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山口県立美術館 第3期コレクション展
2014年10月30日(木)~2015年2月1日(日)

コレクション展特別企画
吉村芳生 (2014年12月6日~2015年2月15日)

たまたま点けていたテレビ番組で、色鉛筆で描いたというこの藤の花を見てすっかり虜になってしまった私。


見たい!


と思っていたら、行こうと思っていた島根県立石見美術館(益田市)の手前の山口県立美術館の常設展で吉村芳生展があることがわかり、

これは来い!というサインだわ!ということで行ってきた私です。

藤の絵は「無数の輝く生命に捧ぐ」。
2013年12月6日に他界した吉村さんが、2011-2013年にかけて制作した作品で、実物の前に立ったら言葉を失ってしまうだろうと思う。

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常設展特別企画展なので、特に図録はなくてパンフレットを買ってきました。

今日見た「タンポポ」と、

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「パンダ」。

写真を元に描いた作品をまたスマホで撮るという倒錯に目眩をおぼえる。

なぜこんなに惹きつけるのだろう。


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しかし、いちばん心を鷲掴みにされちゃったのはなんといっても、「365日の自画像」でした。



「実は、一年にわたって毎日、自画像を描くシリーズは
これ以降、鉛筆でいちど、色鉛筆で一度。そして、毎日気に入った新聞の一面に描かれたものも含め、全部で4点ある。

2010年の展覧会の時、吉村さんはそのすべてを出品しようと主張し、私は、この「365日の自画像」と新聞のシリーズの2点だけにしましょうと申し上げた。長らく押し問答が続き、どうしようもなくなった時、「そんなにたくさん吉村さんの顔があったら気持ち悪いじゃないですか」とつい口を滑らしてしまった。吉村さんはこの上なく不機嫌になり黙った。結局、出品は2点(でも730枚)となった。

吉村さん、すいませんでした。でも、今回の展覧会でもやっぱり、私のイチオシはこの作品です。

(学芸課長 河野通孝)」

以上は山口県立美術館ニュース「天花」からの引用です。


私もこの「365日の自画像 1981.7.24ー1982.7.23」がいちばんいいなあ、と思って何度も行きつ戻りつして見てきたので、

うし!!

と思い、また、


作家と美術館側のリアルな丁々発止が垣間見えるエピソードににやっとしました。

「365日の自画像」の中には、繰り返し出てくる自宅の大きなチェックのカーテンもあれば、

ここで展覧会をやったのかな?と思われる広島県立美術館もあれば、原爆ドームが背景になっていることもありますが、

概ねは日常の家の中や雑踏や看板の前や工事現場の前など、ごくありふれた場面を背景にして真正面を見ている、

画家の自画像です。

中に一枚だけ、失敗したのか?と思わせる顔が真っ黒に塗られたものがあり、

それはわりあい最初の方のものなのですが、なにがあった、と気になります。

顔の陰影や鼻や頬の艶の表現、髪の毛の毛筋の表現など、鉛筆による緻密な自画像を毎日1枚描くうちに、力が蓄えられ、

ある日突然、捉えられる瞬間があったのではないか。


肖像画で髪がそんなに気になるなんてないのに、艶や空気感、風で崩れたり、日差しの強い日は髪の陰が顔に落ちていたり、髪の表現が非常に気になってしまいました。


あ、理容院に行ったな、とわかった時は絵の前でクスッと笑ってしまうし、


笑顔になればこちらもうれしくなり、

画家の365日を一緒に歩いているような不思議な感覚もありました。

画家の自画像というのは大抵、体を斜めにしていますが、真正面の自画像はめずらしい。それは吉村さんの手法が、写真にいったん撮ったものを鉛筆で丹念に紙に描き起こしていくからなのですが、

それが365日並んでいると非日常になってしまう。描いた一日は日常だったはずなのに。