NPO法人うれし野こども図書室主催の
えほん講座 第3回7/13(その2)集団への読み聞かせ、

後半です。


これは なみだ? 栗林 慧 写真 長 新太 文(福音館書店)


これは朝読書のときに、さっとよむのにいい本、と紹介された絵本。


絵本の世界をよむのに、絵本より大きなスケールで読んではいけない、という言葉が

ありました。


それはどういうことかというと、抑揚をつけたり、大げさに演じてしまったりして、

絵本ではなく、自分が前に出てしまう、ということだと思います。


また、


生まれつき表現力の豊かなひとがいる一方、

才能がなくても、だんだん慣れてくるひともいるので、


他人と比較せず、私には私にしかできない読み聞かせがあると思おう、

と。


馴れて本の世界を傷つけるのはやめよう、一人芝居にならないように。






ゆめ キーツ 作 木島 始 訳(偕成社)


キーツの訳者でもある、詩人の木島始についてすこし語られ、


絵本を自分でいろいろよむときに、作家で追っていくといい、という

アドバイスがありました。いいと思ったらそのひとの本を5、6冊よんでみること。


それは知識になり、自信になるから。




月夜のみみずく ジェイン ヨーレン作, ジョン ショーエンヘール絵

工藤直子訳(偕成社)



「高学年には出会わせてやってほしい本」


「この世界がすきだ、という人にはいい。

心のピントが合っていないときには読まない。

すきな本を読んでも、(心のピントが合っていないと)読みに出る。


たどたどしくても、一途なオーラが出て、子どもたちも

聞かなくちゃと思う」


それはほかのことでもあるかも、と思いながら聞いていました。


初心を忘れない、一生懸命にやる、そのことを忘れてしまうと、

自分の成長もないし、聞いてくれるひとの心になにも残さないでしょう。





キイツ 木島始訳 (偕成社)


このお話のなかにはいろんな子どもが登場します。


自分がほんとうに本に共感したら読んでください、という言葉。



ありますよね、いい本だ、ブックリストに載っていた、というだけで

選ばれて読み聞かせにつかわれる本。でもやっぱり読み手の思いがそこにあるかどうか、

ということだと思います。


キイツは多くのブックリストに選ばれている作家ですが、

やっぱりその世界観は誰でも共感できる、わかる、というものではないと思います。


また、そういうことを率直にサラッと語る高橋さんの歯切れのよさもこの講座の魅力だったと

思います。






ダチョウのくびはなぜながい? アフリカのむかしばなし


ヴァーナ・アーダマ文 マーシャ・ブラウン 絵

松岡享子訳 (冨山房)



空と地面がわかれたばかりの頃、という印象的な出だしの、

アフリカのどうぶつたちがたくさん出てくるお話ですが、


「絵本の持っている世界にあった表現を考える」

という言葉がありました。


自分の読みはこうだな、と絵にあった読みをする、

声を区別してやってこそ、絵本の世界が生きる。


自分の読みをきいて、ふりかえること。








この絵本については第1回のときに、お母さんが赤ちゃんといって

いいくらい小さなわが子にこの絵本を読んでやっているところのお話があって、

それが印象的でした。子どもにツンツン、ツンツンと触れてやるお母さんとそれがうれしくて楽しくて、キャッキャと喜ぶ子ども。目に浮かぶようでした。


金関 寿夫文 元永 定正絵 (福音館書店)


元永 定正さんと言えば、谷川俊太郎さんと組んだ、

「もこ もこもこ」やジャズピアニストでもある山下洋輔さんと組んだ、「もけら もけら」など、

ユニークで忘れられない絵本がありますが、元永さんのほかの絵本にもさらっと

ふれられた気がします。


うちで子どもに読んであげてください、

知っているからいっそに楽しもう、という絵本で、

毎回ちがう読みになる、そういうことを話されました。



余談ですが、「もけら もけら」の原画を兵庫県立美術館のコレクション展で見たときは、

うわーーーー、と思いました。だってものすごく大きな絵だったんですもん。


こんな大きな絵を感じながらよんだら、読み方も変わるのかなあと思いました。




いちご 新宮晋 (文化出版局)


あ、新宮晋さんだ。絵本の実物は貸出中だったのかな、

なくてタイトルだけの紹介だったのですが、検索してみたらこの本だったのか、と。


新宮晋さんといえば、風の力でくるくる回転する彫刻を思い浮かべます。

秋田ふるさと村、宮城県美術館のアリスの庭、箱根彫刻の森美術館、いろんなところで出会ってきた

彫刻作品と、この「いちご」という絵本。


これも気持ちが乗らないと読めない絵本だそうです。




カレン・ヘス 作 ジョン・J・ミュース 絵 さくま ゆみこ 訳(岩崎書店)



黄色と紫のうつくしい絵の本です。


カレン・ヘスの本は伊藤比呂美さんの訳でヤングアダルトのものがあったなあ、

と思って今検索したらそれが2冊になっていました。いつのまに。


ほかにもイルカに育てられた少女の、やはりヤング・アダルトの本もあるようです。


そういうものを書く作者が描いた絵本だ、と知ってよむことは

力になるだろうなあといま講座で聞いた言葉を思い出しながら、

考えています。


つぎは図書館でヘレン・カスの本を借りてこよう!



えほん講座では毎回、うれし野こども図書室のメンバーの方が、

きれいな字で書いてくれた絵本のリストを配ってくださるのですが、


必ずしもその通りの絵本の紹介や読み聞かせに至るわけではなくて、


ノートとプリント両方に聞いた言葉を忘れないようにメモしています。


第3回の講座ではやっぱり、最初にことこまかにお話しくださった、

『シャイローが来た夏』が印象的で、図書館から借りてきてしまいましたよ(笑)。


石井桃子さんの戦後、の講演会のあとは石井桃子さんの未読だった本をよむ宿題(勝手に自分で宿題にしているだけですが)が多くて、まだ読めていませんが。


えほん講座ではあるけれど、子どもたちに絵本を読み聞かせするその先にあるものはなにか、

ということを考える上でも、


『シャイローが来た夏』を紹介されたことは大きかったと思います。


絵本の読み聞かせをすることだけにとらわれて、世界が小さくまとまってしまうのではなく、

もっとこういう本もあり、こんな世界もある、ということを、やがて飛び出していく子どもたちに伝える、

そのための力を蓄えさせる、


そんなことをも考えさせられました。