2024年1月7日テレビ朝日系列で放送されました

独占密着!ドキュメンタリー羽生結弦RE_PRAY

 

 

 

現在羽生結弦選手の単独ツアー、アイスストーリー第2弾「RE_PRAY」の最中ですが、準備期間から2023年11月埼玉公演での独占密着番組です。

ここでは、羽生選手のインタビューを中心に書き起こししました。

 

 

以下、「」内の太字が羽生選手の言葉です。

見出しは番組内で放送されたプログラム名(全曲、当日の演技のフルバージョンが流れました)

 

 

プロ転向2年目のシーズンを迎え、アイスストーリー2nd「RE_PRAY」が幕を開けた。

 

アイスストーリー」と銘を打っている通りに、全部見たときに一個の短編映画でもいいし、小説でもいいし、そういう風に感じてもらえるようなものを創りたいな、と思いながら創りました

 

かつてない壮大な舞台演出、ゲーム音楽との融合、そして更なる進化を目指し挑み続ける姿。

完成までの舞台裏にも密着、知られざる奮闘を追う。

すでにショーを見た人も、これから見る人ももっと「RE_PRAY」が楽しくなるスペシャル番組。

 

普通のアイスショーとは、ひとつひとつのプログラムを見るのとは違う感覚で見てほしいな

 

 

  オープニング~「いつか終わる夢

 

 

アイスストーリーは、羽生さんの演技と言葉によって物語を紡がれる意欲作。

今回のテーマとは?

 

“ゲームの中の世界観”みたいなものを、一つのテーマとして持っていて、その中で命についての考えだったりとか、それを取り巻く環境だったり、いろんな考え方だったり価値観だったり、そういったものを改めて考えるきっかけになればいいなと思って作っていった物語です

 

モチーフはゲーム。

ロールプレイングゲームの中で戦い、成長していく主人公の姿を通して、人生の選択や葛藤そして未来へと続く物語が描かれる。

その壮大な世界観を表現するために、新たな演出も取り入れた。

 

サブステージ昇降の映像

最速11秒「11秒、良い数字

そのひとつがサブステージ。階段やステージの高さ、上下するスピード等を入念にチェックし、調整していく。

 

これらの演出を手掛けるのは日本を代表する演出振付家のMIKIKOさん。GIFTに続いての本格タッグ。

 

MIKIKO先生

「たぶん私がゲームを知らない人代表として見て、わかるものを作ったらいいのかなと思っているのと、ゲームなんだけど『芸術×ゲーム』ができたらいいなと思っている。

その繋ぎのシーンで、羽生くんが実際体を動かしてセリフに合わせて踊っているようなところは、コンテンポラリーとかダンスの舞台を見に来たような印象を取り入れつつやっていて、見ているお客さんからしたら新鮮だけど、取り残されない美しさなのかなと考えている」

 

羽生さんは今回MIKIKOさんに依頼。本格的な振付は今回が初めて。

選んだ楽曲は「鶏と蛇と豚」陸上で上半身中心の振付が始まった。

普段はやらない鏡を使った練習に、少し戸惑う羽生さん。

今度はリンクでスケートの動きを作る。

MIKIKOさんの振付をいかすスケーティングを模索。何度も繰り返しスケートと振付を融合させていく。

スケートリンクでの練習映像

MIKIKO先生「これって一直線上だと勢いでないですか?」

やってみます。イメージだけ

直線的に滑りながらの演技。フィギュアスケートにはない動き。

MIKIKO先生「覚えがすごい早いですね。パンクすると言いながら。鏡を使ってやったことがないっていうのが私たちは鏡がないとできない感じだから、逆なんだな。歩み寄りながら。初めてのことをやっている感じがいいですね」

 

正直、陸上でやった時のほうが最初上手いなと思っていて、僕は。最初陸上で先生に振付をしてもらって鏡の前で何回も何回も練習をしていく中で、その質感が氷上で全く出せなかった。すっごく難しくてどうしようと思って、すごく練習しました。

『真っ直ぐ』というのがテーマとして一番の根底にあって、フィギュアスケーター的には『真っ直ぐ』だけで表現すること自体がまず異質なんですけど、スケートだからこと出せるものと、僕が今まで演じたことないような振付だったりとか、映像と照明とか含めた演出があってこそ見えてくる『真っ直ぐ』な世界観を表現したいな、というのがとりへびの一番の根底にあります

 

 

  鶏と蛇と豚

 

 

  修羅ちゃん ←会場の音絞られていた??

