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トラブルカフェシアター 第19回公演
「短パン☆カーニバル」
作・演出 遠藤雄史

2014年11月7日(金)19:30~
8日(土)14:00~、19:00~
9日(日)14:00~

いわてアートサポートセンター風のスタジオ

4回公演の初演を見に行ってきました。

演じながら演出を調整したり、その日の会場の空気や劇団のコンビネーションや、

様々なもので印象はかわるんだろうけれど、

すっごくおもしろかった!!

です!!

「短パン☆カーニバル」という、なんとなく題名先行で後付けでホンを書いたんじゃないかな~と思わせるタイトルでしたが、

終演後に作・演出・キャストの遠藤雄史さんも次回公演のCMをしつつ、最近題名先行で、と話していたのでそうか!と。

ポストカード、チラシ、パンフレットの大量に溢れかえる祭り半纏に短パンの役者さんは、

単なるインパクトのある広報ということではなく、

1人2役、3役で主に登場する9人で30人を演じるというイメージの増殖をも表していたんだなーと気づきました。

お話は、高校生の無駄に炸裂するバカなエネルギーを描き、笑って楽しんでほしい、ということだったのですが、

これがバカ場面の横溢を描いたところより、チクチクするような、冷や汗を自分も流しちゃうようなところがおもしろく感じられたんですね。

これは、50歳・どっちかというとブッキッシュで高校時代は新聞部・文化祭や体育祭では後片づけだけ頑張り、打ち上げには声もかけてもらえないタイプ

の私の視点で、自分も実際に高校時代はバカばっかりやったなあ、楽しかったなあ、という20代の人とは全然違う感想だと思われます。

運動会や文化祭の翌日になんでこうも欠席者が多いのか!という先生方の叱責と慨嘆を受け止め係というか…まあここにいるお前たちに言っても仕方ないんだが、と先生たちもわかってはいたんですけどね。でもそおゆうタイプですよ。

だったらこのお芝居にずっと疎外感を感じて入り込めなかったかというと、そこがお芝居の力だなあと思うのは、とにかくおバカな高校生たちの無駄無駄無駄エネルギーに巻き込まれるのが心地いいんです。

舞台挨拶のあと、音楽が攻撃的なボリュームのなり、暗転ののち、

舞台に登場したのは踊りまくるカラフルなトレーナーにジャージ短パンの生徒たち。

「川島ちゃん」に短パンを穿かせたい!というバカ男子と、

その妄想を唾棄する女子グループ。

「川島ちゃん」は若い講師の先生で、立場的に大人しく控えめ。講師の先生って男子のお隣のアイドル化しちゃうんですよね。

で、男子と女子の対立グループが出来上がります。

またこの高校にはワンマン校長がいて、この高校を出た生徒たちは将来レイバーとして労働力を提供するだけなんだから、大人に従順になることを学ばせてやる的な思考の持ち主…いやセリフはもっと過激で笑っちゃうんですが、

そのセリフをただ突っ立って言うわけじゃなくて、今回特に動きがおもしろかった。

セットはシンプルで、ガランとした空間のなかに、緑色のベンチがあって、
両側の壁に黒っぽいボックスが3個ずつあって、職員室になったり教室になったり。

緑色のベンチは校長や教頭がえらぶって演説したり、体育祭の号令をしたりする時に登壇する。

副校長の何にでも「お」をつけるセリフが可笑しかった。「お位置について、お用意ドン」みたいな。


しかもくどく長いセリフなんですが、一句もよどまずスラスラと「お」をつけまくるんです。恬淡の表情に間違いまみれの日本語の副校長(高崎美絵)。

2役で生徒を演じる時はスケバン(今時ないでしょうね。あるのか?)のような睨みを聞かせたサクラ。


ほとんどの役者さんが先生と生徒の2役で、生徒の時と先生の時の落差が激しいほど、可笑しい!

ワンマン校長(菊地淳也)は生徒役では女子に人気のソウイチ。でも真顔で毒づいたり、真顔で変態行為をする男子なんだが。



さて、9人で30人演じる舞台、なかでも3役を演じた役者さんが印象的だったのですが、

3役だとやっぱり3役すべてが印象に残ることはなく、そのうち2役の対照が惹きつけるんだと思われ。

ダメ男子グループは、大柄で大人しい、主体性のないアキラ(及川貴樹・女子ココネ・不人気の神田先生役)、

小柄でムッツリスケベでウブい、でも賢いリョウマ(池田幸代・シズク・三田先生)、

ダメ男子グループのリーダーで妄想力の恐るべき持ち主ショウタ(遠藤雄史・スズカ・近江先生)。


力関係は、  ショウタ>アキラ>リョウマ

(話の進行とともにこの関係も緩んで結び直される、そこもいい)

