図録の顔も、この「水に映る月蝕」。このフォルムがすきなので、また会えてうれしかった。2015年6月に兵庫県立美術館で開催された「舟越桂展 私の中のスフィンクス」はスフィンクスがすきだから出かけたわけですが、この縁日の風船ヨーヨーを髣髴とさせる球形に広がりのようなものを感じて、そのなかの水に浸かりたいと思います。

 

 
今回一番心を許せる感じがしたのがこの作品でした。「私の中のスフィンクス」で見た、こういう森の中で拾った樹からつくったような脚をもつスフィンクスと「水に映る月蝕」のミックスのような。
「海にとどく手」という作品名でした。

 

 

 

新作のスフィンクス。

「スフィンクスには何を問うか?」

 

この着彩の青紫と腕のシマシマ、喉元の白い輪、乳房のアシメトリーなど、彫刻の上にべつの絵画を重ねたような不思議な感じがあります。もしかしたらスフィンクスが見つめている人間の住む家なのかもしれないし、教会なのかもしれない。そんなことも考えます。

 

 

 
舟越桂さんのはじめての彫刻作品、函館のトラピスト修道院に依頼された聖母子像のための試作です。
この作品が出ているとは知らなかったので、自分のふらっと見に行こうと思う力はけっこういいものを引き当てるなと自信を持ってしまった笑。
 
 

 

 
完成品は函館のトラピスト修道院まで行かなくては見られないのですが、なんと!
 
図録の終わりの方に、出来上がった聖母子像をトラックに乗せるところの写真がありました。
聖母を後ろに引き上げようとしているのが桂さん、かがんで滑り止めを抑えているのが弟の直木さん、そしてこの写真を撮ったのがおふたりのお父様である舟越保武さん。
 
試作の聖母に比べて、ずいぶん首が長く、腕も長く、幼子イエスを支える腕の作り出す空間が立体的です。
 
彫刻の試作と完成作品、ドローイングと作品の関係は、
日本画の下絵と実際に描かれた作品との関係に似ています。

 

 

 
遠い振り子(それにしても作品のタイトルがどれも魅力的です)

 

 

 
そのドローイング。
表情、手の形の違いに気が付きます。手をかるく握ったドローイングと無造作に立てた彫刻作品のあいだにどのような思考実験があったのだろうと思います。ドローイングと彫刻はべつの作品だけど関連性がある、というふうにも見えます。

 

 

 

舟越桂さんはメモ魔で、いろんな言葉をメモしてはそれを箱に取っておいたり、ピンでとめておいたりするそうです。

 

実際のメモをそのままのかたちで展示したコーナーがありました。

 

 

 
図録にお子さんや甥御さんたちにつくられたおもぢゃも載っていました。展示ではもともとあるガラスケースに味のある配置で飾られていました。
ちょうどクリスマスシーズンでもあり、彫刻家の桂さんが子どもたちに贈るおもちゃや小さな絵本はクリスマスの贈り物のイメージに重なり、暖かい気持ちになりました。
 
予備知識なしに、あ、桂さんの彫刻だ、見たいな、と思ってでかけたのですが、舟越保武さんと直木さんの作品の展示もあり、
 
見ごたえのある展覧会でした。図録とポストカードは受付で販売していました。
 
 
作品の撮影は禁止ですが、この趣のある建物の撮影は受付で許可をもらえばOKでした。
いま帰ってきてから知ったのですが、この美術館の設計者は白井晟一。開館は1981年(来年で40周年!)。
 
 
 
帰りに撮った外観のなかで、この手洗いがついたところが特に気に入りました。かなり難しい工法だったのではないかと想像します。
前もっていろいろ予習していけばもっと見所があったと思われますが、ふらっと入って、あとで、あれ?と思って調べるのも楽しいものです。
 
ではでは♪