きのうは開幕したばかりの岡上淑子展 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟 (1/26〜4/7)を見てきました。


チラシミュージアムという美術展アプリで見てから気になっていたし、夕方からロケがあるし、風邪がぶり返したら怖いのであんまりあちこち見て歩くより、ゆったりできるところがいいかなって。


しばらく来ていなかった東京都庭園美術館なら庭やアール・デコ様式の建物ディティールなど写真撮影もできて楽しさ倍増。下手くそなんだがとにかく撮るのがすきなんです。




日差しが強く、青空に白亜の建物がくっきりしていますね。昭和8年に朝香宮邸として建てられたとリーフレットにありましたが、昭和8年…私の30歳年上だから85歳ですね。

岡上淑子さん(1928-)の若い頃、小川服装学院や文化学院デザイン科で学んでいるので、戦後の物資不足の世の中でも美しいものへの憧れから、自分でもファッションイラストを描いたりしていたんじゃないかなあと思います。そういう資料はなかったですけどね。

フォトコラージュのきっかけは文化学院デザイン科の「ちぎり絵」の課題だったそうです。

余談ですが、この文化学院は2018年3月に閉校しましたが、その建物もアーチがあってアール・デコ風だなあと。
創設者の西村伊作(名前からしてお洒落だ)の芸術による自由主義的な教育も岡上淑子のフォトコラージの土壌となったのではないか、そんなことも思いました。

文化学院については『たそがれたかこ』で主人公の娘がそのアーチに誘われて校内に入り、西村伊作の幻に出会う象徴的な場面があって、学校の名前はマンガには出てこないのですが、作者インタビューなどで知りました。

岡上淑子の「初期の作品」セクションの前のキャプションに西村伊作と文化学院が出てきたときは、おおー、と喜んでしまいました。『たそがれたかこ』は入江喜和さんのマンガで文化学院の校風や教育の一端も垣間見えて、この展覧会を見る中でちょっと重なるところがありました。


これは撮影OKのバナー。
コラージュは「ちぎり絵」がきっかけだったとしても、それ以前に岡上淑子さんは型紙を切るという行為によって、美しいものをつくる紙を切るというアクションに慣れ親しんでいたということもあったと思われ、

彼女が切った型紙一式の展示がありました。型紙は当時らしいウェストを絞った細身で、

また「岡上淑子とモードの世界」として、クリスチャン・ディオールやクリストバル・バレンシアガのイブニングドレスやカクテルドレスの展示もあったのですが、それがアール・デコの贅を尽くした建物の中での展示なので、映える!

ディオールの黒のイブニングドレスには『ハリスおばさんパリへ行く』のディオールの「誘惑」ってこんな感じだったかなと思いました。

ドレスもフォトコラージュ作品も、悉くこの東京都庭園美術館にこそぴったりの展示だ!という感じで、いまどきのホワイトキューブの美術館と違って小さな部屋から部屋へ展示を見て歩くので、うっかりすると見落としかねない感じがあって、監視員のみなさんが迷える子羊を見守っていたのが印象的でした。



旧朝香宮邸のアール・デコの建物のインテリアの数々、今までもなんども来てスマホで撮ってきたんですが、今回コンデジで撮るために設定をいじりながら何枚も撮っているうちに、なぜいままでこの美しさや可愛さに気づかなかったんだろうと。


モダンキューブの新館のガラスとそのガラスを通る光でできる影のおもしろい模様。


ガラスに気泡がプツプツ入っていて、それがこんな風に影になるのですが、きのうはほんとうに日差しが強く影もしっかり浮き出ていました。


姫宮寝室前のステンドグラスの吊り灯具。こんぺいとうというより、ユニット折り紙っぽいなあと思っていたら、


おお。
1階の「ウェルカムルーム」にはクラフトのこんぺいが。

この部屋には「さわる小さな庭園美術館」があって、建物自体はバリアフリーではないのですが、点訳絵本を連想したりしました。



新館の春から秋にかけてはガーデンティーを楽しむためのパラソルですが、岡上淑子さんのコラージュに繰り返し現れるイブニングドレスの女性の幻影がよぎり、

なにかこう、白いドレスの女たちが行進している白昼夢を妄想しました。この畳まれたパラソルとポール・デルヴォーの絵を組み合わせたコラージュを脳内で制作しつつ、建物のディティールを堪能して、


今までにない滞在時間でした。

壁の漆喰がプレーンではなく、渦巻くような模様になっていて、あれ?と思っていたのですが、

漆喰に左官職人が手彫りしたものだそうです。フランスでは石膏を使うのだそうですが、コストの点から漆喰をつかい、漆喰の固まるのに時間がかかり角が丸くなってキレがなくなるところを、水分の少ない餅のような「レリーフ用漆喰」を作って施工に当たったそうです。

帰りにショップで買った「たてもの文様帖」を読んで、真っ平らにする技術とは正反対のレリーフを発注された左官職人の困惑からのレリーフ用漆喰を作ったプロジェクトXを想像したり、ラジエター用カバーをはじめ、あらゆるところに出現する鋳物の文様に鋳物職人が浮かびました。

年を取って昔のように駆け足でダーッと1日に何件回れるかな!という方向は厳しくなったのですが、歩くスピードで目に入ってくるものはずいぶん多いものだなあと思いました。

ではでは♪