伊藤比呂美の本はハタチで出会った「感情線 のびた」からいろんなジャンルの著書や共著まで読んできた。

「感情線 のびた」じゃなくってもっと後になって出たたぶんクロワッサンのインタビューで、伊藤さんの手相を見て驚いた。

感情線は忘れたけれど、頭脳線がすごく長くしかも生命線の複線みたいな急角度だったからです。ああ詩人の手相だなあと思った。

「閉経記」は2013年、伊藤比呂美は1955生まれだから(赤阪さんと同じだなと思ってしまうのは私だけでしょう、わかってる)58になる年の発行で、主な初出は「婦人公論」の2011年〜2012年の連載でした。
いまの自分と同じ年齢の頃の身辺雑記なので、やっていることも環境も家族構成も違うけど、

漢と書いておんなとルビを振る気持ちは一緒よ。

この時期の伊藤さんは、カリフォルニアに住み、熊本に介護の必要なお父さんがいて、伊藤さんは一人っ子でお嬢さんが3人いて、

「おなか ほっぺ おしり」からの「かのこ」ちゃんは結婚して初孫が生まれたという、

慌ただしい日々。

自分は子どもは一人だし、離婚歴があるのは一緒だけど、再婚していないので息子ひとりで弟以外の身内はみな鬼籍に入ったので、親に電話をかけなければ、逢いに行かなくては、という気分はもうない。でも想像はできる。40代半ばから50代はじめに一気にきて一気に終わったので。

そんな中で伊藤さんが健康のためにはじめてすっかりハマってしまう「ズンバ」。これもたぶん「クロワッサン」で記事を読んだなあ。近著の紹介で朝日新聞か読売新聞でだったかもしれない。

更年期でしかもアメリカの食生活ですっかり太ってしかも全然痩せなくなった伊藤さんだったが、ズンバにはまり週に六日も通ううち、1年後4kgも痩せたんである。といっても、熊本とカリフォルニアの股旅生活で、ずっと通えるわけではないが。

その間、お父さんっ子だった伊藤さんにとって哀しいお父さんの死があったり、もうダメだと思って白髪を染めたり、紅茶キノコに興味を持ったり、塩麹にはまったり、

この食へのハマり方と学校時代は体育嫌いだったのに40を越えてから体を動かすことにハマって、というのがまんまと自分のようだ。塩麹とヨーグルトでタンドリーチキン風、やってみようとすぐ思う。




こちらは1990年出版の「なにたべた?」。

よしながふみ「きのう何食べた?」と比較分析するのも楽しいかもしれない。たぶんよしながふみもこの本は絶対読んでると思う。食べることが好きで料理も、食べることの周辺にある細々したこともすべて好きなよしながふみならきっと。

私も食べることが好きなので、この本もなぜ買ってないのか不思議なくらい図書館から借りては読み返した。

枝元なほみは息子と一緒に「おかあさんといっしょ」を見るまでは、この本のイメージだった。

伊藤比呂美のすごくテキトーでそのくせ美味しそうでそそられる料理と日本とカリフォルニアと離婚と子どもたちのゴタゴタ、枝元なほみの仕事としての料理と自宅の冷蔵庫にあるものの描写や、男との付き合い。

ふたりの往復書簡に出てくる料理は伊藤比呂美がカリフォルニアに暮らし枝元なほみがプロの料理人であるため、スパイス多め(だがそこがいい)。

感謝祭の料理やいまではジェノベーゼで通るバジルのペーストに松の実やチーズを入れたやつが「ペスト」だったり。

料理名もいちいちつけたりせず、
テキトーに混ぜたり振ったり焼いたりしているのがすごくおいしそう。

買おうかなとまた思う。
ふたりの付き合いは「閉経記」でも健在で、「閉経記」を読んだからまた「なにたべた?」が読みたくなったのであった。

「なにたべた?」をだれか映画にしてくれないかなー。