こちらはモーリス・ドニの「水浴する女」ですが、
こちらになると、ダンスというモチーフと水浴する女のモチーフ、
どちらもあるなあ。
全然関係ないけど、百人一首を分類したことありませんか?
秋の歌、恋の歌、鹿が出てくる、紅葉、なーんてやっているうちに、
どちらのカテゴリにも入るやつが必ず出てくる…あれを思い出しました。
これは完成したものが残っていないのですが、250×150くらいの大作でして、
期するものがあって二科展に出品したのに落選して、
怒りのあまりなのか、落胆のあまりなのか、また違う感情があってなのか、
キャンバスを切り刻んで残ったのがここの部分なんだそうです。
ただ、この絵の三人の女たちのポーズは単体で油彩や版画に遣われているので、
もう一度描きなおしたら、どんな作品になっていただろうか、と考えてみます。
で、こちらは藤田嗣治の自画像。
東京美術学校、いまの藝大ですが、美術学部の卒業制作に自画像を出すのだそうですね。
いつだったか、所蔵の卒業制作の自画像展をやっていたと思います。見なかったのですが…。
藤田嗣治も西洋画科で主任教授が黒田清輝先生だったのですが、
この黒っぽい陰影のつけ方が、外光派の黒田先生にはよい印象を与えなかったようだ。
藤田嗣治の卒業時の評価はあまり芳しいものではない。
萬さんの「裸体美人」も卒業制作で、国の重要文化財の指定を受けて、
国立東京近代美術館の顔になっているのですが、
やはり評価はよろしくなかった。
しかし、黒田清輝チルドレンに甘んじなかったからこそ、
誰にも描けないものを描く画家が誕生したわけで、
そう考えたら黒田先生はいい先生なのかもしれないなー。
こちらはゴッホの≪タンギー爺さん≫。壁に掛けてあるのはゴッホのコレクションした
日本の浮世絵の数々であります。
余談ですが、≪タンギー爺さん≫、ロダン美術館にあるものとおなじ構図の
ものがデンマークのニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館にもあるそうです。
パンの本を読んでいて知ったんですけどね。最初、え?ロダン美術館じゃなかったっけ?
と思ったのですが、そういうことなんでした。
藤田嗣治はゴッホを意識したというより、浮世絵にもともと親しんでいたので、
この絵はゴッホの影響というわけではないのですが…。
ああ、またいましたね、藤田の絵の守護神のような猫が。
パリで拾った猫らしいです。
藤田嗣治のこのごつごつした筋肉の描き方、すごいなあ。
なんだかんだいいつつも、東京美術学校で当時は画期的だった、
解剖学と裸体デッサンをカリキュラムに入れた黒田先生の教えが
生きているのではないか、と思ったり、
んー、でもこの極端にゴツンゴツンした筋肉は、運慶というか、国芳とか北斎というか。
女性は白くなめらかな肌で、やわらかな体つきとして描く一方で、
男性は自画像はべつにして、相撲取りを描いたり、神輿を担ぐ男衆や闘う男を描いているのが、
藤田嗣治のおもしろいところであります。
それにしても、あの猫の名前がミケということはきょうはじめて知ったよ。
それがなにか?ですが、これからは自画像を見たら、ミケにも声をかけてやろうと思う。