きょうは美術館てくてくツアーのある日でした。
毎月あるものでもなくて、2年くらい前から今度こそ!と思っていても、学校行事他でうまくいかない。
今年はもう終わりかな~と思って美術館のHPを見ていたら、
突如てくてくツアーがふえていた…。
イベントは減ることはなくて追加されることがあるので、HPチェックは欠かせないです。
岩手県立美術館は、見れば見るほど発見があって見飽きないのですが、
てくてくツアーに参加して気づいたこともいっぱいあります。
15:30~16:00の時間帯で、5分前にグランドギャラリーに着いたら、もう参加者のみなさんがぎゅうぎゅうだった。
定員オーバー!オーノー!
と思ったけれど、特に断られることはなかったです。たぶん30人くらいいたんじゃないか。
私がボサーッとつっ立っていたら、美術館の方が、受付シートを持ってきてくれて、名札がもう無くて、とおっしゃっていたので、想定外の人気だったもよう。県外市外からのお客様も多かったみたい。
赤ちゃんを前抱っこ紐で抱っこしたお父さんとお母さんが自然と目に入ってしまう。
美術館では秋から、
月に1回程度、ファミリータイムを設けていて、赤ちゃんや小さなお子様と一緒にリラックスして美術館を楽しんでね、という主旨なんですが、それによって、ほかのイベントの敷居も低くなっていくといいなあと思ったです。
こちらも参加者のひとりではあるんだけれど、赤ちゃんとご両親が気兼ねなく、楽しんで見られますように、と思っている自分がいる。
グランドギャラリーの高さは11m、奥行きは120m。具体的な数字を聞くとすごいな。
壁や柱が左右でちがうようになっていること、グランドギャラリーのごま塩柄(私にはそう見える)の床は花崗岩で、柱と柱の間の床がツルツルして黒っぽいのは、同じ花崗岩を研磨したもので、
遊び心の部分だそうです。
この解説では写真は全然撮らなかったんですが、
去年の秋に見たこちらの石彫も同じ石の磨きわけだったので、おー、なるほどね!と納得。
岩手県立美術館の設計は日本設計で、アイーナのにも日本設計が関わっているそうです。カーテンファサードのあの感じとか、わかるなあ~と。
私が見たことのあるのは、
鶴岡市立加茂水族館、海響館(山口県)、アクアマリンふくしま、川崎市・藤子・F・不二雄ミュージアム、石ノ森萬画館、三鷹の森ジブリ美術館、大阪歴史博物館、東京藝術大学大学美術館、高知県立美術館、長崎県美術館、国立新美術館、山種美術館。
改めてチェックしたら、あそこもか!ここもか!の連続で驚く。私が日本設計の関わったミュージアムを気をつけて見ているわけではなくて、それだけ大手建築設計会社ということなのです。
つるりんとしたコテ仕上げの右手の壁と、
角い柱が林立する左手の壁。
柱は杉板枠にコンクリートを流し込んで木目の模様をつけています。
「素」なるもの、というのが岩手県立美術館設計のコンセプトだそうです。
それはパンフレットかガイドブックで読んだことがあったんですが、
「素朴」の「素」、簡素の「素」という学芸員さんの言葉を耳にするまで本気で、
「す」なるもの。
と読んでいた私ってどうなんでしょうね。
スッピンのす、素敵のす、素直のす。
あ、す でもいいのか。
そこ?そこなの?と言われそうですが、そこがまず心に残った(笑)。
グランドギャラリーの大階段はロマンティックですきですが、白い大理石はユーゴスラビア産で、白さに目が眩まないよう、ステップに黒い線が入っているそう。
あるきやすいいい階段ね、とお客様に褒めてもらったこともあるくらい、いい階段ですよ~。
私は前からグランドギャラリーの上のレールが気になっていたのですが、これはメンテ用のゴンドラのレールなんだそうです。
ツアーに参加しなかったら、きっとアクセント的ななにかか?と思い込んでいたでしょう。
グランドギャラリーからふだんは入れないエリアへ。館長室も覗かせてもらう。掛けてある絵画は私物と聞いて、またひとつ疑問氷解である。
事務室や印刷機がある通路はボランティア室に入る前に通るけれど、
美術館の閉架書庫は初めて。じつは解説ボランティアは勉強のためにここの資料を見ることができるんですが、
入ったことなし(笑)。勉強しろよ自分。
さらに美術館の中心部である収蔵庫へ。
もちろん中には入れないのですが、その前で岩手県立美術館の動線のよさやバックヤードのスッキリ感について、お話を伺う。
他館の方が訪れた時にも、そのスッキリを褒められるそうですが、モノがなくてスッキリしているのは、けっこう場所をとるガラスケースを収める部屋があったり、収蔵庫以外の収納スペースんl確保にもあるようです。
動線の悪い美術館は搬入搬出も大変だろうなあ。
どことは言いませんが、展示室とチケット売り場が離れていて苦労した美術館を思い出しました。すごくいい美術館ではあるんですが。阪神淡路大震災後の美術館のひとつで、まさに復興のシンボル的な美術館でもあると思うので、
じつはバックヤードは超合理的配慮がなされているのでは、と思いたいです。
裏や仕掛けを見るのがすきなので、けっこういろんなところの裏を見ている方ですが、
(水族館とか図書館とかテレビ局とか演劇ホールとか楽屋とかオペラハウスとかいろんなところの従業員休憩室とかレストランの貯蔵庫とか)
どこを通っても清潔で無駄なモノが出ていないのが印象的でした。なかなかないです。
美術館は1/3が展示室、1/3が事務室や空調室など、1/3が収蔵庫で、美術館の平面図パネルでわかったのは、収蔵庫が美術館の中心にあること。
また、収蔵庫をぐるっとめぐって、冷たい空気を通してあるそうで、魔法瓶のような二重構造にすることで美術品を守っているそうです。東日本大震災で2日間停電した際にも、収蔵庫の室温は低温に保たれていたそうです。
震災と言えば防震ですが、
搬入出用のエレベーターで2階の常設展示へあがり、廊下(グランドギャラリーみたいな素敵な名前があるといいのに)に展示されている柳原義達さんの「岩頭の女」の台座で耐震構造にの台座についてお話がありました。
(画像は松本竣介・舟越保武室のコレクショントーク時のものですが)
最後にライブラリーの前にある、大きな木のベンチに座ってアンケート記入と質問コーナーでツアーはおしまいです。
赤い三角のツアーの旗を掲げた学芸員さんのあとをついてあるくのは、コレクショントークやギャラリートークとは違う楽しさがあり、
もっといろんなひとに参加して、この楽しさを共有してほしいなあと。
前からここの美術館のトイレの美しさがすきだったのですが、設計の意図は、
展示室の非日常からトイレに来て、落差にがっかりしないよう、トイレも非日常空間にしたいということでした。
で、男性トイレには入れないから、使っている大理石が違うのかなあと思ったら同じだそうです。よかった。
ただし、2Fの萬鉄五郎室の後方にあるトイレだけは白くて簡素で、
ただし、
男性トイレの小便器だけはフランス製だそうです。それはちょっと見たい…。
デュシャンの《泉》という洒落なのか?
気になる。
でも万が一利用者がいたら私は犯罪者になってしまうので、
小便器という特殊なアイテムを使える男性が羨ましい。息子と美術館に出かけたら、ぜひ2Fのトイレに行かせたいと思った私だった。
楽しいてくてくツアーをありがとうございました。