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「浮き草デイズ」たかぎなおこ (文藝春秋)

1巻目ではイラストレーターを目指して上京したものの、


貯金はすぐに底をつき、イラストレーターとして活躍以前に生活費を稼ぐためにアルバイトを探しまくる日々。

ところが面接も落ちるし、やっと仕事を得ても短期間バイトなので次を探さなければ…。

夢のために上京したはずなのに、これじゃあ地元で絵を描いていた方がよかったんじゃないか、と自問自答したり、イラストレーターの学校になんとか通い出したものの、

生活に追われて絵もあまり提出できない…。

そんな上京したての不安で情けない日々から2巻ではそれなりにこなれてきたもよう。

ホテルの朝食バイトの描写には、あー、この慌ただしさ、覚えがある!と共感しまくり。


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若い頃、3ヶ月だけですが、喫茶店のモーニング係をやっていて、朝6時から準備。でも相方のベテラン女性は5時にもう来ているという噂…。半熟玉子150個とか200個とか、スパゲッティ3kg分を一気に茹でて、ふつうはご法度の水をかけて冷ます荒技。キャベツの千切りマシーンや、ピザ生地の仕込み、トースト用パンの仕込み100個とか、量とスピードの世界だったなあ。


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朝食バイトだけではなく、夜の入力バイトもかけもちして、生活費を稼ぐだけじゃなく、絵も描かなきゃ!と思いながら眠ってしまったり、遅刻したり。


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そんなもがく日々にある日突然、インテリアのショールームで個展をやってみないか、ギャランティは出ないけど、会場費は無料で、DM分くらいは出せるから、という電話が。

たかぎさんもいろんな公募に出したり、入賞したりしていたのですが、その作品を見ていた審査の女性から、たかぎさんの絵がピッタリじゃないかと思って、と。

そこからの2ヶ月は人生で頑張らなきゃならない時がある、という怒濤です。

バイトを休むなんてできないし、絵はテーマに沿って新たに書き下ろしで、地元で個展をひらいたとき手作りした額を実家から送ってもらったり。

東京で個展をしたいという夢が叶いました。東京のギャラリーはレンタル料が高くて、夢のように憧れていたのでしたが。

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たかぎさんが少しずつ少しずつ、自分の力で夢に近づいていくのも読んでいて応援したくなるのですが、

イラストレーターの卵たちが売り込みに行く話や、あちこちの公募展に絵を出すことや、そんな業界の舞台裏も興味深いのでした。

個展やギャラリーの展覧会は最近になってですが、行くようになったので、

その舞台裏を垣間見ることができたのも楽しかったです。あちこちに置いてあるDMを、こちらはスッともらって、フォルダや手帖のカバーポケットに挟んでおくだけですが、


そのDMを作ったひと達は、どれだけの準備をして、どんな思いを込めて置いてくれたんだろうと。


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このマンガの中で、たかぎさんの方が銀座のギャラリーを勉強と趣味をかねて(しかも無料だし)、見て歩くこともあったのですが、

「よくがんばったほうじゃないのかなあ」と控えめにひとり喜ぶ感じがたかぎさんらしいなあと感じました。


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個展で絵が何枚か売れ、実家に久しぶりに帰ったらお父さんが東京で苦労している娘を案じて、「おこずかい」と書いてある封筒を押し付けるようにします。

そのふたつのお金をあわせて買ったパソコン(ダイヤルアップ時代の音やテレホーダイとか懐かしい…)を買って、HPをひらき、絵日記をはじめたたかぎさんに、

本の仕事がやってきました。

たかぎさんの初代担当の松田さんでした。



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たかぎさんの本を読みはじめて数年たちますが、「浮き草デイズ」のひとりでがんばっている姿がたかぎさんらしいなあと思ったのでした。


応援してくれる家族や、友達はいるけれど、がんばる時はひとはひとりなんだ、と感じます。そこがすきなところなのかもーと。


「マラソン」シリーズは終わらせて、日常ものを描きたいとインタビューでおっしゃっていたので、それは「浮き草デイズ」みたいな感じかなーと想像しております。