「ファッションと私①」 | BESPOKE

BESPOKE

芸術をめぐる冒険と、最近思うこと、いろいろ。

最近この歳になってやっぱりファッションは楽しいと思うようになった。
私がファッションに興味を持ち始めたのは
20歳になって少し経った頃だった。
それまでは何を着ても、あんまりしっくりこなかった。
母が服飾学校を卒業していて
自分のためだけに洋服を作ってくれていた
幼少期からなんとなく興味を持ち始めていたと思う。

でも初めて自分の意思で、本当の意味で興味を持ったものに
出会ったのは「コムデギャルソン」だった。
服飾の学校でであった友人と
毎週金曜日の課外授業で歩きまわっていた新宿で
OIOI MENに立ち寄った時のことだったと思う。
現在は閉店したCOMME des GARCONS HOMMEだった。
あの瞬間がどんなに衝撃的だったことか。
こんな服見たこともない、しかもカッコいいし、美しい。
お店の形も、什器も、陳列の仕方も、今までまったく見たこともないデザイン。
店員さんの着こなしから何から、
その他のお店とまったく違っていた。
こんな世界があるのかと震えた。
思えばあの時、自分の人生が
いい意味でも悪い意味でも色々な事が変わっていった瞬間だったと思う。

友人はあまり興味をそそられていないようだったが
私はとてもウキウキした気持ちで学校へと戻っていった。
そこからはコムデギャルソンの事しか考えられなくなっていった。
漠然としていた就職先も、自分の本当に着たいものも
コムデギャルソンしかないと勘違いしていったのだった。

バイト代を全てつぎ込み、
手に入れたギャルソンのジャケットやパンツが宝物だった。
どんなに高くても、関係なかった。
今まで着ていた、しっくりこなかった沢山の洋服はもう必要なくなっていた。
奇抜な服だから、町中や電車の中で
笑われたり、後ろ指さされることもあった。
でも、心からしっくりきた。
自分はこれが着たかったんだと。

つづく。