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都築響一さんだ、というだけで安心して読める。

そしてこのタイトル、このカバー、「ひとりで生きて、なにが悪い!」
のコピーが泣かせる。





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トップバッターは秋山祐徳太子(アーティスト)。


あっ!

「あしたのジョー展」で、「猫まみれ展」で、そしてなんとか会期中に見に行きたいと思っている、

「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち」にも出品されている、秋山さんがここに!



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16名の老人たちはみな、なんらかのアーティストである。

漫画家・川崎ゆきお、画家・戸谷誠、画家・美濃瓢吾、アーティスト・ダダカン…
などなど、芸術家が多い。

上の画像は早稲田松竹映画劇場お掃除担当・荻野ユキ子さんのつくっている
小さな可愛らしいオブジェたちだ。

荻野さんは始発の電車に乗って映画館に5時にきて、6時半には仕事を終えて帰ってしまう。
だから誰もその姿をみたことがない。

朝三時半に起きて、アンパンを食べて4時台の始発に乗って、お掃除が終わって帰ってくるとヘトヘトになって、自分の使っていたものや拾ってきたものでなにをつくろうかなと考えて楽しい気持ちになって、

映画館のトイレに飾られた新作にお客さんがうれしい気持ちになる…。



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ダダカンはアーティスト、パプナー。ハプニングというアートが流行った時代が
あったことを、「あしたのジョー、の時代展」で知った。そのハプニングの集団の中に、
秋山祐徳太子もいたけれど、

ダダカンもハプニングをやり、アンデパンダン展に出展したり、出展を拒否されたり、
(無資格でだれでも出品できるはずのアンデパンダン展で拒否って!気になる)、

全裸ハプニングで警察に捕まったり、精神病院に1年入院させられたり(!)、

波乱万丈の人生である。

92歳。自爆特攻訓練中に終戦を迎え、戦後は体操選手として活躍し、
定職にはつかず、ずっとアート活動をしてきた。


どのひとの人生もおもしろいのだ。

どのひとの言葉もすごくいい。



私はもう三十数年ほど森茉莉がすきだが、茉莉は自分の部屋を撮らせるなら、
きれいに飾りつけてから撮らせるだろう。

富岡多恵子がすっぱ抜いた現実の茉莉の部屋は玄関に到着した順に重なっている森鴎外全集や、
割れた一升瓶が転がっていたり、シュールというより、殺伐としたものだった。担当編集者の書いた文章には、茉莉の部屋では新聞紙が積み重なっていて、下の方は土に還っていたらしい。すごいな。

もし、都築響一が84歳の茉莉に「独居老人スタイル」で取材を申し込んだらどうだっただろうかと考える。


あとがきには、稲垣足穂についての文章が再録されていた。これがこの「独居老人スタイル」の原型だったのだろうか。

私は50歳でまだ老人にはなれていないが、おそるおそる、空気なんか読まない、気配りベタの変わり者のばあさんへ一歩踏み出そうと思ったのだった。
(すでに変わった人なのかもしれないが、ひとに嫌われることに平静ではいられないあたりが修行が足りない)