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きのう公演を見に行った、

「code_36.]マーブル局 岩手アートサポートセンター風のスタジオ

3回ステージのラストでした。

公演終了後、主宰中村剛造さんから、今回でマーブル局は
解散となります、という挨拶がありました。

去年、「ミッドナイト・サイクリング」をみようと思って残念ながら
見逃してしまったので、
初マーブル局がいきなり最終回。オーノー!


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このチラシがかっこいいなあ~と思って見に行ったのですが、
こちらでは#5、第五回公演になっております。

寝耳に水だったのです。

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パンフレットに挟まれていた、マーブル局主宰 中村剛造氏からの
謝辞。

誠実で若者らしい、見てくれたひとと一緒に作り上げてきた人たちへの
感謝と、これからの自分の道についての手紙でした。

「code_36.」を見終わってから読んだのはよかったのか、
それともさきにこちらを読んでおいて、ラスト公演なんだ、と
肝に銘じてから見ればよかったのか。

白石加代子さんの「百物語」は100話までやると恐ろしいことが起こるわけで、
99話でファイナルなのですが、こちらは100%出し切ってのファイナルという
気がしました。

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「今回の作品は、僕が暗闇から世界を見つめて書いた最後の作品になるかもしれません。」


という中村さんの言葉どおり、暗闇と、「凶悪な」舞台でした。



事前に読んでいたチラシにあった、STORYは以下のとおり。


「児童買春の罪により警察から逃亡している元教師の男。

男は逃げながら、覚せい剤や窃盗など罪を重ねていく。


思い出される様々な日々、

男の周りにあったとてつもなく下劣で悲惨で、

愛おしい日常。そして同時に精神を蝕み始めるノイズ。


逃亡とトリップの果の663日の、実録」





耳を劈く轟音。ノイズ。


暗がりの奥の光源が、スクリーンを透かし、そこに新聞の切り抜きで作られる、

犯行声明風に四角く囲まれた文字によるフレーズが浮かび上がる。


舞台に最初に登場したのは、


囚人と看守、のようにみえるふたりの男。


ふたりのやりとりは、囚人の最後の時間のように見えた。


ひとりは羊のように大人しい囚人(に見える男に)、意味ありげに、


「ね、先生?」と親しげに言い残すのは、この男の運命を知っている(ように見える)

男。


暗転後、舞台の奥にふたつの黒板がかけられていることに気づく。


そこに「360日前」「90日前」「85日前」などと、事件を0地点としての

場面の位置関係が表される。


舞台セットは非常にシンプルで、中央に舞台があって、その舞台とステージの平地部分(も変だが、正確な言い方がわからない)には学校のイスと机が何組か置かれているだけだ。


