田辺聖子さんの『窓を開けますか?』は中1から何十回読んだかわからない…はずだったが、さっき読み返していたら次々読んでいなかった光景が炸裂するじゃないですか。

初版は1972年。47年前ですな。
主人公亜希子が30代前半でハイミス(田辺さんはハイミスという言葉を情感を込めて使っているが)というところは時代を感じさせるけれど、仕事もアルバイトのDJも、桐生との関係も軽やかに楽しんでいた。ところが桐生の一人娘が中学生の若さで事故死してからふたりのバランスは狂いだし、亜希子は年下の自分に気のある男と旅行したり、その男にプロポーズされて一旦はその気になりながらも連絡をしないまま投げやって、

またすぐに旅に出てしまう。

その奄美の小さな島へ桐生が追いかけてくる。島の青年にお客さんが来ていると呼ばれ戻ると桐生がいてー。

ってこんなまとめでは全然おもしろくない話になってしまうけどすごくおもしろいです。

年下で傲慢な口を利くが笑うと可愛い端田。86年のテレビドラマ化では加藤健一。そうそうそんな感じ。亜希子は松坂慶子。当時34歳だしドラマだし少女趣味的な性格でもあるので納得。桐生は林隆三。


この端田との旅行で行くのが熊本で吉利支丹村など訪れたい亜希子とオペ明けで眠ってばかりいる端田が絵に浮かぶ気がするのは『ブラックジャックによろしく』や『コウノドリ』が頭にあるからでしょう。端田は産婦人科医。

端田は会社もDJのアルバイトも辞めて、俺のアパートで一緒に暮らそうといい亜希子も会社を辞めるのですが、このまま端田のもとに行けば人間的に最低だと思い、

貯金を全部下ろして奄美大島へ行く。奄美の中でも南の端の古仁屋に向かいそこで原始的な力を取り戻す。恋するふりをしている方が恋はうまく行くと嘯いていた亜希子がそんな生の恋を渇望する。

そこへ桐生がー。

なんだが、当時中学生の私は熊本も隠れキリシタンも活字でしかないので飛ばしたと思われる。奄美大島はたぶん四国のどこかの島だと思っていた。

いま読んでディティールが入ってくるのは40年の間に見た映画マンガ小説美術展演劇などなどのイメージの補完作用ではないかと。

端田のイメージはNHKの朝ドラ「ひらり」で渡辺いっけい演じるドクターがドンピシャだった(個人の感想です)。


アダンの林をぬけて海に出たという一文から田中一村の「アダンの海辺」を連想し、きみ悪いほどの肌が赤や青の魚にこの絵を思い出す。


本は寝かせてから読み返すとまた発見があって楽しい。