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《荒井良二 スキマの国の美術館》
岩手県立美術館
~2016年2月14日(日)までです。


美術展の開催期間はどのように決められるのか、全然わからないのですが、

たまたま?  あるいは  狙って?

クリスマス アドベントからもちろんクリスマスまでの期間と、バレンタインデーが入っているんですが。

図録はない本展ですが、関連イベントの紹介も入った二つ折りチラシがすばらしくてすばらしいので、

見ているだけでたのしい。





きのう、12/11のアーティストトークにつづき、

きょうは「まわちみち、あしのねいろ」(黄木優寿監督)の上映会がありました。 

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最初に、

今回の《荒井良二 スキマの国の美術館》の担当学芸員の方から、

主演男優 荒井良二さん
監督 黄木優寿さん

のご紹介がありまして、

「まわちみち、あしのねいろ」が上映されました。

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私は保育園から今にいたるまで、絵がめっちゃ下手です。

字は本気を出したら、本人にも解読できない自信と実績があるわ。ってそこで自慢するのか。


でもでも、その当時から手を動かしてなにかをやっている(つくっているとは限らない)のがすきなんですね。メモや資料を残したいというより、なにかを見たり聞いたりしているときに、手を動かさないでいいることができないんです。

きのうのギャラリートークで荒井良二さんがお話になったことの中に、

旅をしながら絵を描くこと、立ち止まらず歩き続けながら絵をかくことが、当時かかっていた腱鞘炎のリハビリでもあったけれど、

その絵をあとでみると、ペンはピンクでも、すごい青空だったなあとその色やその時の気持ちを思い出す、というのがありました。あるきながら描くから、なにを描いたかわからないような絵もあるんだけど、自分にだけはそれがどんな場所でどんな雰囲気だったかがよくわかるんですって。

それものすごくわかる!

と思ったです。私も旅に出る時はその旅専用のノートを持って行って、何でもかんでも書きつけていくから。

お話を聴いているうちに、絵が下手だとか、誰にも読めない字だとか、べつにいいじゃん、自分の心の旅じゃん、という気になってつよく励まされた気に、勝手になりました。

荒井さんはそして、自分はこうだ、と話すだけで、自分の言葉をきいたひとに影響を与えたいとはまったく思っていない、というより、


荒井さんの影響を受けました、と面と向かって言われたら、ひとを変えようと思って言ったわけじゃないですよ、と言いそうな気がする。さっぱりした笑顔で。


映画の印象的だった断片をスケッチする(言葉で)。


・1分あるいて、2分全力疾走、という言葉にあわせて、その場であるいたり駆け足したり(腿を上げるのが大変なんだから、)の映像を撮っている。そのその場駆け足の映像は小さな円形に上映される…バレーボールをスクリーンとして。小さいし、隅に転がっているから、誰も気づかないかもしれないが、すごく楽しい映像だった。なんでそんなことを思いつくんだろう。

・冒頭の大工さんの仕事。電工ドリルの音。荒井さんが作った方眼用紙の縮尺模型を参考にしながら、木を刻んだり、組み合わせたりしている。工房の様子。

・ボランティアの学生さんたちによるやすりかけ。

・木工の作業の音はいずれも耳に心地よい。

・黒鍵だけを抑えた不穏な音楽。なにがはじまるんだ!と不気味でこわい。

・砂場のオルガン、というインスタレーションでは砂場にうずめられた地名と人形たちが、不穏の黒鍵ピアノとあいまって、不気味だった。

・何枚も何枚もつづく、生成りの布の向こう側で描いている荒井さんと、こちら側に透けて見える、鏡文字。カメラがこんどは荒井さん側に行って、絵や言葉を描いている。

・のれん(トークショーでのれんと仰っていたので、ここからのれんとする)に描かれた、シンプルなずっと遠くにある、小さなドアとドアノブ。黒い太い描線と、そのまわりに青や黄色がしたからにじんだようにあって、独特。

・山形第一小学校の入口の、昔の丸い額縁みたいな玄関。

(これもあとでお話になったのを聞いたら、山形第一小学校の旧校舎であったらしい)

・一度だけ、しゅうしゅう湯気をあげる3升炊きくらいの大きな釜と、ヘラをもっているメガネの青年の横顔のカット。たべていr場面はでなかった。

・ボウリングのピンのシルエットみたいな形の板を直交させて組み合わせた、なぞのウルトラマンというかゴレンジャーというようなオブジェに、

色を塗っているときにぐるぐるまわる映像、見ているうちに乗り物酔いになりそうだった。
描いている荒井さんも目がまわってきた、と笑っていた。くるくる回りながら塗るところの早回し。

