杜の都・仙台の観光スポットを巡るバス「るーぷる仙台」は、仙台観光の足として定着しています。

例えば、仙台藩祖・伊達政宗公が眠る霊廟「瑞鳳殿」、仙台市内を一望できる「仙台城跡」など政宗公ゆかりの場所巡りにも活用できます。

また、「仙台市博物館」「宮城県美術館」などの文化や芸術巡り、天然記念物である青葉山内にある「東北大学植物園」で自然を満喫したり、国宝「大崎八幡宮」に参拝したり、観光の目玉となる場所に「るーぷる仙台」のバス停があります。

 

その「るーぷる仙台」の11番目のバス停は「交通公園・三居沢水力発電所前」です。

上記のような観光名所ほどの知名度もなく、「大崎八幡宮前」の手前なのでついつい見落としてしまいがちですが、実は歴史的な場所であることを知りました。

 

この「三居沢水力発電所」は、日本の水力発電発祥の地です。

 

明治21年(1888)7月1日、宮城紡績会社三居沢工場で紡績用水車タービンを利用して、

直流5kWの発電に成功。工場内の照明50灯と烏崎山の山頂に約1,000Wのアーク灯をともしました。

 

ちなみに、日本で初の電気の灯火は、明治11年(1878)3月25日、東京虎ノ門の工部大学ホールで催された電信中央局の開業祝賀会において、50個のアーク灯が点灯。

この3月25日は電気記念日となっています。

 

一方、世界初の水力発電所は、明治14年(1881)アメリカのウィスコンシン州アップルトンに建設。

そのたった7年後には、自家用ながら宮城紡績会社の三居沢工場で水力による発電を行ったため「日本の水力発電発祥の地」とされています。

 

 

 

戊辰戦争で賊軍とされた仙台藩は、明治維新後厳しい状況下にありました。

そんな中、旧仙台藩の支藩一関藩士の家に生まれた菅 克復(カン コクフク)氏は、明治維新後に仙台藩権大属、東京の仙台藩邸監察も務めていました。

しかし、武士の失業救済のために機職業の将来性に着目し、私財を投じて錦織の機器を購入し、明治7年(1874)機職場を設立。士族の子女に職を与えました。

明治11年(1878)、松平県令の要請で宮城郡長に就任。政府が様式紡績機械12台を購入し、そのうちの1台を仙台に割り当てたことを知ります。

そこで、宮城県内の地主らの協力を得て、紡績機械の払い下げを受け、明治15年(1882)ここ三居沢に宮城紡績会社を設立し、翌年郡長を辞任し社長に就任しました。

その後、自ら東京で国産の発電機を買い求め、明治21年(1888)工場動力用の水車にとりつけて、工場内の白熱灯50灯とアーク灯1灯の試験点灯に成功し、これが東北初の電気のあかりとなりました。

 

実は、現在も現役の発電所です。

三居沢発電所は出力1,000kWの水力発電所と配電用変電所として、変圧器出力3,000kVAの能力をもちます。昭和53年(1978)からは無人化され、仙台技術センターから遠隔監視・制御されています。

 

また、発電所建屋は平成11年8月23日に「国指定有形文化財」として登録

発電所関係機器ならびに資料群は平成20年8月7日に社団法人日本機械学会より「機会遺産」として認定。

発電所と所蔵物は平成21年2月6日に経済産業省より「近代化産業遺産」として認定。

 

 

その発電所の隣には「三居沢電気百年館」があり、電気と暮らしの関わり等を紹介しています。入館無料で電気の歴史を学ぶことができます。

 

発電所の南側には「三居沢不動尊」があります。

発電所は広瀬川の水を利用していますが、不動尊にはもともと水が豊富だったことを証明するかのように滝があります。

また、「交通公園」はお子さんに交通ルールを理解してもらう機会にもなりますので、家族連れで足を運んでみてはいかがでしょうか?