第8回は、集団塾に見られる「学校別対策」についてです。

 

 中学受験も佳境に入ってくると、塾や受験情報誌から盛んに聞こえてくるのが「学校別対策を始めましょう」という声です。実際、難関校と呼ばれる学校の多くは独自の出題傾向を持ち、それに特化した対策が必要なことは間違いありません。

 しかし、この「学校別対策」という言葉に、過剰に反応して振り回されてしまう家庭が少なくないのも事実です。大切なのは、「今の子どもの段階で、本当に“学校別”に絞るべきなのか?」という冷静な視点です。


■ 学校別対策は「応用」であり「基礎の上」に成り立つ

 学校別の対策が有効に機能するのは、一定の学力と基礎力が身についていることが前提です。算数であれば、計算力や典型問題の理解がある程度固まっていてこそ、応用的なパターンに挑めます。国語であれば、文章を読む力や設問の意図をくみ取る力がなければ、出題形式に慣れる意味は薄れてしまいます。

 つまり、「学校に合わせること」より「自分を鍛えること」を優先すべき時期がある、ということです。それぞれの達成度によっても違いますが、一般的に考えて、6年生の夏ごろまでは、むしろ全体の学力を底上げする時期。苦手分野の克服、基礎知識の定着、そして思考力の育成―これらが土台になって初めて、学校別のアプローチが実を結びます。


■ 「この学校に受かるには…」という意識がプレッシャーに

 また、学校別対策を始めると、親子ともに「この学校の問題が解けないと受からない」という思考に陥りがちです。その結果、「できない=無理なのでは」と焦ったり、「過去問で点が取れなかった=向いていないのかも」と早々にあきらめたりしてしまうリスクがあります。

 大切なのは、過去問や対策問題で点が取れなくても、それは“スタート地点”だという認識です。最初から合格点が取れる必要はありません。むしろ、「今は何が足りないか」を見つけ、それに向けてどう取り組むかが、本当の意味での“対策”なのです。


■ 塾の「学校別講座」も吟味が必要

 多くの集団塾では、秋以降に学校別の特訓講座が用意されます。もちろん、効果的に使えば大きな武器になりますが、すべてを鵜呑みにするのは危険です。講座が合わずに理解が深まらない、通常授業との兼ね合いで、負担が大きくなってしまい、体力的・精神的にきつい…そうした場合は、無理に受講しないという選択もあることを忘れないでください。

 特に体力のない子や、複数の講座を掛け持ちしようとするケースでは、学習の「質」が下がってしまう恐れがあります。必要な対策を見極め、絞り込むことこそ、親のサポートの腕の見せどころです。


■ 「学校別」より「子ども別」

 学校の傾向に合わせること以上に大事なのは、「その子に何が必要か」を見極める視点です。同じ学校を目指していても、ある子は記述の練習が必要で、ある子は計算ミスの克服が課題かもしれません。対策の中身も順序も、子どもによって変わるのが自然です。

 究極的には、学校別対策はあくまで“手段”であり、目的は「その学校に合格すること」ではなく、「その学校で6年間を充実して過ごすための準備をすること」です。目の前のことにとらわれすぎずに、柔軟に、そして冷静に取り組んでいくことを意識してみてください。


 

 「対策」という言葉で安心を増すことができる一方、それだけに振り回されることなく、今のお子さん自身に必要な力を丁寧に育てることを意識するようにしてみてください。これこそが、ブレない受験の軸になります。