
『私の美の世界』。森茉莉のこの本は高校時代に取り寄せて買いました。
当時はもちろん、ネットもAmazonもなく、地方の大きな(そのまちではね!)書店はえばっていやな感じだった。
書名だけでは検索できず、書名、著者名、出版社名を全部調べてからきなさい、と上から目線も上から目線だった。
(20年後につぶれましたけどね)
取り寄せに何日かかるかといえば、2週間から3週間で、「重版未定」「絶版」の赤いハンコがつかれた
スリップを覚えている。
幸い茉莉のこの本は無事手に入った。
奥付をみると、1968年発行1980年の17刷だ。
茉莉の料理の描写は匂いも音も香りも熱もページから吹きつけてくるようで大好きだった。
幻想の料理なのである。
フライパンの上で溶けて、煙の立ちはじめたバタの上に、割った卵を三個流しいれる。いくらか固まりかけると箸で手早く、軽くかき廻し、それを二度繰り返してから鍋を動かして卵をゆすり、中の方が半熟のときに三つに折って、塩こしょうを振って、おしまいである。
茉莉の料理を茉莉の独特の文章の中でよむから美味しく、輝いているのである。
再現するとうまくいかない(笑)。
それは数年前に世田谷文学館であった展覧会で、図録に茉莉の料理の再現が載っていたのだけれど、
うーん、と思ったのは私だけではないと思われる。
茉莉の料理が上手だったのはほんとうらしいが、それでも彼女が言葉で料理するオムレツはその数等上なのであった。
私はいつも、つくった料理をたべながら茉莉の文章をよむことで、「補完作戦」にでるのであった(笑)。




