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樹木礼賛 日本絵画に描かれた木と花の美

仙台市博物館
〒980-862 仙台市青葉区川内26番地仙台城三の丸跡

9月26日(金曜日)~11月9日(日曜日)
【前期】9月26日(金曜日)~10月19日(日曜日)
【後期】10月21日(火曜日)~11月9日(日曜日)
休館日:月曜日・11月4日(火)(ただし10月13日・11月3日は開館) 
開館時間: 9時0分~16時45分 最終入館は16:15まで

料金/一般900円、大学・高校生500円、小・中学生200円



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図録もすばらしかった…いきなりご挨拶ね、と仙台市博物館に人格があったら
ムッとしそうですが、美術展がよければよいほど、

はぁーっとため息をついてひらいた図録にがっかりすることもまた多いもので。

いろんなコストの鬩ぎあいがあるのではないかと想像されますが、
図録をひらいてさらに、さすが!と思わせてくれる美術展ってそうないです。

前期の白眉はなんといっても、長谷川等伯の「松林図屏風」。

東京国立博物館からの出品ですが、仙台市博物館から日本の国宝展にずいぶん、出張してきているなあと思ったので、「花一匁」みたいに、あの子がほしい、この子がほしい、相談しましょそうしましょ、
的なやりとりを連想してしまいました。

仙台市博物館の展示室はご存知の通り、黒の背景にガラスケースで、時には
薄暗いなあと思うこともあるのですが、

この「松林図屏風」はピタリと嵌っていました。日曜日でしたが、それほど人が入っていなくて、
ゆっくりすきなだけこの六曲一双を独り占め…。いいんだろうか、罰当たりすぎる、とさえ思う時間でした。

これだけで帰ってももういいやとさえ思った。



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いままでにも見たことはあったんですが、、、。

前期十九日までだったので、ほんとうにぎりぎりで見られてよかったです。

後期はやはり図録の一翼、

円山応挙筆「雪松図屏風」 三井記念美術館からお目見え。
三井記念美術館の新年の展示で見逃したおりましたが、仙台で
ゆっくり独占するわ(笑)。つぎも空いているといいんだけど。
(仙台市博物館の繁盛を願ってはいるが、自分が見るときのあの
しずけさを味わっちゃうともうダメですね)

構成は、


第一章 松林図屏風と雪松図屏風


第二章 樹木への信仰と絵画


春日大社、長谷寺、京都国立博物館、奈良国立博物館、すごいところから

貸出される作品に驚かされる。


と、同時に大規模な展示替えの予感にくらくらする。

いただいた出品リストの前期と後期の入れ替えっぷりがすごく、

それだけ貴重なものを貸出されたのだなあと感じました。


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第三章 樹木を描いた障屏画

金屏風もまた惜しげもなく展示されておりまして、金ぴかと花や草や鳥、特に水鳥が
すきな人間なので、ほくほくでした。

こちらは「四季花鳥図屏風」 (部分) 「州信」印 桃山時代 個人蔵

州信…狩野永徳の使用していた印

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鳳凰青鸞図(部分) 江戸時代 仙台市博物館

全体を撮るよりクローズアップしたいなと思って。

出品リストには絵師の名前はありませんが、左端をみれば永徳法印筆、とあるので
ん?と思って図録の解説を見ると…

「永徳法印筆」と墨書されており、「藤原典信」(朱文方印)があり、
江戸中期の絵師・狩野栄川典信によって桃山時代の絵師・狩野永徳の筆であると
鑑定されたことがわかる。

また、箱の蓋表には「鳳凰青鸞 弐幅 狩野重信筆」の墨書があり、
本図は重信筆と伝えられてきた。

重信は永徳の次世代の絵師として注目されるが本図との関連は未詳、とありました。

まだ決定打に欠くというようなことでしょうか。


そう、日本美術のコレクションで知られる美術館からの貸出しも多かったですが、
個人蔵や仙台市博物館所蔵のものにも瞠目させられました。

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松図襖(部分)伝狩野永徳筆 桃山時代 妙法院



ここの章は絢爛で息が思わず止まっちゃいます。よかった。

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第四章 多種多様な樹木の絵画

多種多様です、たしかに。

梔子、桃、木蓮、棕櫚、仏手柑、街道、柳、柏、檜、藤、朴…。
そこに小禽から鳳凰まで組み合わせの妙がまた楽しい。

上は、「朴に尾長鳥図」(部分) 鈴木基一筆 江戸時代 細見美術館

細見美術館は京都にある美術館ですが、琳派のコレクションで知られています。
私も二度行ったことがありますが、お茶室まであって小さいながらも雅やかな美術館で、
太田記念美術館に似た雰囲気があります。

