《6才のボクが大人になるまで》、
映画館の予告だけみて気に入ったので、この映画が実際に12年間かけて撮られたとパンフレットで知って納得!
主な登場人物は大学在学中に自覚もないままパパとママになった両親と、
その子どもたち、姉と弟。
主人公のメイソンが弟で、姉がサマンサなんだけど、
6才のメイソンはブロンド(に見えた)だったのに、ローティーンになったら濃い栗色になって、
子役と少年~青年までを演じた2人がいるはずだと思ってました(笑)。
サマンサ役の女の子は幼な顔がずっと残っているので、
上手いなあ!
と演技力のせいかと(笑)。
子役から青年青女(も変だが、青年に対する女の子の呼称がないのよ)になるふたりだけじゃなく、
母オリヴィア役の女優さんもさりげなくだんだん貫禄がついて(女優さんだから役柄にあわせて増量したんだとばかり)、
父親のメイソン・Sr.も軽い感じがなくなって、渋くて優しいいいオヤジになるけど、それも役者魂だと。
12年間に少しずつ撮影する中で、メイソンが台本をしっかり丸暗記してやってくる子どもから、
撮影前に監督と演技について話し合うようになったというのもパンフレットで読んで、ますますこの映画がすきになった。
2時間50分近くあって、予告などいれると3時間弱の映画なんだけど、
エンドロールの音楽もよかった。
はじめはお姉さんのサマンサはうるさい、こまっしゃくれたガキみたいであまり好きじゃなかった。
ひとりで大人の歌を振りつきで歌ってうるさくして、お母さんが子供部屋をのぞくといきなり泣き出してメイソンにせいにしたりして。
スポーツ万能で成績はオールA、たぶん早熟すぎた女の子は不安定な家庭のなかで自分を持て余していたのかなあ。
脚本がいいのでまるでサマンサもメイソンも実際にいたような気がしてしまいます。
まだあどけない時代のメイソンとサマンサ。
じつはふたりとも1994年生まれと知って驚く。女の子の方が成長が早いのは世界中どこでも一緒なの?
ふたりのパパは最初、親としての自覚がなく、ママに全部押し付け、ママは最初の離婚をする。
そしてきつい労働で二人を育てるのに限界を感じて、大学に戻って勉強することを決意。
子ども時代から何度もお母さんの運転で引っ越す場面があるけど、
子どもたちは何も知らないで後ろではしゃいでいて、お母さんはひとりで全部抱えて疾走していく。
クルマがロードを走る場面も印象的だった。
お母さんの引越しと、最後のドライブは成長したメイソンが大学に向かうところだった。
高校生活最後のダンスパーティー前に彼女に振られ、自分はどこか欠点があるんじゃないかと内心凹んでいるメイソンに、
12年間の間に内面的にはもっとも成長したかもしれない父親が励ます場面。
彼は離婚したあとも2週間に1泊2日で子どもたちと会いつづけ、再婚して再び父親になった。
再婚相手の女性も、その両親も、みんなメイソンとサマンサのことを見守り愛情を注ぐところが大きいなあと思った。
長い映画だったはずなんだけど、もっと見ていたかった。
大学生になってルームメイトとそのガールフレンド、ガールフレンドのルームメイトの4人で高い山にハイキングに出かけるのも、
大人っぽいなあと思った。向こうの学生が実際にそんなことをするのかどうかはわからないけれど。
息子はハイキングで新たに知り合ったこのルームメイトのガールフレンドのルームメイト(ややこしいな)と深いところで共感して、
それで映画は終わるんだけど、その終わり方もやや物足りないところがよかった。
息子もこの映画が気に入ってしまい、メイソンが結婚するところまでやってほしかったという。
きっとあのお父さんと同じく、学生のうちにパパになるよ、と。それが見たいんか!嫌でもそれはないと思うなあ。
ほんとはメイソンたちのお母さん、オリヴィアの写真も載せたかったのですが、パンフレットにはなかった。
最初は疲れきった若い母親で、
次に大学に通い始めて生き生きと美しくなった母親、
そこの大学教授と再婚してヨーロッパに新婚旅行で、幸せいっぱいで輝いていたオリヴィアですが、
わりにすぐ、大学教授の夫のアルコール依存症と肉体的精神的な暴力に遭い、
しかしやられたままで我慢するオリヴィアではなく、メイソンが強制的に丸刈りにされたことを機に女友達に手伝ってもらって、夫に家を出て行く、と宣言して子どもたちを連れて引っ越す。
じつは大学教授の先生も再婚で、メイソンとサマンサと同じ年頃の子どもたちがいて、4人とも等しく精神的な虐待を受けていたので、サマンサは残してきた義理のきょうだいたちを心配する。
義理の父親は糞だったけど、4人の子どもたちが仲良しだったのは救いだった。
彼らふたりがいつか成長して現れないかと思っていたけど、それはなかった。いまも心配である。
オリヴィアは修士課程まで出て心理学の教授になる。すげぇ。日本にも母子家庭支援の職業訓練はあるが、大学教授をつくることは絶対ないだろうなあ。
その後オリヴィアはまた再婚する。こんどの相手はいいやつだった。彼は最初の夫のメイソン・Sr.とも父親同士のいい付き合いをする。
オリヴィアは逞しく馬力があり、賢い。ある日引っ越した家の配管工事をたのんでいところで、まだ若い配管工に、
「あなた賢いわ、大学にいくべきよ!」
と勧める。彼はお金がない、というのだが、公立の夜間短大なら安いわよ、と励ます。
その彼は数年後、メイソンとサマンサとオリヴィアが食事をするレストランで、
(ふたりとも大学にやって自立したんだから、ママはアパートを借りて本を執筆するわ、と。三番目の夫はいいやつなので、執筆のために一人になりたい、というだけだと思う)
りゅうとした姿で現れ、あれから短大に入って勉強し、いまはここの店長をしてお金を貯めて、大学で学ぶつもりだ、と伝える。お礼を言いたかった、ここの勘定はご馳走させてください、と。
オリヴィアは寂しそうな表情を浮かべるのだけれど、それはメイソンもサマンサも、みな若い人たちが成長して巣立って行く、自分は取り残されるだけだ、
という寂しさだと思う。
書いても書き尽くせないが、いろんな人たちとの出会いや出来事のなかで成長していくメイソンを、
12歳の、小学校を卒業する息子と見られてよかった。
ところで息子にメイソンを見ていてあんたもこんなふうになったらいいなあと思ったら、
俺がどこかの建築現場でボーイズキャンプに呼んでもらってマリファナを回したりビールを飲んだりエロトークに参加できると思いますか?と言うのだった。
そこがお前的に一番のキモか!
成長と、周りの大人の愛情ということも考えさせられたです。