28MHz帯の傾斜型ひし形ループ・アンテナの製作
(1) はじめに
以前のブログ記事『24MHz帯の傾斜型同軸ケーブル3段コーリニア・アーレイ・アンテナの製作』のはじめにも記述しましたように、太陽の活動がサイクル25に突入し、太陽黒点数が増加、HF帯のハイハンド(21、24、28MHZ帯)が賑やかになり、それを機に10MHz帯のひし形ループ・アンテナを下ろし、28MHz帯のひし形ループ・アンテナンを上げました。もうすでに数年が経ちましたが、給電点が地上高4m程度であるにもかかわらず、とてもFBです。アンテナの高利得方向のEUなどは、デジタルモードのFT8/FT4で信号強度+00dB以上の局が多数見られ(当局のQTHは米国北東海岸)、DXとのQSOがいとも簡単に成立します。。
(2) なぜ傾斜型のアンテナか? - アンテナ設置時の問題点 -
ループ・アンテナを14m高の立木に設置したかったのですが、すでに18MHz帯のひし形ループ・アンテナがあるので、干渉を防ぐために10m程度離れた別の立木を利用したアンテナを当初考えました。しかし、この木立は6m程度の高さしかなく、グラスファイバー・ポールを継ぎ足せばループ・アンテナを設置できますが、建物に近く、景観を損ねるために諦め、結局、これらの2本の立木(実際には3本)を利用し、傾斜したひし形・ループ・アンテナを設置することにしました。
(3) アンテナの構造
上図には、アンテナ全体の構造を示しています。黄色丸は給電点、赤線はアンテナ・エレメント・ワイヤー、青線はグラスファイバー製の棒、褐色線はナイロン製の紐(A、B、C)を示しています。図左下、褐色の破線(C)の紐は、当局の場合設置していませんが、可能ならば追加して下さい。図右上の水色の破線は「引きバネ」で、立木が強風に煽られた場合、紐に強度の余裕を持たせるためのものです。アンテナ・エレメント・ワイヤーの長さやアンテナの幅は、以前のブログ記事『自作め ー24および28MHz帯ひし形(ダイヤモンド)ループ・アンテナ』中の28MHz帯のアンテナと同です。
(4) アンテナの作成、設置とその調整
アンテナ・エレメント・ワイヤーとして、寸法通り、塩ビ被膜の銅線コードを切り出します。以前のブログ『ワイヤー・アンテナ用エレメントの工作(引っ張り強度が得られる繋ぎ方)』で紹介しましたが、ホームセンターなどで安価に入手できる『平型ビニルコード』の利用をお勧めします。青線は約2m長の2本のグラスファイバー・ポール(直径5.5mm、通販で1本100円程度)をステンレス製のホースクランプ(ホースバンド)で束ねて、それを繋ぎ合わせています。非導電性の物であれば何でもOKです。「引きバネ」は、ステンレス製で、線経2.0mm、外径3.0cm、全長30cmです(上図)。ホームセンターで500円程度で入手できます。当局が入手したものの最大荷重が不明ですが、目安として、手で伸ばしてみてかなり力を入れた時に伸びる程度のものです。手で簡単に伸ばせるものは使用を避けて下さい。逆に、簡単に伸ばせないものは、結果的にアンテナを支えている紐が切れることになります。
給電点が真ん中の木になります。左上の褐色の紐(A)や右上の褐色の紐(B)の長さを変えることで、給電点の位置を調整します。
アンテナの入力抵抗値は、給電同軸ケーブルの抵抗値の50オームになるようにアンテナ形状の適正化を施していますので、面倒な給電同軸ケーブルの抵抗値とアンテナの入力抵抗値との整合作業は不要です。従って、すでに紹介した21MHz帯のひし形ループ・アンテナと同様、コモンモード電流対策のための1:1バラン(電圧バラン)、もしくはソーター・バラン(電流バラン)の追加のみでOKです。このバランを、アンテナの下端の黄色丸の位置で、アンテナの給電点と給電ケーブルとの間に入れます。もちろん、市販の1:1バランやソーター・バランが使えますが、是非、自作をお試し下さい。以前のブログ『自作アンテナの勧め ー21MHz帯ひし形(ダイヤモンド)ループ・アンテナの製作法を分かり易く解説』の中で紹介したソーター・バランの作成法を参照下さい。材料は通販で入手できますし、自作が初めての方でも意外にうまく作成できます。
