高校の頃、太宰治が好きで、太宰はもちろん、
太田治子さん(ハボタンの赤ちゃん)も津島祐子さん(映画の中では宮沢りえが演じた美知子さんが産んだ赤ちゃん)も読み尽くし、太宰治が好きなああまり三島由紀夫全集の月報まで読んだものです。

いやどこかに太宰のことが書いてないかなって。

好きになるとその人の名前が出ていればなんでも読むし、太田治子さんは全然予備知識なしに、

絶対この名前は太宰治に関係ある!と思って読んだらお嬢さんのひとりだった。恋する乙女の勘はすげえなあ。


というくらい煮詰まった太宰好きだった私ですが、よく聞くように反動で嫌いになることもなく、年に何回か読みたくなって読むとやっぱりうめえなあ!と恐れ入るのだった。東海林さだおさんも太宰治好きで一族郎党の書いたものまで読み尽くしたそうです。エッセイを読むと太宰の影響を感じる。


蜷川美花監督の太宰だからやっぱりイメージが鮮やかだった。

聖母マリアのイメージから外から入ってくる光が十字だったり、

喀血して白菊(かな?蜷川美花監督は花の知識も豊富なんだろうなーと思いつつ白菊で済ませてすまん)で埋められる画面に磔刑のキリストのイメージで仰向けになる太宰(小栗旬)とか、

最後に「人間失格」を執筆している太宰の周りが分解されるみたいに離れていって、まるで演劇の大きな仕掛けみたいだーと思ったところはダリの絵にイメージが重なったり、



太宰が愛人たちと密会したり編集者や取り巻きや文学仲間と会うバーの二階の壁紙が若冲だったり、静子の没落した館の壁紙がウィリアム・モリスだったり、ベッドのクッションや壁のヨーヨーキルトのタペストリーまで蜷川美花のピンクとか、書き尽くせないくらい視覚的に贅沢で楽しかった。

でも最後に、

「グッドバイ」

と手を振って向こうに行ったらどうだったかな。

静子のとことん能天気なお嬢様ぶりに、「グッド・バイ」の登場人物を重ねたらおもしろそうと思ったんです。静子も未亡人山﨑富栄も従来のイメージと全然違ってそこが凄くおもしろかった。もっとやれ!と思ったくらい。


最初の彼岸花、静子に逢いに行く足柄の紅梅の林、喀血の頃の雪の山茶花、太宰が入水心中したあとの六月の菖蒲と洗濯を干すと出てきた妻の青紫の着物…花や色彩やイメージが美しくて、一枚一枚をスチールで見たくなったのですが、パンフレットは完売でした。ふはっ!