生誕120 年・没後100年 関根正二展(〜11/10)

福島県立美術館 



行ってきましたー今年4回目の福島県立美術館!

関根正二展は大満足でした。


ブリジストン美術館(いまは名前が変わったけど)や国立東京近代美術館、福島県立美術館、大原美術館でぼちぼち見ていた関根正二ですが、


デッサンや風景画も併せて見ると同じ絵も違って見える。






福島県立美術館は背景に青空と山を背負って、手前のプールが空を映して海のようです。自然とともにある美術館という趣でオープンな雰囲気です。


図書館とつながっている構造も素晴らしい。最寄駅は図書館美術館前駅。

美術館から駆け出せば2分くらいで間に合います。新幹線のある福島駅までは3分。この電車も可愛いのでぜひ。



福島県立美術館の上から自然光がサーッと入ってくる構造は教会を思わせます。

関根正二の絵にはキリスト教をモチーフにしたものがあるので(代表作がそればっかりなのでその印象が強い)、何かいいこのアプローチ!

と思いながら企画展示室へ。

1899年〜1919年という短い生涯で、制作活動期間は4、5年の短さ。村山槐多にかぶる。しかし今回知ったのですが、関根正二と村山槐多には交友関係を示すような資料はないそうです。

無意識に夭逝の近代洋画家同士交流があった気がしていた。


ここにくる2、3日前に村山槐多展で買った『無言館 戦没画学生たちの青春』(窪島誠一郎)を読んだので、信濃デッサン館(長野県信濃美術館信濃デッサン館コレクション)所蔵作品を見るたびに、おおおおと喜びました。関根正二のデッサンや特に顔の表情を描いたものに引きつけられました。

関根正二の肖像画は故郷白河で人気だったらしく、注文が殺到し手早く東京に帰りたいという手紙もあったくらい。その人の内面を捉えた肖像画だから描いてもらいたくなるんだろうなあと。




チューリップ好きなのでこの絵はうれしかった。色彩がとにかく素晴らしい。色が雨や霧や雪のように温度と湿り気をもって気持ちを動かす。

やっぱり関根正二の絵は生じゃないとダメだと思ったです。

チューリップの日本における本格的な栽培もこの時期からだそうで、そうなるともちろん宮澤賢治がいまだったらロールスロイス並みの高価さだったリヤカーでチューリップやトマトを売り歩いていたのもこの頃?と連想する。

自分の中では賢治と関根正二はどこか重なる。


「小供」




「子供」

この背景の青と子供の頬や服の赤の強いオレンジ(バーミリオン)の透明感と明るさ。

もともと好きな絵ですが、きょうは特によかった。

「小供」も好きだなあと思ったけれど、この絵を経てこうなったという過程が見えるとますます好きになります。



兜屋画堂主・野島康三(1889ー1964)についての解説にも興奮である。関根正二・村山槐多の名前が今日残っているのは兜屋の遺作展があったからだと書かれています。私は野島邸での萬鐵五郎展覧会、という関連でこの名前に覚えがあったんだけど、

詳しいことがわかってうれしい。


それにしてもこの人、金栗四三や志ん生と同年代に生まれて東京マラソンの年に亡くなったんですね。関根正二や村山槐多、岸田劉生の夭逝の画家の展覧会を続けて見てうっかり、人は明治に生まれて大正に死ぬような気になっていたけど、

長く生きて移り変わる時代を見る人もいて、その方が多いわけで。

キャプションの中にあった、

「大正期の文学と美術、演劇の交錯は、なおも更なる考察に開かれている」という文章がすごく気に入ってしまった。

宮澤賢治はそこに農民芸術という要素が加わるけれど、関根正二を推していた有島生馬の甥(武郎の息子)は俳優の森雅之だし、民藝は民藝運動の民藝だしなあ…といろいろ連想する。

関根正二展はほんとに会場で見るしかない絵ばっかりで、11/10までですがぜひ。