 

 

おはようございまーす。宜しくお願いします」(スタッフへのあいさつ)

 

プロ転向後はフィギュアスケートの枠に囚われない自由な表現を追求してきた。

 

ジャンプなしでも見せ切れるプログラムを作りたい。単純な体の動作で、どれだけ見せられるかを自分に課して『いつか終わる夢』を作ったんですけど、あれはジャンプとスピンがなくて、スケーティングで見せる、体の動きで見せるという趣旨で作りました。

『阿修羅ちゃん』にしても、どっちかというとダンスで見せるプログラムとして作っていて、ジャンプもスピンも(ない)

 

今回の「RE_PRAY」でも独創的なプログラムに挑戦。

その一つが第一部の中盤で演じる「MEGALOVANIA」

 

『スピンだけで見せるプログラムはないかな』と考えたら無くて、『コンセプトはスピンでいこう』というのが、まず選曲の前にありました。

選曲するにあたって、スピンで見せる格好良さって何かなって思ったときに、ああこの楽曲だったらスピンじゃないとこの世界観は表せないなっと結びついたのが『メガロバニア』でした

 

「メガロバニア」

・ゲーム「アンダーテール」の楽曲の一部

・主人公がある強敵と戦う際に使用される

 

そのシーンをスピンだけで演じることで、戦闘の緊迫感やスピード感を表現する。

さらにこのプログラムは独特な演出からスタートする。

 

フィギュアスケートって、表現している世界が割と華々しいものが多いので、生々しさみたいなものってあまり感じないことが多いんですよね。

そのエッジの音の迫力みたいなものをちょっと感じてもらいたいな、というのがまず1つ。

いつかずっとやってみたかった1つで、この『メガロバニア』という楽曲自体が、一人のボスと戦うときに使われる曲なんですけど、そのボスと戦うときに、最初無音で必殺技を繰り出すところがあって、その無音なんだけどSEだけ響く効果音だけがずっと響いている。

そこから『メガロバニア』が始まって戦闘が始まっていくというところがあるんですけど、それを再現したくてエッジの音だけで見せる

 

静寂の中に響かせる生々しいエッジの音。

しかし、この演出。一筋縄ではいかなかった。

スケートの映像

 

会場で全員に聞かせるぐらいの音を出すのってすごく難しくて、最初マイクつけて滑るとかも考えたりとか、録音したものにあてて滑るかとか、いろいろ考えたんですけど、どうしても風の音がものすごかったりとか、そのままプログラムに続いていかないといけないので、いろんな方々と相談した中で、じゃ生音で会場中響かせようか、みたいな。

簡単に言ってくれるじゃないか、と僕は思っていたんですけど(笑)

 

その一方で、「メガロバニア」には遊び心にあふれたアイデアも取り入れられている。

 

(自分が)リンクの中から客席のほうにあるモニターに飛んでいく。

時空を超えて瞬間移動していく、みたいな感覚の表現もやっています。『ここに来た』とか『どこ?どこ?』みたいな感覚だけでも楽しんでいただけると嬉しいです

 

 

  MEGALOVANIA

 

 

開幕の舞台であったさいたまスーパーアリーナで、羽生さんはある問題に直面していた。

会場が圧倒的に大きいことに加え、アイスショーではリンクを囲むフェンスがないため距離感がつかめなくなっていた。

更に照明の明るさを含めた演出への徹底的なこだわりが、スケーティングをより難しくしていた。

リンクでの映像

 

マジ見えねぇ。全然端っこが見えねぇ。

ここの(目印のライトの)レッドとブルーの間ってこんなもんでしたっけ?もうちょっとない?仙台のリンク的は7m?

