{EF86A31B-A80A-4C00-BE2C-37499AC90378:01}


ギャラリーというカテゴリはないので、美術品をみたらすべて「美術館・博物館」カテです(笑)。

きのう、アートショップ彩画堂 で開催中の「福井良之助展」(~6/6)に行ってきました。

{E4407C1C-F5F8-4A9D-8E4C-5E76DD91913E:01}


岩手県立美術館の美術館ボランティア仲間から、案内のポストカードをもらっていたので、
美術館で展示している作品はいつも1、2点だし、どういう作家さんなのかなーと思って
寄ってみました。写生会帰りのこのひとも一緒です。

あした(もう今日だが)から写生会では鉛筆描きだったものに彩色するので、もし、
ほしいという画材があったら買っていけるわね、というのもありました



展示作品は22点でしたが、ほとんどが孔版画で、いままで福井良之助の作品が
美術館で展示してあってもあー、平面的な、茶色っぽい色彩の、抽象と具象の中間くらいの作品だなあ、

と思っていたのですが、作風と一口にまとめられるものではなかったです。


関東大震災の年に東京に生まれて、幼少時から絵がすきで東京美術学校(いまの藝大美術学部)に
入学。でも西洋画科じゃなくて、鋳金科。お父さんが手に職をもたせたかったもよう。おうちは木綿問屋さんでした。

その後戦火から逃れるために岩手県一関市に疎開し、戦後も一関で美術の先生をしつつ絵を発表しており、そのゆかりで岩手県立美術館で所蔵しているのだなあと思うのですが、

52年に東京に戻り孔版画の制作で注目を浴びるようになり、


きのうは彩画堂の方がいらして、福井良之助の作品について日本ではほかにどこで見られますか?とお聞きしたら、西日本のほうにわりにあることと、アメリカで評価されており、そちらに多く作品がコレクションされていることをお聞きしました。そうだったのか!

福井良之助の大きな図録があったので、それも読んだのですが(見たのですが)、展示では1点だった女性の作品がけっこうあり、しかもほぼみな横顔で、福井良之助に勝手にもっていたイメージの平面的な茶色っぽい、というのとは打って変わって、具象をさらにこえて、美人画やさらにいうと、イラストの女性画にちかい、もちろん、色彩も豊かで、くっきりしたきれいな女性像ばかりでした。

会場にあったのは小さな小さな女性像(もちろん横顔)だったんですが、額がよかった!!


絵を見に来て額をほめるってどうなの、と思うけど、すごくいい昔の額が何点かあって、
お聞きしたら、昔の額でいまはこういういい木材は取れないのでつくれない、ということでした。

小さい絵を引き立てる、木材のあまりないような形のフレームがよかった…。その後美術展でいい額をみつけて大喜びして図録をひらくと、まず額は丸無視であって、時々いつの時代の額なのか、絵に最初からついていたものなのか、画家がつくったのか、など質問するのですが、

画家がつくった額ということもあるけれど、まずたいていは、額については不明、という答えばかりで、
額が気になる私には残念なことが多い、という話をしましたが、


福井良之助展で意外だったのが、外国の街のスケッチ風の実は孔版画でした。
まるでペン画に水彩で色を付けたようなタッチなのに、孔版画、という作品は、

実際に自分でも版画をやっているひとがみると、その技術に唸るのだそうですが、
こういう色彩の世界ももっていたひとだったんだなあというのが驚きでした。


ひとりの画家に対して、わりとこの画家はこういう絵のひと!と決めつけている気がします。

熊谷守一だったら線と面と金色、ぎりぎり抽象と具象のあいだにあるようなシンプルな虫や猫とか…そんな作品ばかりでもないんですが。猪熊弦一郎といえば鳥とか人の顔を丸で描いたようなあれだ、と思ったら初期の具象はまるっきり別人だった。初期から晩年まで絵がかわる画家もいるけれど、おなじ時期に描いた絵でも、いろんなタッチや技法がある、という作家も多いです。
最初から最後までほぼおなじ路線を追求し続けた、という作家もいるでしょうが、それでも違うタッチの作品があったりする。

グワッシュをつかった、≪木実≫という作品が、ベージュや水色、淡い茶、ピンクという色彩とモノの境界がまじりあったような画面構成で目を引きました。あれれ、こんな色彩もあったんだなーというかるいショック。

フクロウの絵の路線といえばそうなんだけど、

作品名不詳の作品で、二羽の抽象化されたようなまん丸の胴体と顔のヒヨコ(なのか?)で異様に長い脚の鳥がざっくりした筒型の鳥かごの中にぎゅうぎゅうに入っている、という作品も色が鮮やかでおもしろかった。鳥が黄色でかごは赤っぽい茶色なんですが、色が濃くてはっきりしているんです。

いちばん大きな作品は、バックは淡い茶色で、マスカットの淡い黄緑とガクアジサイの青がアクセントになっているけれど、全体としては溶けたような茶色で、オレンジ色で短く素早い筆が点々と置かれているやつ。

大きい作品だから、はじめて絵にタテヨコの線がうっすらと残っていることに気づいて、あれ?なんだこの製図の線みたいなものは、と思ってほかの絵もみたら、多くの作品にそのタテヨコの線が残っているのだった。


孔版画の手法について丁寧に解き明かしている図録があって、それも見せてもらったんですが、たぶん、孔版画の技法上、そのマス目のようなものができるのだと思うのですが、それをあえて残して見せることが作品として必要だったのではないか。

小さな小さな作品ですが、《風化》という、ブリューゲルの赤いバベルの塔(小さいバベルの塔で、濃い赤で描かれているやつ)みたいな作品があり、空想的な作品も描くんですね、とお聞きしたら、

福井さんは外国に絵を描きに行っていたので、実際にこういう風景があったのではないか、ということでした。

お魚を描いた横長の作品もよかったなあ。


1、2点でああ、ああいう絵を描く作家だね、と思いこんでしまうのはやめようと思った私でした。
でもまあ、ああいう絵のひと、というとっかかりがある方がわかりやすい側面もあるのですが。

ではでは♪