幼き日からずっと自分の存在を傷つけられ続けてきた3代家光と、将軍である父に慰み者にされてきた13代家定。2人とも美少女であり孤独で毒舌だった。家光には有功が、家定には天璋院がその孤独から救い傷つけられていた自尊心を取り戻す言葉と愛情を注ぐ。
家光と有功の愛は、戦乱のない平和の世を維持するためには世継ぎは血族で、と考える春日局によって引き裂かれるが、それでも生涯有功は家光を案じ続けた。家定は腹心の老中阿部正弘によって父の醜悪な強制から逃れ、御台天璋院を迎えることができた。
自分を天下を取る器だと信じてついてきてくれる腹心が家定を強くし、
自身を卑しめるようなことを言わずにおれない家定を天璋院は上様は忍耐と知恵で地獄を潜り抜け、将軍の座にあると伝える。
19巻で滝山の養子になっていると告げられ、即座に走り出す仲野。
このエピソードに4代将軍綱吉を思い出す。生類憐れみの令の犠牲で許嫁を犬に咬み殺された男が夜伽に紛れて綱吉を殺害しようとし、右衛門佐の機転で綱吉は助かったが、疲れた、ひとりになりたいと告げた瞬間、右衛門佐はあなた様は自害なさるおつもりだと見抜き、自分自身の存在意義を失って疲れていた綱吉に、生きるということは、男と女ということは、ただ女の腹に種をつけ家系を繋いでいくこちではない、と強く言い、初めて愛を告げる。
仲野と滝山は主従愛ですが、大切な誰かが死を選ぼうとしているのを察知して必死に止めようとするエピソードとして重なったであります。
初期の有功が周りから酷い嫌がらせを受けていた時、澤村が素振り1000回という凄惨なシゴキ をしたおかげで周りの有功を見る目が変わったことは、男娼上がりで女の仕草が抜けない滝山に激しい稽古をつけた吉川のおかげで、滝山が周りに溶け込めたというエピソードに重なる。
お万(有功)の方好みの流水紋はこの物語で繰り返し出てくるけれど、流水紋のように少しずつ変奏を加え繰り返されるエピソードに、
歴史は繰り返されるという言葉と、繰り返しながら少しずつ上昇していくものの姿を感じる。