カルティエ、時の結晶(〜12/16) 国立新美術館


月曜日の美術館と言えば六本木方面でして、宝飾にはあまり興味がなかったのですが、会場の構成が新素材研究所(現代美術作家の杉本博司さん、建築家の榊田倫之さんによる)と知ってにわかに見たくなって。



思いがけない余徳として秋晴れの新国立美術館の庭の木々の紅葉。

多幸感に溢れる黄金色の午後。


撮影禁止だろうと思ってケータイの電源は切っていたのですが、最後に太っ腹な撮影OK領。

ここを撮影できたおかげで、会場のディティールも忘れ難くなりました。

図録はふつう、展示会場の構成までは載っていないので。



新素材研究所のカルティエ展への情熱というか深い理解が見どころでした。

カルティエの宝飾と仏教、神代杉春日杉などの木の香の中で見てほしいという気持ちからこのような展示になっています。

撮影禁止のコーナーでしたが大谷石を組んだ構成も地中に眠る鉱物を感じさせ、宝石は地球の深いところから繋がっていることを思い出させました。単純に大谷石と宝石という異素材の意外性ではなく、構成素材のひとつひとつに深く心を込めていることがわかってよかった。

最近は図録を読めばわかるかなと思っても、図録には書いていないこともあるし図録を読むまで1年くらい寝かすこともあるので、監視員のお嬢さんに聞いちゃいます。

どなたも丁寧に熱心に教えてくれてありがたかったです。あと会場が宝石の輝きを引き立てるために暗くなっているので、水先案内人のように要所要所で案内してくれるのもこの展覧会には特によかった。

ふと、

暗がりの向こうに美しい宝飾があることが、葛飾応為の吉原の絵のようだなと思ったり、お化け屋敷の怖くて楽しくてドキドキする感じにも似てるなと思いました。



トルソーは京都の仏師さんが彫る道具をトルドー用に仕立ててやはり春日杉や神代杉で作ったもの。台座も透明感がある色の合成石で、自分は『百億の昼と千億の夜』(萩尾望都)の影響で仏像を見るのが好きですが、あの仏像たちのアクセサリーについても空想しました。





タイガーもあったけどカルティエさんは豹に美を感じられるようです。豹の体型や模様は爬虫類っぽくもあるからかな。

カルティエの集めた資料も興味深かったです。

というように宝飾について白紙の自分が見ても楽しくて心が揺さぶられる展覧会でした。

美しいものを身につけたいと思うより、うっとり眺めていたいというのが自分なんだなと再認識しました。