柳原義達 「岩頭の女」
岩手県立美術館の2階の、舟越保武・松本竣介室の前にスッと
立っているこの女性像は見れば見るほど、強く惹きつける。
最初は震災の被害を体に受け、痛ましいと思っていた。
しかし、最近はその堂々たる姿に思わず見とれている私がいる。
後ろに回ってみれば、広背筋もすばらしい。
このような立ち姿勢を保つためには、彼女はよっぽど鍛えたに
違いない。ふくよかに見えるが、強靭な背筋と腹筋によって、
上体は吊り上げられていて、へそのくぼみは縦に引きのばされている。
この「岩頭の女」は陸前高田市立博物館コレクションだった。
陸前高田市では震災で、市立博物館、市立図書館、海と貝のミュージアム、埋蔵文化財保管庫の4施設が被災。所蔵していた資料約50万点が全て流された。(河北新報 2014年6月1日)
しかし、現在県立博物館の敷地に修復のための施設を建設し、
現在、古文書類約3万5000点を職員8人で修復中。これまでの処置件数は年3500点だったが、作業効率が上がり年5500点まで増える見込み。作業の様子は開館時間内に見学できる。
7月には絵画や掛け軸の修復が始まる。首都圏の専門家を招いて修復技術を学ぶ。修復が終わった資料は履歴などを調べて返却する。
海水に漬かった資料の再生は世界に例がないといい、脱塩や乾燥作業は試行錯誤の連続だった。今後の災害に生かそうと、修復方法のマニュアル作成も検討している。(同上)
7月には絵画や掛け軸の修復が始まる。首都圏の専門家を招いて修復技術を学ぶ。修復が終わった資料は履歴などを調べて返却する。
海水に漬かった資料の再生は世界に例がないといい、脱塩や乾燥作業は試行錯誤の連続だった。今後の災害に生かそうと、修復方法のマニュアル作成も検討している。(同上)
2013年4月から岩手県立美術館で帰る日を待っている彼女が
待っている人たちがいる町に帰れる日が近づいている。
帰る日を待つ (岩手県立美
術館 HP From Staff vol.34) 2013年4月
東京国立近代美術館の「犬の唄」
はじめて見たのはもうだいぶ前になるんだけど、
柳原義達、という名前が頭に入って、キジバトをモデルした一連の「道標」シリーズも
パッと眼に入ってくるようになった頃、
はじめてこの女の像に目が向けられたのだった。
あ、ここにもいたんだ…という驚き。
岩頭の女は巨人族か?と思わせるほど堂々と大きいが、
こちらの「犬の唄」の女は小柄だ(あくまでも私の感覚から言って、です)。
しかし、片手は前に突き出され、服従する犬のポーズをとっていながらも、
後ろに回した手は、心は屈服していない、と語っている。