立花家カラーのオレンジに金の薔薇の浮き出し模様。ひゃー!フィナーレにふさわしいゴージャスさ。
今回いちばん心にしみたのは、石田とスドーちゃんの別れの場面。
最終巻だとわかっているから、ゆっくり読んでいるのに、それでも終わりが近づいてきた、というところでこのエピソード。
もう半泣きで読んでました。
話したいことがある、とスドーちゃんと二人になった石田が、顔を見たら言えなくなるからとスドーちゃんにあっちを向いててもらって話す感謝の言葉。
2年のクラスは楽しかった、スドーちゃんやゆずぴがいて、でも、クラスが変わったら関係はかわってしまう、そんな寂しいことをいう石田。
石田が初登場の時は、なんでも匂いを嗅ぐ癖から一部の女子に「ケン」と陰口を聞かれて、孤独そうでした。
でもユズは、石田をユニークでおもしろいやつと思い、スドーちゃんも、勉強をしてきたくせに全然やっていない、と騒ぐ女子とは違って、本当にやってこなくてテストで0点を取る石田に、石田さんってそのまま言う人だな、とびっくりして、
次第にスドーちゃん、ユズ、石田、藤野が一緒にいる場面が増えて、
石田ってちょっと変わっているけど、ユーモアがあって目の離せない女の子だな、と思っていました。
石田もほんとうは陰口を叩かれていることも、孤立していることも、平気じゃなかったんだ、と、
はじめて石田の気持ちを知った気がして、『あたしンち』最終巻の寂しさとダブルで涙がとまらない。
石田の「ありがとう」は、作者のけらえいこさんに伝えたい言葉を石田が代わりに言ってくれた気もする。
石田とユズは違いに意識しあっているけど、初恋というほど強い感情ではなく、
揺らめく瞬間の光のようなもので、ハッとする瞬間があるかと思えば、違いのお笑いセンスをはかるような、不思議な関係。
家でお母さんに、ごはんのあとのお茶碗にポカリスエットを入れて飲む子ってどう思う、
と聞かれてなぜか石田を連想し、無意識に庇ってしまうユズ。ユズがすきなアイドルとは全然タイプの違う石田なのに。
ユズの姉のみかんはずっと岩木くんに片思いだけど、どうやら少しだけふつうに話せるようになった、かな?
ユズに片思いをしている川島、スドーちゃんに片思いの藤野、いくつもの叶いそうもない淡い思いも、お母さんのお友達やお父さんの友達、いろんな人の輪が虹色のシャボン玉のように思えて、
寂しいような明るいような、最終巻なんでした。
長いあいだ、楽しませてもらって、ありがとうございます。