こんにちは!
久しぶりに岩手県立美術館へいってきました。
 
岩手県知事の「休業要請を延長しない」発言があって、
土曜日はうちも予想外にお客様がきてくださったので、
もしかしたら美術館はまだ行かないほうがいいかなと思ったのですが、
 
外に出たら雨だったので、これは空いているパターン、と思って行ってきました。常設展しかやっていなくて天気が悪いとお客様が少ないことは長年(?)ボランティアで通っているうちに悟りましたわ。
 
しかし予想をさらにうわまわる貸し切り状態でした。
 
入り口でアルコールで手を消毒して、住所氏名メールアドレスの記入、非接触体温計での検温(低いので驚かれました。低血圧低体温脈拍少ないの三拍子ですよ)などなどクリアしまして、
 
2階常設展示室へ。

 

今回のポスター、ちょっとレトロな感じだなあ。
昭和というか、「エール!」というか。
常設展第1期のテーマは「Posing-かたちを生む身体」
いろんな体を見ましょう。

 

 

 
宇津宮功さんの【非・場№182】。
巨大作品なので、廊下に展示してある。まさしく「非・場」。
作品のタイトルには特に意味を置かないそうですが、抽象的な単語も数字もかえってイメージを呼び覚ましそうな気がします。

 

 

 
ポスターにも採択されていた萬鐵五郎「男」1925
162.3㎝。カメラで上から撮ったみたいな構図です。頭部が大きく、
足先に向かうにつれて細く短くなっていく。
 

 

 

 
 
「男」1914.サイズというか、縦の長さは1925ヴァージョンの半分の80.4㎝。やっぱり頭が大きくて足先に向かうにつれて短く細くなっていく。モデルはモデルだけあって、なかなかいい体だったと思うんですよ。デフォルメによって残念なスタイルになっていますが肩幅は広く、腕も長く太ももあたりに手があるところを見ると、やっぱり腕が長いと思われます。

 

 

【裸体習作】1908 萬鐵五郎23歳の作品ということになります。
東京美術学校(現在の東京藝術大学)在学中の授業でやったのかな。こちらはやや低いアングルからとらえたように見えます。私の好みの問題なのかもしれませんが、腕が短く見えませんか?
逆に膝下がこんなに長いバランスの日本人男子がこの時代いたかしら?
 
この時代から後年の「男」になるまで、ずっとこのモチーフを追い続けていたんだなあと。版画でもあった気がします。

 

 

 

 

 

児玉晃の作品もすきなので、出ていると喜びです。

 

 

 

画面いっぱいにひとりの男が描かれ、その異様なポーズと裏腹の手の表情の描写や半ズボンから伸びた脚の骨や足の指先…

 

足元に差し色的な赤まんま。これは岸田劉生の【麗子像】へのオマージュ。児玉晃は若い頃岸田劉生に深く影響を受けたそうです。しかしこの独特のギリギリのユーモアは私としては水木しげる的と感じる。しかしどうやればこんな漆のような黒になるんだろう。

 

 
コンテンポラリーとか、大駱駝艦とか、暗黒舞踏とか。背景も黒ですが、おなじ黒でも上の絵とはまたちがう黒です。

 

 

松田松雄の黒もまたちがう黒。

 

 

 
からだをテーマにした常設展示なのに、勝手に黒の差異を見ていました(笑)。すきなように見ればいいのだと思います。
 
2015年の【松田松雄展】ではどうしてもこの無言で抱き合っているひとびとの絵が震災を連想させて、絵に物語を重ねてみてしまっていたのですが、いまはフラットな気持ちで見られる。人間のからだって、ひとりでいても不思議だけど、絡み合うようなふたりはもっと不思議です。

 

 

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吉田清志【朝(梳る)】。
山の絵が多い作家ですが、この絵はルドンの絵みたいな配色だな、と思ってひきつけられて、
 
ふと視点を変えたら、山の女神のようにも思えたりもする。
 

 

 

 
萬鐵五郎「もたれて立つ人」の水墨バージョン。このヴァリエーションもすごくたくさんある…すごくたくさん、何を言いたい笑。
 
前期(6/7)までの展示だったので、見られてよかった。
 

 

 

 
今回画期的(?)だったのはふだん廊下にあるマイヨールの「三人妖精」が展示室内に展示されていたことですよ。
昔は1Fのグランドギャラリーに定住していたのに、じわじわ移動しているなあ。新鮮でした。
 
ここ2年くらい、常設展示室がすごく面白くなって(語彙)、今日は特に退室しようと思ったらもうひとりお客様が入ってきて、ということはそれまでは完璧貸し切りだったということですよ。
 
気兼ねなくスマホで撮りまくり、誰かにぶつかる不安もなく、下がりたいだけ後ろに下がり、いきなりしゃがんで下から見上げたり、近づいたり、楽しみました。
 
ひとが多い時はああ繁盛しているなと思ってうれしかったけど、少ないときは作品がのびのびしているな、と思って自分ものびのび楽しむ。
 
コロナ感染の不安がひろがってから、ずっと美術館には入っていなかったので、新鮮だった。
 
コロナ対策で受付にアクリル板(なのか?)があったり、住所など記入をもとめられたりはするけど、それ以外は案外違和はなかった。監視員の方は見に来た人(わたし)が向かってくるとさっと席をたってあくまでソーシャルディスタンスを保つけれど、そのくらい。
 
ここが変わらずあってホッとするな、と思った。
 
作品をゆっくり眺める楽しさとはべつに、コロナの時代に日常から切り離された時間を持ててよかった。
 
ではでは♪