岩手県立美術館常設展示第2期  常設展示室3つ目のお部屋は、


人のかたち


が共通するモチーフのように思えます。


渡辺豊重の「2014・最後の奴」

アクリル・松煙・金箔・銀箔(アルミ)・木(朴・桜・松・杉)


ユニークなタイトルだなあと思いました。2014年に渡辺豊重展があり、その展示のために作った作品の最後にできたものだから「最後の奴」。2014とあるのは、


それだけだとまるでこの作品が最後の作品みたいだから、ということで、タイトルといいフォルムといい、ユーモアを感じてしまうのですが、

材料に4種の木材を使っているのはなぜ?

黒と金の太くてズドンとした形に細くて曲線のなめらかな形が寄り添うのは、作家・渡辺豊重さんと支え続けてきた奥様をあらわしているというお話を伺って、


「2014・最後の奴」というタイトルがまた味わい深くなりましたが、


自分の中にいるもうひとりの自分と考えてみるのもおもしろいと思います。


 

佐藤紘行(さとう・ひろゆき 1940-2008) 

テラコッタによる横たわる女性像です。

「落差」というタイトルも示唆的で味わい深いのですが、

このポーズとひび割れが示唆的というかおもしろく感じる。あしのうら側から眺めてみると横たわる人体像を紙に描くのがなぜ難しいのかがちょっとわかる気がする。

この記事を書きはじめたのは一昨日なのですが、

きょうロケ先から新大阪までタクシーで移動中に、運転手さんから大阪の建築物についていろいろお話いただいた中に大阪フェスティバルホールがあり、ホールの外壁がテラコッタタイルなのだと聞いて、えーー!いかにも脆そうな感じなのに、けっこうタフなんだなあと。

そしてこのテラコッタ彫刻の女性像と呼応するような、あるいはまったく呼応していないのかもしれませんが、松田松雄の大作もこの3室に展示されています。

松田松雄の作品は次々と表現を変えていくのですが、2室にあった初期の長い(カラフルな)マントを被って、ポツンとしていた人物は、この3室ではダイナミックに変わっていく。


大きな画面の中で抱きしめ合い、地に伏し、何かの力の前で力尽きた人達にも見えるし、励ましあっているようにも、絶望の中でもがいているようにも見える。抱きしめあっているのに、絵全体から暖かさは感じない。でも非情な感じも受けない。ただ圧倒されて見入ってしまうんです。

 

 

 

大画面に描かれた人々ー黒っぽいマントで全身を覆っている人々から一糸纏わぬ姿で抱きしめ合う(しかし熱いものはないので、交情という感じもないんですが)人々、と、ふと短いストロークで地図の森や田んぼの記号のように描かれた絵。

その落差の激しさにいまだったらフォロワーさんがゴッソリいなくなった的な現象があったのではないかと思わせられる。


極端な変化のあいだをつなぐように、

様々なニュアンスのグレーで描かれたり、紙をカッター(とは限らないけどカッターじゃないかと思っている)で削いで?素材感を出したりしている、そんなに大きくない作品群があり、これは作家も楽しんで作っていたのではないかとホッとする。


この墨色っぽい感じは禅画の方向か?と思いながら、シリーズのなかにどう見てもあんぱんの餡子を取り出して食べた後のパンの断面図、


としか言いようのない作品があり、ちょっと気に入っている。あんぱん…なのか?

 ほんとうはもっと濃い、ミッドナイトブルーみたいな青です。撮ったらこうなったんです。

  OLD RUSSIAN 

いままで図録のカラーに文句ばっか言っていましたが、ゴメンナサイゴメンナサイという感じ…何事も言うは易しですよね。

村井俊二(むらい・しゅんじ 1957-)の作品は1期にも出ていて、私にはトタン波板の錆みたいな作品だなと思って、でもよくわからないと思っていました。

この絵もよくわからない。

オールド ロシアンってお酒の名前みたいだと思って検索したらウォッカがヒットしたが、お酒ではないよなあ。

コレクショントークで解説もきいたのにそれでもわからない。わかりたいと思うけど、わからないまま見ているうちにだんだんすきになる絵もあるので展示替えまでに、わかった、と思う瞬間が来るといいと思う。