きのう参加した《大人のためのお話会》NPO法人うれし野こども図書室 についての記事です。
大人のためのお話会で語られたお話の本たち。
お話会、ってどんなイメージでしょうか。
小さい子のための絵本の読み聞かせは、ずいぶんポピュラーになってきて、
小学校のPTAボランティアによる読み聞かせも盛んなようです。
でも、
お話会は、活字や絵を見ながらお話をするのではなく、
語り手が声と心で紡ぐ世界なのです。
うれし野さんのお話会は、物語と言葉を深く味あわせてくれます。
お話会プログラム。
1 パピプペポ こがらし かんた(工藤直子作)
お話会の導入は、みんなが知っている「のはらうた」から、この季節らしい、木枯らしの吹く音から。
2 かしこいモリー(イギリスの昔話)
よく考えるとけっこう残酷な場面もあるのですが、モリーの生き生きした声が魅力です。
どんな難題にも、「やってみるわ」と向かっていくモリーの姿は、元気を分けてくれるようです。
3 チム・ラビット(アリソン・アトリー作)
小さなうさぎのチムは風や雷や犬の声に震えては、やさしいお母さんに訴えます。
「ぼく逃げちゃうよ」とポジとネガのようですが、親子の結びつきについて、楽しく聞きながらも、こどもを守りすぎないで、冒険に出してやらなければいけないなあと考えたりもしました。
4 ツェねずみ (宮澤賢治作)
(余談ですが、私がいま点字講習会でやっているのもこの『新版 宮澤賢治童話全集』(岩崎書店)なので、お話をきいたあと、自主トレでこの「ツェねずみ」も打ってみたくなりました)
私はこの「まどうてください」(弁償してください)のセリフがすきで、現実にもいたツェねずみみたいなクラスメイトを重ね合わせて、密かに鬱憤を晴らしていました。
賢治の童話は、ハッピーエンドではありませんが、独特の比喩や繰り返し、オノマトペに彩られた、生き生きした世界です。
最後にネズミ捕りに囚われたツェねずみのジタバタぶりが声だけで語っていて、演劇だったわけではないのに、
意地悪そうな目をしたツェねずみが狂おしく暴れるようすが目に見えるようでした。
プログラムの前半が終了したところで、ティータイムです。
お話をよく聴くことは大変な集中が必要ですから、ここでのブレイクタイムはうれしい。
しかも、手作りの美味しいクッキーまで。
私も一緒にいた中村さんも、このクッキーに大喜びして、
席に座ってからもう一ついかがと勧められたときは、ありがたく頂戴しましたよ~。
ほかにもクッキーやミニおかきやチョコレート、キャンディの可愛いパッケージも頂きました。
お菓子も、コーヒーや紅茶の用意もそこにひとの手が掛けられて、温かいなあと感じます。
5 別に何も… ある南部夫人ととぼけた友人
これはうれし野さんの代表 高橋美知子さんと浅沼節子さんのかけあいになっていました。
ノックの音からはじまる、スパイスの効いた笑い話で、
これは確かに大人のお話会のプログラムにぴったりでした。
また、コミカルなやりとりを生かしたお二人の扮装も最高。最後にあまりのショックに倒れる夫人に、笑いが止まらない。
ティータイムを挟んだ2部の始まりらしい、リラックスして楽しめる、新鮮なプログラムでした。
6 熊の皮を着た男(グリムの昔話)
カエル王子やロバ皮のように、呪いによって醜いなりをしている者を、
愛し信じる者がいれば、最後にはほんとうの姿に帰り、ハッピーエンドになる、という類話なのですが、
大人のためのお話に選ばれるだけあって、その試練もハードで、熊の皮を信じて待ち続けた末の妹を嘲り、馬鹿にしていた姉たちふたりの末路は哀れです。
7 ちんころりん(日本の昔話)
高知のお話で、繰り返しの唄がありますから、みなさんもご一緒に、というかるい前置きの後、
やさしい、ふわっとした声で語られた唄とお話。
8 元気な仕立て屋(アイルランドの昔話)
「ちんころりん」と同じ語り手による、有名な昔話ですが、
声がきびきびして、「ちんおろりん」のやさしい雰囲気から、冒険の物語にすぐに入っていけました。
ひとりの語り手のこのギアチェンジ(というと大袈裟ですが)も、素晴らしい演出だと感じました。
9 明かりをくれ!(スペインの昔話)
最後を飾るのは、大勢の子どもを連れて、お金も食べ物も住むところもない、途方に暮れたやもめの夫人と、
転がり込んだ幽霊屋敷で出会った不思議な出来事、
そして奇跡のハッピーエンド。
哀れな幽霊と失うものは何もない、という強さを持ったやもめの母親を見せてくれました。
お話の力は、子どもだけではなく、大人にも効くものだと思います。また、お話会に参加した大人がお話をひとつ覚えていたら、
なにもない停電の夜であったとしても、
声と物語が一緒にいる人を慰めうるかもしれない。
そんなことも考えました。
今回はおそらく消防法上の問題で点火はされなかったのですが、代わりに明るく周りを照らし続けるランプがありました。
最後のお話のタイトル、
「明かりをくれ!」には、うれし野さんからのメッセージにもなっているように思いました。