『伊藤整氏の生活と意見』、40年ぶりくらいの再読です。

高校の図書室にあった文学全集の中の作品だったのですが、その後いろんな土地のいろんな図書館で探してもなかなか行き会えず、

きょうはふと思いついて「生活と意見」で検索したところヒットしました。

フォントじゃなくて活字の時代の本です。特に「つ」が独特で文章を追うより活字に見入ってしまいます。


私がいちばん感動したコンデス・ミルクのくだりは文学全集の抄収録よりもっと濃く、

英文学の大家たる伊藤整氏がコンデスト・ミルクと言うべき場面でコンデス・ミルクと言ったことを後々日本文学の研究家たちが突き止めないかという不安に怯えつつもコンデンス・ミルクを二罐、周到にも缶切りを三つ購入し、職場にも自宅にも置く。



「夕刊記事に面白い記事があると一匙嘗め、すぐれた作品を読んで感動するとまた一匙嘗め」
「徹夜で仕事をするような事があると、氏はほとんど一罐を嘗めつくした」

という

ビバ!コンデス(ト)・ミルク生活。


私が高校時代に読んだのは文学全集に収録された「(抄)」だったので、この小説が「チャタレイ夫人の恋人」裁判をめぐる伊藤整氏の生活と意見であることはいま気づいた。

全体の7割くらいは裁判に纏わることなのだが、「私」ではなく「伊藤氏」という距離のある主語を採択していることからもわかるように、戯画化されている。

事件をドキュメンタリー化した『裁判』はまだ読んでいないし、じつは『チャタレイ夫人の恋人』も読んだもののどこがわいせつに当たるのか分からず呆然とした記憶しかない。

コンデンスミルクは明治45年生まれの祖父もずっと嘗めていた。伊藤整は蓋を切って開けるが、

祖父は空気穴を二つ開けて、多分そこから吸っていたと思われる。押入れに隠してこっそり楽しんでいたわけだが、孫の私からしたら隠し場所が甘い(笑)。

伊藤整というとコンデンスミルクを連想してしまうのだが、あまりに長く再読できなかったので漱石のジャムと混同しているのかもと思ったこともある。ちゃんとコンデンスミルクでよかった。


ではでは♡