチョ、口笛の旋律。
クライマックスでイーストウッドの顔が一瞬ズームされていくシーンがありますが映画館で観ると感無量です。
今年もまた桜の開花を目にすることができました。映画館の外の錦糸公園では、昨日までの大雨が嘘のような晴天のもと大勢の花見客で賑わっていました。