じゃあ、これなんだ。やっぱめっちゃ広く感じるんだな。すっごいここの幅が狭く感じる。空間認知がヤバいな。周りが広いからすごくちっちゃく感じるんだな、OK

 

普段練習しているリンクと本番の会場というのが、自分が見ている視界の一番奥までの距離が全く違うので、あと天井の高さも違うので、そういった面で自分がどれくらいのスピードが出ているかもわからなくなっちゃうのは難しいところですね。

あと、ジャンプが難しくなるプログラムの時に、暗い照明の中でジャンプを跳ぶのは、視覚を制限した状態で飛んでいるみたいな感覚なので、目をつぶってジャンプを跳んだりとかいう練習も若干します

 

距離感や視界の問題を乗り越えるために、羽生さんはなんと!目をつぶって練習を行っていた。

 

視覚を遮断することによって、逆に他の感覚がすごく強くなるので、他の感覚が強くなるからより精度が高まる、みたいなことを練習でします

 

目からの情報に頼らなくても演技ができるよう、感覚を研ぎ澄ませる。

しかし、ときにはこんなことも。

(リンクサイドにひっかかり、転んでしまう)転んでもまた立ち上がる。

華やかな舞台の裏には努力と工夫の積み重ねがあった。

 

そんな羽生さんがアスリートとしてこだわり続けている演出がある。

今回の「RE_PRAY」でも行われた6分間練習。

 

試合を追体験させたい、というのが一番でした

 

大会で行われる演技直前の最終調整。それをショーに取り入れている。

 

プロになって、アイスショーという場所が自分の主な表現の場になった時に、今まで体験してきた“応援する”という感覚と、なんか“ドキドキする緊張感”と、そういうものが付加価値となってプログラムに反映されると僕の中では思っていたので、そのドキドキ感を出すのは何がいいかなと思って“6秒間練習”かなと考えていたのですけど

 

会場はまさに試合さながらの緊張感に包まれる。

 

今回は、もちろん技術的な面も含めて、6分間練習があった方が間違いなく良い演技ができるってあるんですけど、ほぼたぶん試合で使っても遜色のないジャンプ構成になっているんで、難易度になっているんで

 

実はこのあとに続くプログラムは、4回転を含む実践さながらの高難度。しかも演技終盤には、試合では見られない組み合わせの連続ジャンプも。まさにフィギュアスケートの常識と限界を超える構成になっている。

 

 

  破滅への使者

 

 

演技を終えると、「キツイ」と咳き込みながら蹲る姿も。

 

自分で考えても、『何でこんなことにしたのかな』って正直思ってますもん、しんどすぎて。普通じゃないので、この体力の使い方って。

なんかマラソンに近いんですけど、脳がどんどん酸欠になっていって、考えてる余裕がなくなっていくし。

しかも(僕の場合)考えれば考えるほど、どんどん体に巡らせる酸素量も少なくなっちゃうので、なるべく筋肉に酸素を送りたいんですよ、その筋肉に酸素を送るためには、思考をしていると酸素が少なくなっちゃうので、どれだけ思考を減らすか

 

たった一人で10を超えるプログラムを演じ切るアイスストーリー。

およそ4分間の演技に全てを注いでいた競技者の頃とは、比べ物にならないほど体力を消耗する。

 

10月上旬に行われた通しリハーサル。それは思考を減らすための特訓の場でもあった。

仙台のリンクでのリハーサル映像

 

こっから50秒?はーい

 

プログラムの構成、振付、早着替えの段取り。自然と体が動くようになるまで、何度も練習を繰り返した。

 

割と周りの人からは『器用だよね』って言われることがあるんですけど、僕は自分のことを器用なんて1回も思ったことがなくて、どっちかって言うと音楽も全部聞き込んで体に入るぐらいまでしないとなんか怖いし、もう頭パンパンです、毎回。

でも、まあそれもまた学びだし

 

「RE_PRAY」第2部はアイスショーの常識を覆す驚きのプログラムから幕を開ける。

 

