いつかティファニーで朝食を マキヒロチ (新潮社)
マキヒロチさんの「吉祥寺だけが住みたい街ですか」を読んで、そのあとマキヒロチさんだとは気づかず、朝食がすきな主人公に共感して読みはじめたシリーズ。
群馬の女子高時代からのグループ4人がそれぞれ主役を代わる代わる演じ、主人公のマリちゃんが勤めるアパレルの後輩がこのお話の主人公です。
扉絵のこのスタイルはヘップバーンの「おしゃれ泥棒」ですね。ジバンシーよりイーディス・ヘッドのデザインの方がキミちゃんにはピッタリします。
会社のお昼休みに読書するキミちゃん。読んでいるのは、『女が嘘をつくとき』リュドミラ・ウリツカヤ 沼野恭子訳(新潮社)。
高齢のロシア文学教育者アンナと17歳の素朴な少女アンナの公園での出会いから、アンナの死と彼女が時折自作の詩だと言って朗読してくれた詩篇が有名な詩人たちのものだったと知らされ、深く傷つくマーシャ。
キミちゃんは「まるで寺田と私みたいだ」と思う。寺田はマーシャで、自分がアンナだと。
メガネをかけていて、文学にも音楽にもお洒落にも(アパレルに勤めているくらいなのでファッションはすきなキミちゃんなのだ)深く濃い趣味のあるキミちゃんと、
モンローのようなきらきらと光る瞳で聞く寺田。
十代の女の子に特有の濃いつきあい。
やがてキミちゃんは文学を勉強できる大学へ進み、文学のサークルに所属し、一方キミコが行くなら私も東京に出ると言って東京の短大に入った寺田は、お洒落で小粋な、「地下鉄のザジ」みたいなスタイルではなく、長い髪をふわっとさせて、会津訛りは抜けないながらもすっかり綺麗なお姉さん。二人のあいだには距離ができて、
キミコはさびしい気持ちを抑えられず涙する。というとキミちゃんだけが傷つき、寺田が裏切り者のようだが、キミちゃんが泣いたのは寂しさだけではなく、自分と寺田の関係、まっさらな寺田を自分の世界に染めようとしていた自分の傲慢さや愚かさが許せなくてでもあった。
それから十年近く経って、結婚式の披露宴で再会し寺田は綺麗でふっくらして、
ふたりの高校時代はまだ息づいていて、大人になったふたりを救っていることにキミコは気づく。
いろんなことを考えさせるエピソードですが、キミちゃんの読んでいた『女が嘘をつくとき』『カメレオンのための音楽』がおもしろそうで、久々に小説を読んだ私なのだった。
ではでは♡