時々、舞台にいる役者とはべつに、この舞台から下がった1mほどの狭い幅の谷間(?)で、

ほかの役者が芝居をしている。


先生(東孝幸)がタバコを一服している場面が差し込まれることが多かった。


その一服している場面は、同時進行ではなかったのではないか、といまになって思い当たった(にぶい)。


「○日前」までは、先生の回想であり、舞台から降りて端っこで一服しているのは、

処刑直前のタバコを一本吸っているところなのではないかと。


場面転換が多く、説明を省いているために、だんだん繋がりがわかってくるのだが、



奥村(菊池潤 劇団ゼミナール)という刑事と、その妹である事件からグレてしまったらしい

千恵。奥村を訪ねてきた先生が不登校のまま、繁華街をふらついている千恵について心配すると、


自分は忙しいので、来るときは事前に連絡してくださいよ、というのだがその物腰は

ヤクザ丸出しである。ヤクザなのか、ほんとうは腕利きの麻薬対策捜査官なのか、と

思いながら見ていたが、どうやらヤクザというより、人間の屑であったもよう。


途中から登場する吉田(後藤一峰)が奥村とするやりとりによれば、吉田は情報屋らしい。

情報屋を駆使して麻薬を一網打尽にするのか、この一見暴力団としか思えない奥村は、


と思っていたが、どうやら刑事であることを最大限に利用して、悪と結びついている男だった…。


奥村は死に至る病を患っている千恵(その病を得てから自暴自棄になったのだと思われる)を

容赦なく殴り、突き飛ばすのだが、おそらく、間に近親相姦的な感情があるようだ。


先生は英語の教諭らしく、教え子の竹下が自分で訳してきた詞の朗読に耳を傾けたりしている。

しかし、熱心な教師と教え子の一線をとうに越えていたふたりは、教室内で抱きしめ合う。


それを見ていたのが竹下を思っていた同級生の速水だった。


先生にも家庭があり、妻はどうやら不妊治療中か、流産・死産いずれかの事情があり、また、

ふたりの間には先生の母親をめぐる確執もあったようだ。そこは説明はせず、


「あなたの母親とあなたの子どもじゃない!」

という糾弾のようなセリフで表される。先生の奥さんは影で糸を引き、速水を唆して竹下をレイプさせる。


元教師だった奥さんは生徒の信頼を勝ち取るのなんてちょろい、と思っている。


妊娠と流産を繰り返している(たぶん)自分を顧みることなく、教え子と関係する夫への

復讐が竹下への腹いせというあたりがこの奥さんもキテルな~と思うが、


奥村とこの奥さんでどちらがより凶悪なんだろうか…。


舞台は時系列では進まず、○○日前もいきなり数字が大きくなって前に遡ったり、

順調に数字が小さくなっていくかと思ったら、また微妙な数字になったり。


そのゆさぶられ感に加えて、暴力的なノイズと攻撃的な照明が繰り返され、

奥村は始終凄むし、先生もだんだん壊れていくし、バタバタ死ぬし、誰もが憎しみと殺意を

抱いている。唯一情報屋(だと思う)の吉田だけは終始にこやかだったが、


そのにこやかさは「死の商人」のにこやかさであって、善良さからくる微笑みではない。


竹下をレイプした速水がいちばんマシだろうか。レイプ犯がいちばんマシっていうのも

ひどいが、レイプ実行犯より教唆した先生妻の方がもっとひどい。



吉田  (次元がちがう)     奥村>>先生妻>先生>速水>竹下>千恵  


7人の登場人物を悪いもの順に並べるとこんなところでしょうか。

誰もが誰かを殺し、いたぶり、死に関わり、違法ドラッグをやっているか、強制したか、

法に触れている。吉田はたぶん、ギリギリのところですり抜けている気がする。


最後の場面ではある麗らかな日に、2年後 と黒板にチョークで書かれており、

ああ、もう誰も生き残っていないはず、と思いきや、


高校を卒業したらしい、ふわっとしたワンピース姿の清楚な竹下が先生妻を訪ねてくる。


しれっとして応対し、先生の死については口にせず、学校に復帰した喜びを

衒いもなく語る先生妻。隙をついてコーヒーに毒を盛り、先生妻を死に至らしめる竹下。



この2年後の前に、登場人物たちが殺し合い、死に絶える場面があったのだが、

竹下が先生妻を殺すということは、あれは処刑された先生の見た幻想だったのかと気づく。


千恵を気にして訪問を繰り返していた先生に対して、千恵が先生にもたらしたのは薬物中毒。先生を押し倒し、むりやりに粉末のドラッグを吸い込ませ、舐めさせる場面も強烈だった。


強烈じゃない場面はあまりないんですが…。



先生と竹下のほのぼのした(そうか?)放課後の個人レッスン的なところも、よく考えれば未成年者へのみだらな行為とか適切ではない行為に該当するわけだし。



竹下と先生が手をつないで横たわる場面もあった。


心中してしまったのか、と思った。


しかし先生が逃亡生活の中で、名前や身分を隠して工場で働くという

場面もあった。吉田はそこでは先生の上司だった。



覚せい剤に蝕まれた先生の記憶もねじれていったのだろう。


はたして奥村という凶悪な刑事などいたのだろうか?

不登校の妹をかばおうとする兄だっただけではないだろうか。


兄と妹の近親相姦(そんな場面はないが、そんな雰囲気の掴み合いがある)

は先生の竹下への想いが腐敗して見せた幻想だったのではないか?



速水のレイプの糸を引いていたのはほんとうに妻だったのか。

妻への憎しみが異常な妄想を作り出したのではないか。


(とすると最後の2年後という場面が成立しなくなるので、

妻が速水のレイプ事件を示唆していたことだけは現実なのだろうか。

でも2年後を見ていたのは誰なんだろう?)


終わってから、あれはなんだったんだろう、と悪夢を思い出すときのように、

引っかかった言葉から舞台を呼び出そうとしているけれど、


すでに私の中で変容しているかもしれないのでした。





パンフレットに差し込まれた「最後のご挨拶」で


「真っ当な仕事をし、目の前の人を好きだって言って、真っ当な道をなんとか進み、

真っ当なりに人生を全うしようと思います。陽だまりの中から人生を見つめた芝居を

今後は作れたらと思います。」


とあったので、、


マーブル局は解散ですが、またどこかでお目にかかれるようです。