給電点では、2本のアンテナ・エレメント・ワイヤー端を束ねて立木に縛り付け、それらのエレメント・ワイヤー端を、タッパーに開けた小さな穴を介してタッパー内に導き、タッパー内のバランに接続します。バランは必ずプラスチック製タッパーなどの非金属性のケースに入れて防水処理をして下さい。このタッパー内で、アンテナ・エレメント・ワイヤー、バラン、給電ケーブルが接続できれば、防水に関しては完璧です。アンテナ・エレメント・ワイヤー端とバラン、もしくは給電ケーブルとの接続は、当局は半田付けをしていますが、市販のバランを利用する場合は、ねじ止め、または給電ケーブルのコネクターで直接接続して下さい。この場合、タッパーなどは不要で、融着テープ等によるコネクターの防水処理のみでOKです。
アンテナの設置後、リグ内蔵のSWR計でSWR値を測定して下さい。SWR値が2以下に収まるはずです。ただし、リグ内臓のSWR計の針が振れる場合、リグの終段を保護するためにリグ内臓のアンテナ・チューナー(ATU)、または外付けのアンテナ・チューナーの使用をお勧めします。
アンテナ・アナライザーなどをお持ちの中・上級者の場合、以前にも記述しましたが、アンテナ・エレメント・ワイヤーの両下端を、最上図に記載したアンテナ・エレメントの長さよりもそれぞれ10㎝程度長く切り出し、アンテナ・エレメントだけを設置後、アンテナの入力インピーダンス(Z)をアンテナの給電点で測定し、リアクタンス成分(X)がゼロになるように2本のアンテナ・エレメントの下端を同じ長さずつ切り込んで下さい。少しずつ切り込むとリアクタンス成分(X)がプラスからゼロに近づいて行きます。リアクタンス成分(X)がゼロでレジスタンス成分(R)が50オーム付近になるはずです。その後、バランと給電ケーブルを接続して下さい。なお、参考までに、アンテナの幅を広くすると、レジスタンス成分(R)が大きくなります。アンテナ調整の際に、リアクタンス成分(X)がゼロでレジスタンス成分(R)が50オームから大きく外れる場合は参考にして下さい。
(5) アンテナの輻射特性
28MHz帯用の1エレのひし形ループ・アンテナを傾斜させて設置した場合のアンテナの輻射特性をMMANA-GALアプリでシュミレーションしてみました(上図)。垂直に設置した同じサイズの1エレのひし形ループ・アンテナの結果も比較のために示しています。当局のアンテナ設置環境に合わせ、給電点は地上高4mです。図のそれぞれの上図はアンテナの上方から、それぞれの下図は側面から見た電波の輻射強度分布を示しています。図中の赤線は水平偏波成分、青線は垂直偏波成分です。ダイポール・アンテナと同様、いわゆる『8の字特性』で、利得はアンテナの前後方向で最大です。今回のように傾斜させて設置した場合、最大利得は打ち上げ角21度で6.0dBi、一般的な垂直に設置した場合は、最大利得が打ち上げ角21度で8.6dBiとなりました。アンテナを傾斜させることによって最大利得が得られる打ち上げ角は変化しないものの、利得が約2.5dBi程度減少します。当然ながら、水平偏波成分が増え、垂直偏波成分が減少しますが、電離層反射が主なHF帯では大きな問題はなさそうです(電離層反射の際、偏波が乱れるため)。
上図は、アンテナの調整後、給電ケーブルのリグ側で測定したバンド内のアンテナのSWR値(黄色線)です。28.075MHzで1.06でした。リグでSWR値を測定しても針が動きませんでした。ATUなしで使えます。
今回の傾斜型のアンテナは、特に設置環境に制限され、仕方なく選択しました。また、具体的なアンテナの設置方法は、立木を3本も利用する特殊な方法です。殆どの局には適応できず、一般的ではありませんが、参考にして頂ければ幸いです。
de WJ2T




