18MHz帯の横長の長方形ループ・アンテナの製作

 


 

(1) はじめに
 前回のブログにも書きましたように、この春、約14m高の白樺の木が枯れてしまい、その撤去に伴い、設置していた3バンドのすべてのアンテナを下しました。急遽、残っている低い木を何本か利用して、14MHz帯用に横型長方形ループ・アンテナ(2波長ループ・アンテナとして28MHz帯に)と24MHz帯の菱形ループ・アンテナ(2波長ループ・アンテナとして50MHz帯に)を設置しました。その後、改良を重ね、現在は、10MHz帯と18MHz帯は横長の長方形ループ・アンテナ、21MHz帯用には菱形ループ・アンテナを設置し、3バンドで運用を継続しています。今回は、これら3つのアンテナの内、18MHz帯の横長の長方形ループ・アンテナを紹介したいと思います。
 背の高い木を失ったのは大きな痛手でした。現在は、5m程度の立木が数本と8m高程度の家屋の煙突部分が利用可能です。デジタル・モードに有利な『静かな』ループ・アンテナは必須で、今回もループ・アンテナを選びました。ただし、菱形や長方形のループ・アンテナは、縦長に設置しないと高い利得が得られないのですが、今回は、横長に設置する選択肢しかありません。結局、菱形ループ・アンテナは諦め、横長の長方形ループ・アンテナを選択しました。

(2) アンテナの構造
 最上図には、アンテナ全体の構造を示しています。黄色丸は給電点、赤色線はアンテナ・エレメント・ワイヤー、褐色線はナイロン製の紐を示しています。水色の破線は『引きバネ』で、立木が強風に煽られた場合、紐に強度の余裕を持たせるためのものです。それぞれのアンテナ・エレメント・ワイヤーの長さは、いつものように、アンテナのシュミレーション・アプリMMANA-GAL(CQ誌2020年6月号別冊で紹介されました)を使用し、利得、打ち上げ角、アンテナの入力抵抗値を留意しながら、エレメント長の最適化を行いました。最適化の中心周波数は、デジタルのFT8モードを意識し、18.100MHzです。

(3) アンテナの作成、設置とその調整
 アンテナの入力抵抗値は、これまでと同様に、給電同軸ケーブルの抵抗値の50オームになるようにアンテナ形状の適正化を施していますので、面倒な給電同軸ケーブルの抵抗値とアンテナの入力抵抗値との整合作業は不要です。従って、すでに紹介した21MHz帯の菱形ループ・アンテナと同様、コモンモード電流対策のための1:1バラン(電圧バラン)、もしくはソーター・バラン(電流バラン)の追加のみでOKです。このバランを、アンテナの底辺角の黄色丸の位置で、アンテナの給電点と給電ケーブルとの間に入れます。もちろん、市販の1:1バランやソーター・バランが使えますが、是非、自作をお試し下さい。以前のブログ『自作アンテナの勧め ー21MHz帯ひし形(ダイヤモンド)ループ・アンテナの製作法を分かり易く解説』の中で紹介したソーター・バランの作成法を参照下さい。材料は通販で入手できますし、自作が初めての方でも意外にうまく作成できます。

 

 

