今回は写真を撮ってきました~iPadでですが。
シャッター音が聞こえてしまって申し訳ない。
でもこの場面は撮りたかったんです。
白い仮面をつけた中世の僧侶みたいな黒服をまとった7人の役者たち。
彼らは人類の近未来史を語り始めます。
主人公三角が仮面を取りさり、
私は自分が守りたいものを守るためにここに居続ける、
と宣言する場面、
きょう気づいたのは、彼女に背を向けてユニゾンのセリフを口にしていたのは、
けっして誰でもいい役者ではなく、ここで伏線が張られていたということ。
パニックを起こした天然キャラの新人、僧司(そうじ)。
廃墟の密室で味方のひとりが殺され、犯人はこの中にいる、
裏切者がここにいる、と聴かされ、精神に異常をきたしてしまいます。
ここの場面ではスパイのはずの三角が僧司に片腕を撃たれても、
場に落ち着きを取り戻させ、僧司を宥めることを第一にしたことに
打たれます。
彼女の使命は、≪3R≫殲滅のはずなのに。
ひとりまたひとりと殺され、本部の歩墨と必死に交信しようとする三角。
舞台セットは黒がベースでふたつのドアだけが白く塗られているのが
象徴的です。黒い舞台の中にひとりで立っている三角の深い孤独感が
伝わってきます。
≪3R≫の仲間と行動しながらも≪舞鬼≫のスパイである三角。
しかし、殺されていく≪3R≫の仲間たちを守ろうとし、姿の見えない敵と
戦い、一方で≪3R≫の誰にも自分の正体を明かすことはできない…。
クリスティの「そして誰もいなくなった」状態で、最後の一人になった、
と思われた三角でしたが、
じつは士堂は生きていました。士堂が旧世界の破壊兵器を独占しようとしたことに
制裁を加えた雅王によって射殺された、とみせかけて、
仲間たちを謎の殺人者から守ってくれ、と託されていたのでした。
雅王と士堂は常に対立していましたが、この時、仲間だったのだ、と
ほろっとします。
そして、本部にいると思わせてじつは廃墟に潜んでいた歩墨。
出口を爆破し密室を作り上げたのも、連続殺人の犯人も、みな歩墨の
仕業でした。
なぜそんなことを?
と問われて、嬉しそうに語るのは、
痺れたかった、ということ。
三角のようにいつ殺されるか分からない場所にいられる人間には分からない、
自分には痺れるようなことは一生起こらない、という限界を知った歩墨は、
痺れたかった。
「中心にいたんだ!」
と叫んだ歩墨。廃墟の中心、殺人と疑心暗鬼、自分が作り出した最悪な状況の
その中心には自分がいる、
そのことに痺れ、快楽におぼれた歩墨はふたりに撃たれ、
残されたふたりもそれぞれの道へ散ります。撃ちあいを避け、三角は本部には言いつくろっておくから、
と士堂を逃がしたのです。
本部での報告の場面は、この75分の芝居の最初の場面へ戻ります。
手を伸ばせば空は意外に低く、殻を破って飛び立つことは容易かったかもしれない。
しかし私はここに居続けることを選んだ。
それがなにかは分からないが、
自分が守りたいものを守るために。
DA!DA!DA!
DA!DA!DA!
DA!DA!DA!
DA!DA!DA!
DA!DA!DA!
DA!DA!DA!
仮面を脱ぎ捨てた7人が世界に向けて、
あるいは自分に向けて、
観客のひとりひとりに向けて、
銃を撃ちつづける。
守りたいものってなんだ。
飛び立つことだけが正しいのか。
そこにいたいのか。
正義は正しいか。
…
近未来の廃墟という舞台設定、裏切りと殺人、サイコパス、
というエンタテイメントととしても楽しませてくれた物語ですが、
楽しみながらもセリフの一つ一つを噛みしめたくなるような舞台でした。
ではでは☆