娘の月子。荘田由紀さんは文学座の女優さんです。
目がすごく大きい女優さんだなあ、と思っていましたが、
パンフレットに役者さん全員に聞く、あなたにとってオカンとは?
というのがありまして、
母は女優、とあったので、誰だろう?と思いまして、
鳳蘭の次女だったのですね(お姉さんはOLだそうです)。
目がやっぱり親子だー。
でも鳳蘭が170cmの長身であるのに対して、由紀さんは160cmと
小柄(ではないが)で華奢。
そんな小鹿のような月子が冒頭、顔見知りの男の暴力に怯え、
小さく縮こまる場面から物語ははじまります。
月子は親切のつもりで単身赴任で大阪にやってきた同僚に
たこ焼き屋に連れて行ったりするのですが、
それが誤解され、ストーカー行為をまねき、
ついに自宅前で待ち伏せされ、めった打ちにされるという事件が1年前あり、
以来、恐怖心で外に出られなくなってしまいました。
ある日酔っぱらったオカンが連れてきた捨て男、
ケンちゃん。ケンジという名前から、二男かと思えば、
ケンちゃんのお母さんが沢田研二のファンで、
研二なのでした。そのふわふわしたオカンは職人気質で厳しい
父親に反発して家を飛び出し、五歳になったケンちゃんをある日連れてきて、
そのまま祖父に預けてあとは行方知れず。
祖父が板前で、その姿にあこがれ自身も板前を目指したケンちゃんですが、
彼が連れてきた友達がまんまと祖父を騙し、
連帯保証人の判を押させてしまい…追い詰められた祖父は首を吊り、
命はとりとめたものの、半身不随となり介護が必要な身体になってしまいました。
オカンは酔っぱらって拾ってきた男、と最初に紹介したのですが、
やがてケンちゃんの過去と月子の過去が舞台で交錯し、
つらい傷をもった人たちがお互いをかばいあって、
一歩を踏み出そうとします。
そして、すごく渋くてかっこいいおじいちゃん。
ケンちゃんを案じて時折現れます。
(ケンちゃんには見えない)
男手ひとつで育てた娘に裏切られ、ケンちゃんを一人前にしたいとの
思いが強く、思わず涙がこぼれてしまいました。
誰かのために、という思いほどひとを打つものはないですね。
舞台稽古のようす。
このオカンが月子に抱きついているちゃぶ台が私たちが運んだ小道具の一つでした~。
ケンちゃんの祖父が入っている病院(なのか介護施設なのか)で出会ったのが、
オカンでした。
そして、看護婦という職業柄自分の身体の異変について気づいていたのに、
ついあとまわしにしてある日、受診したオカンはガンを宣告されてしまいました。
オカンが飲んだくれて、ケンちゃんを拾ってきた、とうそぶいたのは、
その夜でした。ケンちゃんがオカンにプロポーズしたのも。
最初、オカンが若い男を拾ってきた、というキャッチャーなストーリーを聴いたときは、
あんまりすきじゃないなあと思っていたのですが、
実際にはみんな悲しみを背負いながら誰かのために一歩を踏み出そうとしている、
そんな物語でした。