この物語の中で、ひとつのプログラムを2回やるという、1つ大きな挑戦があるんですけど。

第1部のその物語を1回見た後だからこそ見える、そのプログラムはどれだけ変わっているかという、見ている方自身にその違いを実感してほしい

 

第1部のオープニングで演じた「いつか終わる夢」なんとそれをほぼ振付を変えずに再び演じる。

 

何も経験しなかった状態で『いつか終わる夢』という一番最初のプログラムを見た段階と、また同じ『いつか終わる夢』をやるときに、お客さんたちは同じレベルじゃなくて「第1部を通して」レベルアップしたお客さんたちなんで、『レベルアップした状態から見たときにどう?』というのが今回のコンセプトですね。

その変わっていく感覚を経験して、実際に改めて実感することによって、また世界の見え方が変わる一助となれるんじゃないかな、というおこがましい考えですけど、そんな考えでやりました

 

そして、ここからは羽生さんが過去に演じた代表的なプログラムが続いていく。

 

この物語(『RE_PRAY』)だからこそ見える、見え方と感じ方がたぶん存在していて、(以前とは)違った意味を持たせることができる、違った意味を持つことができる、そしていろんな考え方ができるというのが、アイスストーリーという自分が作り上げた体系のひとつだと思っているんで。

普通のアイスショーのひとつひとつのプログラムを見るのとは違う感覚で見てほしいな、というのはあります

 

 

  天と地のレクイエム

 

 

  あの夏へ

 

 

  Let Me Entertain You

 

 

  SEIMEI

 

 

自分で滑っていても、本当に大変だなと思っていて、練習しながら『何でやってるんだろな』って正直思います。

でも、たぶんこうやって、そんなに辛くても続けたいなって思えるのは、それを見に来てくださる方がいらっしゃるからなんですよね

 

 

  私は最強

 

 

そこに何かを期待してくださったり、“この演技が見たい”って、“羽生くんの演技が見たい”って思ってくれる方々がそこに存在しているから、何とか良い演技を見せたいって思えるし、その見たいって思ってくださる方々の手前には、僕のアイスストーリーを届けたいって思ってくださる方々もまたいて、その方々のためにも僕は最高の演技をしなきゃいけないなって思うし、それがモチベーションなのかなと思います。

それがあるからこそ、もっと上手くなりたいって思えるし、もっと良いものを届けられるように努力も続けられるし、そうやって上手くなっていけたらいいなって思います

 

 

 

<所感>

この番組の素晴らしいところは、(お昼の午後、全国的に地上波で放送することによって)

・椎名林檎さんファン、MIKIKO先生ファン、ジブリのファン、そして各ゲームに詳しいゲーマーの皆さんにも響くような、楽曲の細かいところまで再現している演技を放送したこと。それによって、既存のフィギュアスケートでは接点がなかったかもしれない方々(競技会以外見たことがない方々)へ、最新の羽生選手の演技をもっと見たいと思ってもらえたこと。

・逆に、知らない楽曲やゲーム(サンズ、クジャって?)に疎い方々には、その世界観を羽生選手の言葉を通して知ることができ、より「RE_PRAY」という大きな作品の価値に気づくことができたこと(これは私のことです)。

・羽生選手のそれぞれのプログラムへの思い、フィギュアスケートとしての新しい試みへの裏話や苦悩が聞けたこと。それによって、羽生選手の聡明で誠実さを再認識できたこと。

・その上で、「RE_PRAY」そのものの肝心な人生の選択や価値観などを考えさせる映像は、ほぼ流れなかったこと。

 

なので、実際のアイスストーリーを見ないと全容を把握することができないことは大きいです。

 

ということで、

1月12日、14日の佐賀公演(今からでしたら、14日のCS放送とライブ・ビューイングがあります)

2月17日、19日の横浜公演(今からチケット抽選販売。これはますます激戦になりますね)

が楽しみですね。

 

 

 

(もっと、それぞれの楽曲について感想を述べたいのですが、私自身の語彙力のなさと、言葉では言い尽くせない魅力があって、書ききれませんでした。失礼いたします)