浅倉伸個展【滅びない 第七部】
彩画堂S-SPACE 2020.12.21-12.26
 
画像はインスタレーション、「フーイニア2020」。
Twitterも拝見していたのですが、画像で見るとクリスマスツリーのようなキラキラ感がつよく、ん?大量のメルトツムリ(メルトは溶けるという意味)を撮ったのかな?
 
と思っていたら、大量のメルトツムリを整列させて、真上から撮ったものを布地にしたものをバック布として敷いて、上にメルトツムリとぬいぐるみ(と呼んでいいのかな)が配置されていたのでした。
 
スマホで真上から撮ると、ほんとうにどちらが布のプリントでどちらが立体なのかわからなくなる…。

 

 
このメルトツムリの殻は、エスカルゴやマイマイカブリの殻を通販で仕入れているそうです。沖縄に食用のために移入されたマイマイカブリが脱走し、爆発的に増殖し、生態系に影響を及ぼした経緯は、いまWikipediaを読んだのですが、
 
しかし、マイマイカブリに罪があるわけではなく、マイマイは自らの自然に従って増殖しただけでして…というのはまるで、
 
新・諸病諸薬の戦い のような展開です。

 

 
この作品はメタリックカラーで明るく、可愛らしささえ醸しているのですが、この大きな排出口が2つある、触手が無数についた本体は水木しげる先生の描く妖怪の髪の毛や草木の描写のようですが(お聞きしたら水木しげる先生の大ファンで妖怪がすきだと知ってうれしい)、こちらが新コロナ。
 
左側には地球上のいろんな生き物がカラフルに浮かび、

 

 

 
この黒い、目の赤い前歯のかっちりした子はお聞きしたわけではないのですが、この展覧会全体のあちこちに登場するキャラクターのように拝見しました。
 

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No- hair theorem No.4

 

この巨大なオタマジャクシみたいな子は、「新・諸病諸薬の戦い」のあの子が眠っているところのような気がします。

No- hair theorem、直訳すると 髪がない定理、もしかしたら、

 

チャンスの神には後髪がない、

 

という慣用句からつけられたタイトルなのでは…。

 

 

 

 
ここにもあの黒い子がいた!そんな見方をしていいのか。
 

 

 

 

 

 
この複雑に絡み合った絵ですが、すべて下描きなし(ベロアやトロアといった素材にマーカーで描いてくので、そもそも下描きができにくい)で、一か所から描きすすめていくのだそうです。
 
細かく重なり合って絡み合っているようなところも、後から足して描くことができない技法なので…
 
その時はおもに線のことだけ考えていたのですが、全体の色彩の統一感と海の底のサンゴ礁の森を見ているような華やかさも同時にできあがっていくわけで、
 
線の論理性と色彩の楽しさも、脳内で戦いあっている感じなのかなーと想像しました。

 

 
こういう写真が撮りたいといつも思っているので、
(パイプ好きなのです)わー、やられた!いいなあ、こういうのいいなあ!と無条件で喜びました。
 
滅びない・けもの路地(三十九)
 

 

 
こちらは盛岡の中津川にかかる、橋の擬宝珠と遡上する鮭。のメタリックな絵の後ろに複雑に絡み合った背景が透過率70%くらいで見えています。
この透過率のある絵も好きでした。

 

滅びない・空に吸われし四十九の心(四十)

 

 
さらにこちらの墓地。
 
私も幼児期から墓地が好きで、ヒマになると友達と墓地に遊びに行ったので、お墓の絵を見るとああ楽しいなあと思う口です。
そのお墓を透かして、カラフルな絵の具を絞り出したような、いちばん太いアクリル毛糸のようなうねうねが見えています。
 
墓地も路地も、上の橋も、日常の中にある光景・風景ですが、その向こうにも「滅びない」戦いはつづいていくし、そのことは特別なことではなく、耳を澄ませば見えてくるという気がします。

 

いろんなひとが「フーイニア2020」のメルトツムリをTwitterなどでこの子が好き!といっている中に入っていなかったので…

 

この飛蝗ツムリがけっこうすきなんですが、どうでしょう。

 

舟越桂さんのスフィンクスのなかに、バッタを口にしているスフィンクスがいて、脚も森の中で拾ったような木で空中にささえられているようだったのですが、それを連想しました。

 

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ふかふかした手触りの布のぬいぐるみの表面に描かれたものをスマホで撮って拡大すると、こんなに細かい、綿密な絵をと驚きつつ、ぬいぐるみ全体から受け取る、不気味で可愛いものを、もしかしたらそれは、

 

人間そのものの可愛さと不気味さなのかもしれないと思ったりします。

 

コロナが蔓延する時代の中で、「滅びない」というテーマはますます拡がりを持ち、深まっていくように思えます。

 

浅倉 伸 ASAKURA Shin

 

ではでは♪