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土曜夜麻痺 君とダイナマイト 脚本・演出 古屋仁成
盛岡劇場大ホール 2016.3.19~20 3回公演

どうでもいいことですが、「君とダイナマイト」というタイトルから連想したのは、
ダイナマイト心中です。私は昔から自殺について興味があるので、末井昭さんの
『自殺』で、ダイナマイト心中という言葉(というか自殺方法)を知って、

なんとなく、ダイナマイト心中を連想していたのですが、それほど違っていなかったかも。


わかりにくい設定と、安定した演技力(演技していないようにしか見えない、自然な会話と
会話するときの視線やしぐさ)。

黒に赤のアクセントの利いた、若い人らしいチープな部屋。
入口と、入り口からすぐのところにトイレがあって、
パイプベッドとちゃぶ台と小さなテレビ、洋服のラック、台所への入口があって、冷蔵庫がある。

このセットが物語の主人公じゃないのかってくらい、入口から人が入り、出ていき、トイレに誰かが行って、
戻ってくると誰かが起きたり、眠ったり、いなくなっていたり、

入口がまるでスイッチになっているみたいでおもしろい試みに思えた。

実験的であると同時に、会話の自然な感じがうまかった。会話はやっぱりお芝居です!という
感じがするとみている方が恥ずかしくなるけれど、

ショウさんとマーちゃん(マサシともよばれる)の男ふたりの会話はまるでほんとうに
こんなアパートがあって、そこで煙草を吸いながらつづけられているような感じがするのだ。

マーちゃん(マサシ) 百田恵佑
ショウ          雪之浦 光佑

あっちゃん(あゆみ) 遠藤真由

そして、アパートのベッドにいた上下グレーのスエットに金髪のお人形さんみたいな
女の子、あっちゃん。

最初、

訪ねて来たショウとマーちゃんがパチンコ屋の話を延々しつつ、
知り合いの女が自殺だってよ、という話をして、
あれは死んだから、とマーちゃんが笑っていい、ショウも、マージカーと受け流す。

ショウが帰った後、ベッドからあっちゃんが起きてきて、
マーちゃんに絡む。恋人同士のじゃれあいのようだ。

だが、じゃれあいからふたりの間が険悪な感じとなり、
「左手を出せよ」「左手を出せと言うのは優しさだってわからない?」という含みのあるセリフが。

最初にマーちゃんが笑いながら、あれ、もう死んでるから、と言ってから、

ああ、あっちゃんは死んでいるんだなと思ってはいた。
死んでいるけれど、生きていた時間にもどって生きているのか、

まーちゃんのファンタスティックな旅の中で生きているのか。

作者の古屋仁成さんがTwitterで、2014年に演じた「夜」はそれより前の「新説 銀河鉄道の夜」のスピンオフ作品で、今回の「君とダイナマイト」はリメイクと書いていたのが思い出され、


実際には旅立つことはなく、ずっと黒っぽいアパートの一室にいるのだが、

もしかしたら黒っぽい部屋は銀河鉄道のアナロジーなのかもしれない。
宮澤賢治の時代、鉄道と言えば真黒の蒸気機関車だったのだから、と考えてしまう。

小さなアパートの一室で生とセックスと死と愛の堂々巡りをしているマーちゃんと
あっちゃんは、

銀河鉄道に乗って宇宙に旅立ったけれど、銀河鉄道の客車のシートに向かい合って並んでいる
ジョバンニとカンパネルラ(実は死んでいる)と同じ関係性をもっているのかもしれない。


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(2014年12月20日に見た、「夜」)


冷蔵庫にあった空っぽのペットボトル2本、そして空っぽのペットボトルからあっちゃんが
おそらくマーちゃんに殺害される様子が象徴的に演じられる。

倒れているあっちゃんと呆然としているマーちゃんに外からやってきたショウが声をかける。

「おまえ何してるんだよ」

その瞬間、世界に罅が入って、マーちゃんはあっちゃん殺人の現場を見られてしまった、
となるのかと思われたけれど、なにごともなかったかのように、あっちゃんはまた甦る。

激しいケンカをして、マーちゃんがあっちゃんに手を出せ、左手でいいというのがおれのやさしさだとわからないのか、
と責める場面がある。

その前に、マーちゃんとショウちゃんがかつての知り合いがつきあっていた恋人に部屋で自殺されて、という話をしていた。
手首をかき切って死んだ女とその恋人の話。
それが伏線となって、あっちゃんに左手を出せと迫るマーちゃんがおそろしくなる。

あっちゃんの左手首を切って、自殺に見せかけようとしているのか?と。

はりめぐらされた伏線が最後に生きる設定のお芝居で、
会話と自然な動き(ものを探すのにわざわざ立たずに、
膝行でさがしてみたり。

ラストシーンはあっちゃんを殺しているのか、盛っているのか、その両方なのか、
激しい音楽とともにシュッと幕が下りて物語は終わったのだった。

ではでは♪