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もりおか町屋物語館 にて、一人芝居を観てきました~。



全4回のしたまち小劇場祭2015~一人芝居シリーズ~のうち、

今日見てきたのは、


≪其の壱≫

出 演:伊勢二朗(劇団「赤い風」)
   「おつむてんてん」(作・演出:藤原正教)
日 時:2月25日(水)、26日(木) 各回開演19:00(18:30開場)



ある日、一人で暮らす高齢の男のもとを、

大手新聞社に勤める記者が取材に訪れる。


褞袍姿の男は、

お尋ねの男はさっき死んじゃった、と答え、

いま呼んでくるから待ってな、とふたたび障子から

褞袍を脱ぎ去り、端然とした着流しで現れた。


そこから元浅草の幇間として鳴らしていた男は、

記者と酒を酌み交わしつつ、問わず語りに身の上話を語り始める。


もとは浅草は馬喰町の染物屋のせがれだった幇間、

父の使いで芸者のお姉さんのところに着物を届けたりしているうちに

すっかり遊びを覚えてしまい、集金した金をもって家に帰らない。流連。


そんなら、と、いうわけで検番のところで下働きをすることになり、

やがてその愛嬌と気の利く様からお座敷で幇間をすることに。


しかし、男は商売モノの芸者に手を出してしまい、破門されてしまう。

芸者を落籍せる金は息子を一度は勘当した父が、倅の祝言にご祝儀を出さない親がいるか、

と出してくれた。



落籍せた芸者の恋女房を連れて盛岡へ。

蒸気機関車の煙で黒くすすけた窓をぬぐって、盛岡に降り立ったふたり。


そこで生まれたふたりの子どもたちと、盛岡芸者華やかなりし

昭和初期の盛岡。男はふたたび幇間としてずいぶんもてはやされ、女がまた放っておかない。


浮気がばれたときにもできた女房は、そんな男の頭を、


おつーむてんてん、おつーむてんてん、


とやさしく撫でる。


戦争、終戦、家族との別れ、、、。



ある時は洒脱で酒好きの、話し好きの好々爺。

ある時は艶っぽく、さぞやもてただろうと思わる幇間の面影をのぞかせ、


恋女房の芸者の粋な女ぶりも、

男の厳父が見せたやさしさも、


伊勢二朗さんが融通無碍に演じわけ、まるで真打の噺を聴いているような

安定したお芝居だった。


音響と照明は抑えられ、必要最小限にとどめ、

一人芝居の滋味を深く引き出していた。



愛する者を喪っていたことを伝えられた最後の場面の丸まった背中が

哀切だった。


観客はみな、この昭和を生き抜いたひとりの幇間のそばに座って、


おつーむてんてん、おつーむてんてん、


と優しくなでさすりたいような気がしたのではないだろうか。



久々の再演だとパンフレットにあったが、再演を企画してくれてありがとう、と

いいたい気持ちだ。