時々、特集に惹かれて買ってしまう、「dancyu」。
タイトルは「男子厨房に入らず」から採られているのですが、
 
たぶん男女問わず、おいしいものがすきなひとにはたまらん雑誌だと思われる。
これは2年前のバックナンバーなのですが、
 
きのう寝る前にパラパラやっていて、ややや!
と驚いたことがありまして。

 

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カステラの老舗のお話なのですが、泡立て器などなかった江戸時代は、
すりこぎで卵を泡立てていたのだそうです。
 
あ、それは『大奥』。

 

 

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家定の置かれた状況を案じて、ことあるごとに
カステラを焼こうと誘う正弘。
 
この時代、赤面疱瘡は予防接種によって収まり、
男女の比率も同率になっており、家督相続も男子がいるなら男子、
という法もできたのでしたが、
 
正弘の兄は、名門阿部家宗家の十代当主の荷の重さに堪えかねて、
正弘に十一代目を頼むのでした。
 
正弘は聡明な上に胆力もあり、十一代将軍家斉の前でも物おじせず、
 
「皮肉よの そなたのような聡明な女が 女というだけで
すぐには家督を継げなくなったのも 時勢と申すか…」と言われて、
 
「ならば以前は男と言うだけで政から遠ざけられ
種馬にされてきた多く野能ある男がいた事でございましょう」
 
と返しています。
 
これはまちがいなく、よしながふみの思想なのだと思います。
 
男に虐げられる女を描くのとおなじように、
「きのう何食べた?」では少数ではあるけれど、確実にある妻から夫へのDVも
描かれています。よしながふみが対談集で言っていた、自分はフェミニストだというのは
こういうことなんだろうなあと思って読んでいます。

 

 

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阿部正弘がブリヤ・サヴァラン的なグルマン(おいしいものがすきで健啖でぽっちゃりさんタイプ)であることは確かですが、その殿である家定は甘いものがすきで少食であるタイプの、これもグルメ。こちらはほっそりとしているのが特徴、と昔愛読していた『美味礼讃』で読んだ覚えが。
 
さて、ふたりの美食家が拵えるのは、カステラ。
 

 

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大量の卵と砂糖と小麦粉でつくられ、泡立てはすりこぎすり鉢。

 

 

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そうして炭火でやいていたというとおりの再現ですが、
幕末が近いこの頃はもう水あめがでてきていたのでしょうか。
 
江戸時代のカステラはいうまでもなく長崎からポルトガル人によって
もたらされたものですが、当時のカステラはいまのしっとりしたカステラではなく、
焼き菓子に近い、固いものだったそうです。水あめを入れるようになって、いまのような
カステラになったと。
 
ただ、当時のブロイラーではない、滋養のある卵ですからさぞや黄色いきれいな
カステラだったと思われます。
 
正弘が家定をカステラづくりに誘うのは、家定をその父である十二代将軍家慶のもたらす
「嫌なこと」から守るためでもあったのですが、
 
心に深い傷を負った家定が正弘に信頼を寄せるようになる流れの中に出てくる、
甘いカステラ。
 
なんとなく、『西洋骨董洋菓子店』の甘いものと心に負った深い傷についての物語を重ねてしまうのでした。
 
ではでは♪