《立てる群像》1951、油彩・カンヴァス、131.5×162.4
猪熊弦一郎展 未知に向かう悦び
展示室Aはある壁から、
時代的には第2次世界大戦にかかる1940年代までと、
戦後では大きく作風を変えています。
自由に、大胆に、絵を描く悦びを伝えるような絵です。
《からす》1953、油彩・カンヴァス、130.0×194.0
カラスと少女、小さな舟、魚、四角い頭の猫を抱きしめる少女、
物語のような寓話のようなモチーフが紫と黄色、水色という不思議な配色で幾何学的な構成に織り込まれています。
ピカソの《ゲルニカ》を連想することもできますが、
お魚と鳥、少女、猫といった猪熊弦一郎の好むモチーフのアレンジには「訴え」より「詩」を感じます。西脇順三郎の詩を添えたいような気さえします。
そんな言葉が浮かびます。
《引力の外》1962、油彩・カンヴァス、152.5×127.0
この盛り上がったディティール。
猪熊弦一郎のタイトルには宇宙にもひらいていてユニークです。
自分の好みの小さなものをコレクションすりのもすきだった猪熊弦一郎。
この棚も作品のひとつだと言えましょう。
ふたつのガラスケースのうち、ひとつめはコレクション。
香水瓶のミニチュアのコレクションも可愛い。でもこればかりではなく、弦一郎さんが好きだと思ったものが、一見、脈絡なく置かれているのです。
猪熊弦一郎のコレクションについての本、「物 物」がそばに置かれていて、拾い読みすると集まってきた物にまつわる物語が興味深いです。
もうひとつのガラスケースには弦一郎さんが虫と呼んだ、
指先を動かしている間に生まれた小さな不思議な生物たち。
細いハリガネや、チョコレートの包み紙や、錠剤の入っていたものや、そんなものが不思議な虫になっています。
この展示室AからBに移ると、さらに画風はのびやかに大胆に鮮やかに稚気にあふれる。