鈴木基一も琳派の画家ですが、このたらしこみによる葉っぱの表現や、面の塗りと塗りの間の細い糸のような塗り残したところが絵に真珠のような光沢を与えているように思えます。

すごくすきで、これを見られてよかった!!と思ったもののひとつです。
前期まででした。






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こちらは「内裏雛図」 狩野彰信筆 文化六年(1809) 板橋区立美術館

ああ、ここでも板橋区立美術館に出会ってしまったのね。
板橋区立美術館は安村敏信館長ですから、狩野派も狩野派以外も
みなおなじように可愛がっている気がします。

この「内裏雛図」、描表装になっていますね。

おなじような内裏雛図をちがうひとの筆で、だまし絵展などで
見たことがあるのですが、誰だったのか思い出せません。

琳派の絵師ではなかったかと思うのですが。
で、気になったので、手元にある、岩手県立美術館でやった
「琳派・若冲と雅の世界 京都細見美術館」の図録をひらいたら、

「朴に尾長鳥図」があった。

あっ。

さらに岩手県立美術館での会期(2009年8月1日~9月27日だった)を検索したら、次々おそろしい事実が
明るみに!

講演会に安村敏信氏がいらっしゃってたじゃん…。
細見美術館の細見良行氏も…。そのころは友の会に入っていなかったけど、
美術館には時々行っていたのになぜ。

■細見良行氏によるスペシャル・ギャラリートーク
 講師:細見良行氏(細見美術館長)
 8月1日[土] 14:00-
■講演会「絵師の暮らしと江戸絵画」
 講師:安村敏信氏(板橋区立美術館長)
 8月8日[土] 14:00-

いまの私だったら絶対見逃さないと思う。
ということはこの5年でずいぶんいろんな知識を蓄えたってことよね?

とポジティブに考えないとやってられないわ。その時はその時で、
べつに大事なことが有ったんだと思う。思い出せないけど。


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仏手柑に綬帯鳥図 鶴洲筆 江戸時代 神戸市立博物館


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枇杷金鳩図 薫九如筆 天明四年(1748) 神戸市立博物館


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柳に翡翠図 渡辺玄対筆 江戸時代 板橋区立美術館


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第五章古木・銘木を描いた絵画

仙台市内のお花見の名所、「榴ヶ岡花見図屏風」が楽しめました。
お花見の人たちの細やかな描写がみていても幸せになる気がします。
広重の「名所江戸百景」シリーズなど、浮世絵が多いところでした。

で、上の不思議な絵ですが、

第六章 樹木の魅力を表現する画家たち

に登場する、「亜欧堂田善」


アンリ・ルソーっぽくもあるし、秋田蘭画の暗さもあるし、え!いつの時代の何者なのこのひと、
とすごく興味をかき立てられたのでした。

解説には「江戸時代を第尿する洋風画家・亜欧堂田善(1748~1823)は、
白河藩須賀川に生まれた。藩主松平定信に認められ、
御用をつとめるようになった田善は、定信の周りの蘭学者の協力もあり、

銅版画や油彩画の技術をh数特使、優れた風俗画や風景画を残した」とあります。

秋田蘭画っぽいと感じたのは間違っていなかったみたいです。

なお、第四章 多種多様な樹木の絵画にはその秋田蘭画の
主要な画人のひとりで、秋田藩角館城代の佐竹義躬の「松にこぶし図」も
展示されています。


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巡回展ではなく、仙台市博物館のオリジナルの展覧会で、
こんなにめいっぱい楽しませくれて、ほんとうにありがとうと思った私でした。

後期も見逃せない作品ばかりで、大いに楽しみです。
つぎはもう少し余裕をもってお出かけして、城跡や庭園も見てあるこうかなあと
思います。