岩手県立美術館でも《松田松雄展》(~11/29、ラストが日曜日)を開催しているので、この機会に両方見なきゃ、と思っていたので、
市役所への用事に合わせて行ってきました。
近くに鮭が遡上する中津川があり、中ノ橋を渡ると赤煉瓦の旧岩手銀行中ノ橋支店があり、天気のいい日ならてくてくお散歩したいようなところです。
岩手県立美術館では、大作が見に来た人を圧倒する感じがあったんですが、
第一画廊の《松田松雄展》では、絵に近づいて松田松雄の絵に耳をすます感じで、
その中でも小品なのですが、
《詩画集 少年の詩シリーズ 》の2点のうち、
「狂女の里帰り」と題された作品がタイトルとともに、家に帰ってからじわじわと浮上。
狂女といえば、
シャイム・スーチンの《狂女》(国立西洋美術館所蔵)が連想されるのですが、松田松雄が影響を受けた画家のひとりに、スーチンの名前もあったと思います。でも、《狂女》というタイトルとそのタッチだけで、(スーチン?)と思うひとは多いと思われる。
もう一点はサブタイトルはなかったけれど、母親らしい後ろ姿のマントの人物が子どもの手を引いているもので、ただ2点なのに、親子(と決めてしまっている)のあいだにどんな物語が紡がれるのだろうと思わせる。
風景画でも、激しいタッチの強い色彩のものがあって、ああ、こういう絵も描いていたんだ、と思ったり、
山の絵に添えられた大きめの字で書かれた言葉も読んでみる。こういう筆跡のひとだったんだ、と思う。
イーゼルにかけられた自画像画があった。
岡鹿之助や長谷川潾二郎のような、リアルなのに幻想的に見える花瓶にいけた花の絵もあった。
油彩も水彩もあったけれど、
具象から抽象に移行したあたりの、
鯉のぼりに見えたり、ジャガイモに見えたりする、色を抑えて薄いグレー(銀色がかっている)や茶で描かれたシリーズも、愛らしい感じがあって、何度も見返したりした。
県立美術館と第一画廊、両方の展覧会を見ることが、ひとつの大きな回顧展になっていると感じたです。
帰り際、ひとりの男性が画廊の方に絵の解釈を求めていた。
それは私が最初、雪の降り積もった竹林だと思い込んでいたシリーズで(雪国の人間の発想…ちがうか)、これはなにを描こうとしたものか、教えてほしい、と言っているようだった。
(じゃ!ぜひ県立美術館にもお越しくださって、図録もキャプションもありますから!)とは私は言わないが、
美術作品って、自分の感じたまま見ればいい、という説もあるけれど、いいな~と思った作品があったら、
その作家について、時代背景について、知れば知るほど、もっと深くすきになれる気がする。
画廊の方も県立美術館でも《松田松雄展》が開催されていることや、図録もあることを話されていたので、あの男性が県立美術館にも足を運ぶといいなあ。