私はチケットをメール予約(もりおか町家物語館のメール予約システムはすごく使いやすいです)していたので、最前列に座ることができてラッキーでした。当日券の方はやはり後の席になってしまうので…。
これは開演30分まえの状態でして、朗読会がはじまったときはもう満員御礼状態でした。
今夜は、「声にしてごらん」
高橋克彦さんの実体験をもとにしたお話ですが、大塚さんの朗読は地の文の読みが鮮やかで、
大仰に演技せず、その場を観客の前に作り出してくれます。
主人公の「私」は54歳の人気作家で、締め切りがいくつも重なって仮眠を取る以外はひたすら執筆という状況が10日間つづいている。そこへ腎臓が悪くて入院した母親のあれやこれやである。
怪奇小説としてのオチというか、もっとも怖い瞬間をネタバレするのは控えますが、
私は高橋克彦さんの小説の私小説的な部分がけっこうすきなんだなあと思いながら朗読にひたっていました。リアリティがくっきり濃い影をつくっているから、怪奇幻想の部分が際立つ。
大塚さんの演じる「私」はまさしく54歳の締め切りに追われ、焦燥を募らせる作家でした。
朗読は余韻を残しながら、キリッととじられ、
「あれ?リハーサルより早く終わったなあ?」
だったそうですが、誤読が4か所もあって、とおっしゃったとき、プロだなあとあたりまえなんだけど、
その誤読したということを晒すところにも感動しました。
その後、大塚さんと高橋さんの「怪奇対談」。
この怪奇対談は七夜のうち、
7月24日(金)、7月31日(金)、8月14日(金)、8月28日(金)の4回行われる予定だそうです。
が、第一夜目からサービスが多く、時間を気にしながらも、怪奇にまつわるお話をいくつもお聞きすることができました。最後のお話は、あ、本で読んだことがあるあれだな!とわかりましたが、作家の口から体験談として聞くのはやはりちがって、そこもおもしろい試みと感じました。
盛岡出身の直木賞作家で、しかもずっと盛岡にいて、いろんな文化的な活動にかかわったり、企画したり、ほんとうに貴重な存在だと思います。
そんな盛岡にとっても岩手にとってもかけがえのない作家である高橋さんの「怪奇小説と私」クロニクルでいちばん泣けたのは、
小4の克彦少年が学校の「少年探偵団シリーズ」はなかなか自分の手元にまわってこないし、と思っていたところで、手に入れた江戸川乱歩全集(当然大人向けのお話ばかりだ)。それを毎晩、ふとんのなかに電気スタンドを引き入れてこっそり読んでいたら、それが親にばれ、
翌日は学校から帰ると、積み上げられた江戸川乱歩全集が罰として燃やされたのであった。おそるべき親の横暴、そして焚書坑儒。
この分かり合えない親と子、というテーマもある意味怪奇ですが、その後、賢い克彦少年は春陽堂文庫で着々と江戸川乱歩を集め、江戸川乱歩がすきな作家だということで谷崎潤一郎、泉鏡花(小学生で泉鏡花はすごいなあと思ったです)と歩みをすすめ、
中学校に入って、学生時代に読むべきクラシック、的なブックリストに武者小路実篤『友情』などが入っているのを見て、がっくり。
「こっちは谷崎の『冨美子の足』なんかよんでいて、変態性の老人が若い女のあしのうらに踏みつけられることを妄想するという話ですよ、そんなのを読んでるのに、『友情』ってなんてまだるっこしいんだと」
すかさず、大塚さんが、
「もういっそのこと早く顔を足で踏んでくれ、ですね」
というようなあいの手を入れて場内爆笑。
いま気づいたんだけど、冨美子の足、の冨美子って、踏むとかけていたのかなあ?
次回は来週のまた金曜日ですが、
7月28日は乱歩忌、30日は谷崎忌(ともに昭和40年没)ですから、
そちらのお話に発展(脱線ともいう)することも楽しみに、
また行こうと思っております~。そして夏休みになったので、
お化け屋敷から堪能しよう、ともくろみ中です。
ではでは♪