・荒井さんと子どもたちが暗い中を懐中電灯を点けて、探検する。

例ののれんには接続詞と絵が描いてある。

「さらに」

では、ケーキが   皿に  載っていました。

・双子の緑色の釣りスカート(だったかな)におそろいのキャラクターもののリュックの女の子が、10個くらいあるボウリングのピンみたいなオブジェに触っているところ。双子もおそろいだし、オブジェも大きさが違うものもあるけど、おそろい。ユーモアを感じる。

・お母さんやお父さんの大切なものをもらってきた子どもたちに、それを組わせて宝物をつくろう、それをこの校舎に隠したり、ぼくに張りあおうって子はぼくの絵の隣に置いてもいい、
そういうことをやろうというところ。

お母さんの集めている、ボタンの瓶は薬瓶で、私の母親が半世紀前にもおなじ瓶で同じように古い服から外したボタンをためていたなーと思い出したりした。

・隠した宝ものはみんなで探しに行く。クローズアップ。

・すごく長い緑色の蛇を消火器のところに置こうとして悪戦苦闘して、フックのようなところに
ぶら下げた男の子。

・このほうが速い、と手で黄色の絵の具をぬりはじめた荒井さん。

・デニムの膝頭がパレットみたいになっている。重なっていく色の断層を切って見てみたい気がした。

・手で塗る作業を見ていると、スポーツ中継を見ているような爽快感があった。

・最後は大きなキャンバスを立てて、そこに最初は自分と子供たちの形を黒でかたどって、
(荒井さんの形は子どもたちが形を取る)

そこに絵の具の色が重なっていく。

・最初に書かれた人間たちの型、は下になっていって、色彩がどんどん重なって、こすったり、にじんだりした色がきれいだった。

・途中で、子どもたちの上ズックを穿いた足がこちらに向かってあるいてくるアップがあって、
あしのねいろ、はこれかなと思った。



上映中はとにかく吹き出すようなカットがあるし、荒井さんも学生ボランティアのひとたちも、子どもたちも、笑っているか、考えているかで、考えている顔のつぎは吹き出すなにかがあって、
楽しかった。


上映後のトークで、「山形じゃあにい2010」が黄木監督のもとに、キュレーターの○○さん(名前を聞き逃す)から、「山形じゃあにい」のドキュメンタリーを撮れそうなひとを紹介してほしいという話があり、紹介してほしいというより、自分がやりたい、ということで、撮ることになった、という経緯をきき、

さらに、2年後に「山形じゃあにい2012」を今度は依頼もないのに自費で撮った、という話の後に、じつは来年、その映画が東京で上映されるので、いまその編集作業をしている、というお話があった。


来年ってみなさん、半月ちょっとでもう来年よ(笑)!!

なにか質問を、というので、うちの息子は声は小さいがこういう機会を逃さないので、

「あの汚れたジーンズはどうしたんですか?」という質問をした。

そんな些末なところに目をつけてしかも臆面もなく聞けるのが息子である。
あー、そんなことを質問しやがって、と思っていたら、

荒井さんの言葉がよかったです。


「汚れたっていいじゃないか。おれも絵の具の一部になりたいんだよ」

気仙沼からきたという若い男性がいて、質問の4人目だったんだけど、荒井さんがせっかく手をあげてくれたんだから、とその男性の質問を受けたのも覚えているし、忘れないだろう。

彼は気仙沼で1月23日に行われる、小学生を対象にしたワークショップのニュースがあって、
大人のためのワークショップはやる予定はないのだろうか。
という質問をして、

その答えはいまのところ、予定はないというものだったけれど、それでも。



最後に私のほんとうにどうでもいい話を書きます。
(つまんないので飛ばしちゃってください)


私はメガネフェチなので、
メガネをしているというだけで、好感をもつタイプなのだ。
8年のメガネ屋の店員時代に、メガネに対する好みが先鋭化したのは言うまでもない。


司会進行の担当学芸員の濱淵真弓さんも、
荒井良二さんも、
黄木監督も、


みんなメガネだった。
もちろんみんなメガネが似合っていた。


なんならどんなメガネだったかも書いてもいいくらいのものだ。

濱渕さん、メタルフレームでテンプルがブルーのハーフリムレス(メーカーによってはナイロールというあれだ)

荒井さん、フォックス(狐)がかった、ウェイファーラー型のセルフレーム

黄木さん、 明るいブラウンの細いセルフレームのウェリントン型。



すみからすみまで集中して聴いた結果、眼鏡もよく見てしまったんでした。
黄木監督は服の色あいが絶妙で、特に目に入ったのがズボンが緑で、明るい茶色のハーフブーツのシューレースも緑だったことだ。

そこか!そこなのか!といわれそうですが、
細部に至るまで、すごく楽しい上映会&トークショーだったんでした。ではでは♪