こんにちは!
きのう見てきた劇団モリオカ市民第7かいこうえ「岩手公園ものがたり」。

岩手県を3度襲った大地震と津波を描いた3部作「あの日の盛岡」の次のシリーズは「MORIOKA CHRONICLE」でした。

見る前、私はずっと勘違いしていて、これから「岩手公園ものがたり」がシリーズになると思っていました(笑)。


入場と同時に無料でもらうパンフレット。

物語、出演者、スタッフなどはもちろん、現在盛岡城跡公園となっている岩手公園と櫻山神社について関連年表も。

櫻山神社で開かれる宴の準備でてんてこ舞いの女たちが出てくる最初の場面から華やかさ懐かしさ(昔のテレビのコントのような朗らかさ)を感じた。

宴会の締めである蕎麦を早く出せというお客様からの無理と蕎麦の麺棒がなくてのばすこともまだできないというハラハラの中で、

櫻山神社乙女の会が立ち上がり、荒れ果てて危険な城跡を公園にしてもらおうと談判に…。


明治初期のこの時代、男尊女卑をまったく認識していないおでん屋の旦那のお調子者でかるい感じがおかしい。手足が長い役者さんでアクションがいい。

それに物言う妻の堂々たるセリフ。

江戸が終わって明治になったこの時代、おでん屋の妻のもと子(竹鼻裕子さん)のような女性は案外多かったのではないか。名もなき庶民の女性たちが話し合い、行動する姿が爽快だ。

近所の女性たちで結成した櫻山神社乙女の会(最近流行りすぎたなんでも女子会より可愛い)で花道を歩いていく場面は頼もしい。

明治初期の盛岡ということで女性たちはみな着物なんだけど、精神は自由で縛られていない感じが良かった。

2部では1部で散々言われていた北条知事のお屋敷が舞台。どんな悪者?と思っていたら、その奥方である菊子(佐藤久美子)さんは夫にただ従う妻ではなく、

女たちのストライキ

を提言する。決して猛女という感じではなく、上品で優しそうな雰囲気でありながら、言うべきは言うところが強い。

ここでは北条知事の秘書の妻が、宴会続きの夫との間に子どもができないのを姑に責められ泣いていたり、北条知事の車夫勘吉と吟子の間に子どもがいないという、現代でも続いている家族の苦悩が描かれていることにも注目してしまう。

またこのモリオカ市民劇団の名物になっている作山為久子さんがここでは幽霊(先代の女中頭)になって、ヒュードロンというお馴染みの効果音とともに現れ(わりにずっと出てはいる)、笑わせてくれる。私がこのモリオカ市民劇団の公演を見始めたのは「あの日の盛岡」からなので、いつから出ていらっしゃるのかわからないけれど、私が見ている中でも、毎回洗練されていくような…たぶん観客も毎回楽しみにしている役者さんのひとりだと思う。

それにしても今回女性たちがみな美しく輝いているなあ。着物はやっぱりいい!

と喜んでいました。だって男性の役者も出てくるけれど酔っ払いとか繊細な感じでオドオドしている学生(3部で正体が分かる)とか、

妻にやり込められている夫たちとか(笑)。


そんな1、2部のあと幕間があって、3部はまだ荒れ果てている城跡の蛍の場面から。

「あの日の盛岡」では、3度沿岸を襲った津波と被災した人々、盛岡と沿岸のつながりも描かれましたが、

「岩手公園ものがたり」でもお屋敷で奉公するツヤが悪気のない、ツアちゃんはニシンのお刺身を食べたことがある?と言う言葉に漁師だった父を思い出し、屋敷から走り出てしまう場面があります。

奉公人たちはみんな必死でツヤを探し、ここで車夫夫婦がツヤを見つけます。

蛍の光の中で津波で孤児になったツヤと子どものいない車夫夫婦が家族になろうという場面は、ベタなんだけど泣かせます。

そしてあの思いつめた顔をした学生が知事を暗殺しようとしていたことがわかる。彼の幼馴染でもある仲居やその姉が大事に至らないよう必死の思いで駆けつける。

いままでの長閑な空気が切迫する場面のあと、
一転して思いがけない勝負になり、

岩手公園を(名前はまだ決まっていない)つくるか作らないかをかけて軍配が上がった。



岩手公園の名前をいろんな人たちが希望に満ちて考え、口にする場面で、


「祝って公園」

というセリフが飛び出した時、ああほんとうにそういう意味も響きにかけられていたのかもしれないなあと。

大団円の岩手公園開園の場面では、

いしがきミュージックフェスティバルに来た女の子をはじめとして乳母車の親子連れなど現代の市民と明治時代の人々が同じ空間に同時に行き来しており、

祝祭空間という言葉そのもののようで楽しい場面だった。

もっと長く見ていたいくらいだったが、幕が下り、下りるまで役者さんたちが笑顔で手を振っていた姿が印象に残った。



久しぶりにアンケートを書いていたら最後のひとりになり、お陰でキャストの皆さんに見送っていただきました。竹鼻さんの着物姿粋でした。セリフも胸が空く。





なんか桜吹雪に送られているような華やぎがありました。ありがとうございました。



次の公演は2年後ですが、

「盛岡劇場ものがたり」、やってくれないかしらと思う私です。

ではでは♪