神田先生=三田先生>近江先生

シズク>>>>>アキラ・ショウタ

で、その他大勢女子のココネとスズカの印象は弱く、

弱いものイジメの好きな不人気教師の神田先生に比べれば、はっきりものを言うタイプの三田先生も印象は弱くなります。

神田先生を見ていると、厭なやつを楽しそうに演じているなあと、ダメ男子グループでも言いなりタイプのアキラとの落差の大きさに笑ってしまいます。

ショウタの時はアキラに対して威張っているのに、近江先生になると、生徒からのラブレターを元にいびられて冷や汗を流す。この関係性の逆転も可笑しい。


高校生たちにもイケテル・モテ・リア充などによるカースト制度があり、

その最下層のダメ男子グループの中では威張っているショウタが、近江先生役では組織の歯車に抗えない弱い大人になっている…考えると笑っていてもほろ苦いものを感じます。そのほろ苦さやチクチクした気持ちが笑いを爆発させるのかもしれない。


ショウタ・リョウマ・アキラの三人は川島ちゃんの短パン姿を見てぇ!だけで体育祭をがんばります。

騎馬戦までのアドバンテージポイントを稼ぐんだ、と、軍帥様と言われてうれしいリョウマが指揮をとって作戦はショウタの頑張りで成功するかに見えたのですが。

クラスの女子グループの中でもドS入ってます的なユウの奸計にはまってレースをリタイヤしてしまうショウタ。彼は妄想力で「川島ちゃん」を出現させ、その妄想の中でリア充を楽しむことを選んだのです。

これもよく考えると胸が痛くなるような設定なのですが、

ここからは小柄で奇妙な声でビビりながら喋るリョウマの見せ場!

演じているのは女優なんですが、空色のトレーナーのフードを目深に被るだけで、オバQのハカセとドラえもんと魔太郎をミックスしたような(例えが古くてすみません)リョウマになるんです。

リョウマはアキラとふたり、この窮状を打破してくれる、ショウタを超える妄想力の使い手を訪ねて学校の地下に潜ります。

ってどんな魔法学校だよ!

でも舞台にはセットなんかひとっつもないんです。妄想力の舞台を観客も妄想力で見る状況。風のスタジオは妄想スタジオになってましたね。

そこには同じ高校生なのになぜか、おっさん顔で妄想力でお殿様と町娘のいいではないか、アレー何を式の妄想に耽るカズキ(菊池与志和・用務員役)が。

カズキが地下で妄想力を発酵させて学校には出てこなくなったのには哀しい理由がありました。ユウにこっぴどく振られたのです。

しかし、リョウマとアキラ、そしていつの間にか仲間に入っていたソウイチの4人はチームになり、

ユウ・サクラ・シズク・サリナの女子グループと先生グループの3騎馬が激突!!

川島ちゃんの短パンはもう忘れられています。

なぜなら、川島ちゃんがじつは用務員さんと婚約していて、今日限りで学校を去るから…。

妄想力の限界にうちひしがれ、目の前で展開する現実の騎馬戦のぶつかり合いにただ呆然と立ち尽くすショウタ。

ここの場面がいちばん印象的だった。

高校生のバカパワー全開であり、この芝居全体のクライマックスに、


ショウタだけが遠くでポツンと小さくなって立ち尽くしている…。


その時彼をある人が救い、ショウタも参戦!

そしてついにリアル川島ちゃんがその神々しい太ももを短パンで披露!!

照明で白く輝く川島ちゃんの笑顔と太もも。

そして心の中のカースト制度を排してほんとうの仲間になったショウタ・リョウマ・アキラの三人が肩を寄せて笑い合う姿。

光のフィナーレでしたね。

騎馬戦のあと、

不人気だった神田先生をHRに女子生徒が呼びにきて、傲岸だった神田先生が純情な笑顔で走って行ったり、

キモい!と振られたカズキがユウに卵焼きをもらってポーッとしたり、

それぞれのハッピーエンドが用意されていました。

不登校のサリナ(高野ひとみ)が前半の笑いとバカ力を引っ張り、中盤をリョウマやダメ男子の妄想力、

最後は全員一丸の騎馬戦にパワーをもらったそんな気がします。

サリナと川島ちゃんだけはずっと1役(も変だが)でしたが、

サリナは最初、こんな高校なんかぶっ潰してやる、というド迫力の悪役顏で登場し、

不登校の原因となった校長には乙女になり、


最後の騎馬戦ではなぜか女子グループのシズクやサクラに下っ端扱いされていて、お人好しに気づいていないという、

サリナの七変化を楽しませてくれました。

42歳で女子高生って「マカロニほうれん荘」のキンドーさんみたいだなーと思いました。

舞台を見に来たお客さんたちはたぶん、私より若い人たちばかりで「マカロニほうれん荘」の凄いバカバカしさを知らないだろうなあ、となぜか優越感に浸って、

あ、ほんとうに「マカロニほうれん荘」だったな!と思ったんでした。

まだ3ステージあるので、どこが「マカロニほうれん荘」?と思われた方はぜひご覧いただいて。

「冒険者たち」では想像力が現実の壁を突き破る力を感じたのですが、

「短パン☆カーニバル」ではもっと切実なバカ男子の妄想力は残酷な現実をいかに乗り越えるか、という永遠のテーマを楽しませてもらいました。

ではでは☆