 上写真は給電点です。プラスチック製タッパーの蓋を開けた状態で、自作のソーター・バランが入っています。赤色矢印はアンテナ・エレメント・ワイヤーを、オレンジ色矢印はビニール紐を、黒色矢印は給電ケーブル端を、水色矢印は、紐で固定するために2本のアンテナ・エレメント・ケーブルを数本のプラスチック・ナイロン・タイで束ねてループとした部分を、それぞれ示しています。給電点では、2本のアンテナ・エレメント・ワイヤー端を束ねて立木に縛り付け、それらのエレメント・ワイヤー端を、タッパーに開けた小さな穴を介してタッパー内に導き、タッパー内のバランに接続します。バランは必ずプラスチック製やビニール製のタッパーなどの非金属性のケースに入れて防水処理をして下さい。このタッパー内で、アンテナ・エレメント・ワイヤー、バラン、給電ケーブルが接続できれば、防水に関しては完璧です。アンテナ・エレメント・ワイヤー端とバラン、もしくは給電ケーブルとの接続は、当局は半田付けをしていますが、市販のバランを利用する場合は、ねじ止め、または給電ケーブルのコネクターで直接接続して下さい。この場合、タッパーなどは不要で、融着テープ等によるコネクターの防水処理のみでOKです。
 アンテナの設置後、SWR値を測定して下さい。その値が2以下に収まるはずです。ただし、SWR計の針が振れる場合、リグの終段を保護するためにリグ内臓、または外付けののアンテナ・チューナーの使用をお勧めします。
 アンテナ・アナライザーなどをお持ちの中・上級者の場合、以前にも記述しましたが、給電点での2本のアンテナ・エレメント・ワイヤー端(給電点につながる、長方形の縦辺と横辺のエレメント・ワイヤーのみ)を、上図に記載したアンテナ・エレメントの長さよりもそれぞれ15㎝程度長く切り出し、アンテナ・エレメント・ワイヤーだけを設置後、アンテナの入力インピーダンス(Z)を給電点で測定し、リアクタンス成分(X)がゼロになるように、給電点で2本のアンテナ・エレメントのワイヤー端を同じ長さずつ切り込んで下さい(例えば2㎝程度ずつ)。少しずつ切り込むと、リアクタンス成分(X)がプラスからゼロに近づいて行きます。リアクタンス成分(X)をゼロにするとレジスタンス成分(R)が50オーム付近になるはずです。その後、バランと給電ケーブルを接続して下さい。

 (4)アンテナの輻射特性

 上図は、設置したアンテナの輻射特性をMMANA-GALアプリでシュミレーションした結果です。当局のアンテナ設置環境に合わせ、給電点は地上高3mです。図の上図はアンテナの上方から、下図は側面から見た輻射強度分布を示しています。図中の青線は水平偏波成分、赤線は垂直偏波成分です。ダイポール・アンテナと同様、いわゆる『8の字特性』で、利得はアンテナの前後方向で最大です。最大利得は、あくまでも計算値ですが、打ち上げ角19度で3.1dBiとなりました。比較のために、縦型菱形ループ・アンナの最大利得は、以前のブログの『18MHz帯ひし形(ダイヤモンド)ループ・アンテナの製作』で紹介しましたように、給電点が7m高の場合、打ち上げ角21度で8.7dBiでした。アンテナの先端は17m高程度ありました。

 

 

 上写真の左図は、アンテナの調整後、給電ケーブルのリグ側で測定した18.100MHzでのアンテナのSWR値と入力抵抗値です。入力抵抗値は48.6 - j0.2オームで、SWR値は1.03でした。右図はバンド内のアンテナのSWR値(黄色線)です。リグでSWR値を測定しても針が動きませんでした。アンテナ・チュナーなしで『波』が出せます。

 なお、FT8モードを意識し、中心周波数を18.10MHzでアンテナのサイズの適正化を図っていますが、ループ・アンテナは帯域が広く、CWやSSBでも、このままのサイズで運用できます。ちなみに、18MHz帯で運用できる周波数帯域の下限、18.068MHzでのSWR値は1.04、上限の18.168MHzでは1.29でした。

 

(5)最後に
 今回の横長の長方形ループ・アンテナは、利用可能な木の高さが低い特殊な場合で、仕方なく選択しました。しかしながら、高さ4、5m程度の木は、多くの局の設置環境に合致しているかも知れません。参考にして頂ければ幸いです。なお、当局の長方形ループ・アンテナは、少し歪み、僅かに平行四辺形になっていますが、長方形からの少しのズレはSWR値や電波の輻射特性に大きく影響しないと思います。
 最後に、このアンテナの給電点の高さは、厳しい設置環境のため、わずか3mです。決して十分な高さではありません。さらに50㎝でもかまいません、少しでもアンテナを高く設置すると『飛び』と『受け』が良くなります。是非、試てみて下さい。

de WJ2T